来年から変わる固定価格買取制度、価格決定のプロセスなど抜本的に変更

2016年05月15日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

来年から変わる固定価格買取制度、価格決定のプロセスなど抜本的に変更の写真

固定価格買取制度の根拠となる法律の改正案が本年2月9 日に閣議決定され、国会に提出されました。それに伴い、2017年4月から固定価格買取制度が抜本的に変更される予定であり、本コラムではその内容について概要を見ていきたいと思います。

買取価格の決定方式変更、太陽光は入札やスケジュールに基づく価格形成に

これまで固定価格買取制度における買取価格を決定する際には、発電能力や設置コストなどに基づき、適正な利潤が発生する価格が毎年検討されてきました。しかし来年2017年4月から始まる新しい固定価格買取制度のもとでは、再生可能エネルギーの種類によって価格形成のプロセスが異なります(図1)。以下にて、その概要を見ていきます。

買取価格決定方式の見直し全体像

図1 買取価格決定方式の見直し全体像 出典:資源エネルギー庁

産業用の太陽光における買取価格は、価格目標と期限に基づき低減

発電能力が10kW以上となる産業用太陽光の場合、低減するべき価格目標が定められ、一定の期間で低減目標を達成できるよう議論が進む予定です。低減するべき価格目標は産業用の電気料金とすることが有力ですが、仮にその目標を5年間で達成すると設定された場合を見てみます。

平成28年度における産業用太陽光の買取価格は24円なので、産業用電気料金を15円/kWhと仮定すると、5年間をかけて徐々に15円になるよう調整されていく流れとなります。買取価格は現在と同様、毎年見直されますが、具体的な価格目標や期限については、今後の議論で決定されます。

家庭用太陽光は、2019年を目処に家庭用料金の水準に

10kW未満の住宅用の太陽光発電については、価格低減のスケジュールがあらかじめ公表される予定です。まずは2019年を目処に、家庭用電気料金の水準を目標に買取価格が引き下げられる見込みです(図2)。

2019年は、余剰電力買取制度の買取期間が終了する案件が多数発生する年になります。そうすると、太陽光の設置者は、発電した電力を売電するのか、もしくは自家消費を中心とするのか選択が迫られます。その際、売電金額が家庭用電気料金と同じ水準であれば、自家消費を中心とするケースも増えると考えられます。そうすることにより、ZEHの実現や賦課金の抑制を図ることができます。そうした理由などにより、2019年を目処に家庭用の料金に低減することが進められます。

事業用太陽光発電における価格目標イメージ

図2 事業用太陽光発電における価格目標イメージ 出典:資源エネルギー庁

建設に時間のかかる地熱などは、買取価格を長期で固定

太陽光発電を除く、風力・地熱・中小水力・バイオマスの買取価格は数年先まで一挙に決定する方式に変わる見込みです(図3)。発電事業の検討開始から、実際に運転を開始するまでのリードタイムが長いため、買取価格が毎年変わっては、事業の採算見通しが立たないからです。買取価格が数年先まで担保されることにより、事業化の判断をしやすくなります。

一挙に価格が決定される期間は現状で未定ですが、仮に3年先までの買取価格を決定するとなった場合を見てみます。例えば平成28年度中に価格形成の議論が進めば、平成29~31年度までの買取価格が定められます。その後、平成32年以降に関しては、3年前の時期を基本として毎年価格が決定されます。例えば、平成32年の買取価格は3年前の平成29年に決定され、平成33年の買取価格は平成30年といったように、各々の年度の買取価格が3年前までに分かるようになります。

ただし、風力発電に関しては開発に期間がかかるのですが、買取価格が欧州の2倍の水準であるため、中長期的な買取価格の引き下げスケジュールを決定すべきと指摘されています。その引き下げにあたっては、実績データに加え、現在計画されている案件での想定設備利用率の実態調査を行った上で、中長期的な買取価格を算定すべきとの意見もあります。

複数年度価格設定のイメージ(仮に3年間定める場合)

図3 複数年度価格設定のイメージ(仮に3年間定める場合) 出典:資源エネルギー庁

FIT認定を取得し未稼働を継続する案件を防止

FITの認定を取得した後、長期間にわたり発電に至らない「未稼働案件」の発生を防止する仕組みが、新しい固定価格買取制度で実施される予定です。

現状、買取価格は各年度ごとの発電設備の価格や効率などを考慮し決定されています。発電設備の性能は年々向上しているため、高い買取価格のままでは設置者に利益が生まれ過ぎてしまうので、買取価格も年々下がっていくことが一般的です。しかし、高い買取価格のときにFIT認定を取得し、発電設備が高性能かつローコストになった時期に機器を購入するとなると、発電所の設置者に利潤が生まれ過ぎてしまう構造となります(図4)。そのため新制度においては、こうした未稼働案件の発生を防止する流れとなっています。

