平成29年度のFIT買取価格などが決定、賦課金単価は0.39円増の1kWh当たり2.64円に
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2017年03月16日
一般社団法人エネルギー情報センター

3月14日、経済産業省は再生可能エネルギーの平成29年度の買取価格・賦課金単価等を決定したと発表しました。再エネ賦課金については年々と増加傾向にあり、29年度は昨年度と比較すると17%増の結果となりました。
平成29年度のFIT買取価格が決定、産業用太陽光と風力(20kW未満)以外は平成31年度まで
経済産業省は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の平成29年度における買取価格及び賦課金単価等を決定しました。これまで調達価格等算定委員会で進められてきた議論の通り、特に太陽光発電については単価が年々と引き下げられていく内容となっています。
また、数年先の認定案件の買取価格を予め決定する仕組みが導入され、リードタイムの長い電源の開発が進めやすくなりました。産業用太陽光と風力(20kW未満)以外では、平成31年度までの買取価格が予め決定されています。以下にて、各電源の買取価格について見ていきたいと思います。
太陽光発電、住宅用は平成31年まで徐々に単価下落
太陽光発電については、産業用は平成29年度まで、住宅用は平成31年度までの価格が決定しました。住宅用につきましては、平成31年度までは年々と単価が下落していく形となっています(表1)。2000kW以上の非住宅用太陽光については入札制に移行し、落札した価格が買取価格となります。第一回目の入札は、平成29年10月頃に実施される予定です。
電源 | 規模 | (参考)平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 調達期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
太陽光(産業用) | 10kW以上2,000kW未満 | 24円+税 | 21円+税 | - | - | 20年間 |
太陽光(出力制御対応機器設置義務なし) | 10kW未満 | 31円 | 28円 | 26円 | 24円 | 10年間 |
太陽光(出力制御対応機器設置義務あり) | 10kW未満 | 33円 | 30円 | 28円 | 26円 | 10年間 |
太陽光(出力制御対応機器設置義務なし)(ダブル発電) | 10kW未満 | 25円 | 25円 | 24円 | 10年間 | |
太陽光(出力制御対応機器設置義務あり)(ダブル発電) | 10kW未満 | 27円 | 27円 | 26円 | 10年間 |
表1 太陽光発電の買取価格 出典:経済産業省発表より作成
風力発電、20kW未満は制度開始時から変わらず55円
風力発電については、リプレースの価格区分が設定されます。陸上の風力は、20kW未満については、制度開始時からこれまで変わらず55円という金額で推移しており、平成29年度も変更なしです(平成30年度以降は未定です)。20kW以上のものですと、平成31年までに徐々に単価が下がっていきます(表2)。
電源 | 規模 | (参考)平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 調達期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
風力(陸上風力) | 20kW以上 | 22円+税 | 21円+税(平成29年9月末まで22円+税) | 20円+税 | 19円+税 | 20年間 |
風力(陸上風力リプレース) | 20kW以上 | - | 18円+税 | 17円+税 | 16円+税 | 20年間 |
風力 | 20kW未満 | 55円+税 | 55円+税 | - | - | 20年間 |
風力(洋上風力) | 20kW以上 | 36円+税 | 36円+税 | 20年間 |
表2 風力発電の買取価格 出典:経済産業省発表より作成
地熱発電、リプレース区分が新しく設定される
地熱発電については、15000kW未満、15000kW以上ともにリプレース価格区分が創設されます。リプレース以外の部分については、制度開始時から単価が変わらず、その単価が平成31年まで継続される形となります(表3)。
電源 | 規模 | (参考)平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 調達期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
地熱 | 15,000kW以上 | 26円+税 | 26円+税 | 15年間 | ||
15,000kW未満 | 40円+税 | 40円+税 | 15年間 | |||
地熱(全設備更新型リプレース) | 15,000kW以上 | - | 20円+税 | 15年間 | ||
15,000kW未満 | - | 30円+税 | 15年間 | |||
地熱(地下設備流用型リプレース) | 15,000kW以上 | - | 12円+税 | 15年間 | ||
15,000kW未満 | - | 19円+税 | 15年間 |
表3 地熱発電の買取価格 出典:経済産業省発表より作成
水力発電、一部の買取単価が引き上げられる
水力発電については、1000kW以上5000kW未満の区分については、平成29年度の単価が昨年度よりも引き上げられています。一方で、5000kW以上30000kW未満は単価が引き下げられます(表4)。
電源 | 規模 | (参考)平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 調達期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
水力 | 5,000kW以上30,000kW未満 | 24円+税 | 20円+税(平成29年9月末まで24円+税) | 20年間 | ||
1,000kW以上5,000kW未満 | 27円+税 | 20年間 | ||||
200kW以上1,000kW未満 | 29円+税 | 29円+税 | 20年間 | |||
200kW未満 | 34円+税 | 34円+税 | 20年間 | |||
水力(既設導水路活用型) | 5,000kW以上30,000kW未満 | 14円+税 | 12円+税 | 20年間 | ||
1,000kW以上5,000kW未満 | 15円+税 | 20年間 | ||||
200kW以上1,000kW未満 | 21円+税 | 21円+税 | 20年間 | |||
200kW未満 | 25円+税 | 25円+税 | 20年間 |
表4 水力発電の買取価格 出典:経済産業省発表より作成
バイオマス、概ね変更なしだが一部の買取単価が引き下げ
バイオマス発電については、ほとんどの区分において平成31年度まで買い取り単価の変更はありません。ただし、「一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス」の20000kW以上については、平成29年9月末以降は単価が3円引き下げられます(表5)。
電源 | 規模 | (参考)平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 調達期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
バイオマス(メタン発酵ガス化発電(バイオマス由来)) | - | 39円+税 | 39円+税 | 20年間 | ||
バイオマス(間伐材等由来の木質バイオマス) | 2,000kW以上 | 32円+税 | 32円+税 | 20年間 | ||
2,000kW未満 | 40円+税 | 40円+税 | 20年間 | |||
バイオマス(一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス) | 20,000kW以上 | 24円+税 | 21円+税(平成29年9月末まで24円+税) | 20年間 | ||
20,000kW未満 | 24円+税 | 20年間 | ||||
バイオマス(建設資材廃棄物) | - | 13円+税 | 13円+税 | 20年間 | ||
バイオマス(一般廃棄物・その他のバイオマス) | - | 17円+税 | 17円+税 | 20年間 |
表5 バイオマス発電の買取価格 出典:経済産業省発表より作成
再エネ賦課金、平成29年度は1kWh当たり2.64円に
平成29年度の賦課金単価は、1kWh当たり2.64円と決定しました。標準家庭を一ヶ月の電力使用量が260kWhであると仮定すると、年額8232円(月額686円)となります(平成28年11月時点の東京電力他の管内の標準家庭の電気使用量が260kWh/月)。なお、平成29年度の賦課金単価は、平成29年5月検針分の電気料金から平成30年4月検針分の電気料金まで適用されます。
昨年度の2.25円と比較すると、平成29年度は0.39円増(約17%増)となります。これまでも再エネ賦課金は年々と増加してきており、これまでで最も単価が上がった年度は、平成27年度の0.83円増加となります(表6)。
年度 | 買い取り単価 | 昨年度比 |
---|---|---|
平成24年度 | 0.22円/kWh | – |
平成25年度 | 0.35円/kWh | 0.13円(約60%)増 |
平成26年度 | 0.75円/kWh | 0.4円(約115%)増 |
平成27年度 | 1.58円/kWh | 0.83円(約110%)増 |
平成28年度 | 2.25円/kWh | 0.67円(約42%)増 |
平成29年度 | 2.64円/kWh | 0.39円(約17%)増 |
表6 再エネ賦課金の推移 出典:経済産業省資料より作成
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