防止の具体策としては、長期にわたり運転を開始しない発電設備に対して認定を取り消すルールを追加します。電源の種類や規模に応じて、認定の取得から運転開始までの期限を一律に設けます。例えば、1000kW以上の太陽光発電は、標準的な設置工事期間を考慮して3年とするといったことが考えられます。

運転開始が遅れ高い価格で売電される事例

図4 運転開始が遅れ高い価格で売電される事例 出典:資源エネルギー庁

新制度の施行(平成29年4月1日)までに接続契約をできない場合、認定が失効する可能性

すでに認定を受けているが未稼働の発電設備について、制度改正後の動きを見ていきたいと思います。まず、改正後のFIT法の施行予定日(平成29年4月1日)までに電力会社と接続契約を締結できなかった場合は、現在のFIT法に基づく認定が失効することになります。

ただし、電力会社との接続契約には時間が必要なため、猶予期間内に接続契約を締結すれば、現在制度のままで改正後FIT法の下における認定とみなされます。例えば、平成29年3月1日に認定を受けた場合は、制度開始予定日(平成29年4月1日)まで1ヶ月間と短い期間しか残されていません。そういった認定から新制度の施行日までに十分な期間(9ヶ月)を確保できない場合は、認定から9ヶ月の猶予期間が設けられます。また、10kW未満の小規模太陽光発電は猶予の対象外となりますが、電力会社との系統入札プロセスに入っている場合も、プロセス終了から6ヶ月の猶予期間が設けられます(図5)。

現在、未稼働となっている既認定案件の中には、電力会社との間で系統接続についての調整に時間を要しているものがあります。そのため、2月9日より系統接続相談窓口が、各電力会社のトップページにて案内開始され、事業者からの問い合わせ対応への円滑化が図られています。また、接続契約の締結が法改正に間に合う電力会社への申込期日については、今後電力各社が設定し公表する予定です。

施行予定日(来年4月1日)における事業進捗と経過措置の関係

図5 施行予定日(来年4月1日)における事業進捗と経過措置の関係 出典:資源エネルギー庁

大規模太陽光に関しては入札の実施

新制度においては、大規模太陽光発電の入札制度を導入することが盛り込まれています。国としては調達期間や入札量などを決定、それに応じて事業者は希望する買取価格および出力を入札します。

入札は全国一律にて実施され、年に1~3回の頻度が想定されています(図6)。入札は産業用太陽光の全てで実施されるわけではなく、制度開始の当初は産業用の中でも特に大規模な案件で実施される予定です。

入札制度のイメージ

図6 入札制度のイメージ 出典:資源エネルギー庁

買取の主体が小売電気事業者から送配電事業者へ

固定価格買取制度による電力を買い取る主体について、従来は小売電気事業者でしたが、送配電事業者へ移行します。そのため、小売事業者においては電力買取の義務がなくなります。これまで、買取義務があるのは小売電気事業者であり、接続義務があるのは送配電事業者でしたが、買取と接続の両方とも送配電事業者が担うこととなります。

送配電事業者は買い取った電力を小売電気事業者に供給する義務を負います。供給方法は2通りあり、1つ目は送配電事業者が卸電力取引市場に電力を引き渡して、小売電気事業者が自由に買い付ける方式です。2つ目は、FIT発電事業者と小売電気事業者が個別契約を締結することにより、送配電事業者は買い取った電力を、契約した小売電気事業者に限定して供給する方式となります。

なお、改正後のFIT法で送配電事業者による買取りとなった場合も、地産地消として電気を販売することは引き続き可能です。例えば、「当社は、○○発電所からのFITでんきをお客様に供給します。」といったように、地域のFIT発電事業者から調達した電気であることを表示する形となります(図7)。

契約上の電気の流れのイメージ

図7 契約上の電気の流れのイメージ 出典:資源エネルギー庁

認定基準も新たに9つ加わる

固定価格買取制度に認定されるための基準も修正が加えられ、クリアするべき項目が増えます。新制度では、「①事業内容の適切性(運転開始後も含めて)」、「②事業実施の確実性」、「③設備の適切性」といった3つの観点から9項目が新たに加えられました。

①事業内容の適切性に関しては、「適切に点検・保守を行い、発電量の維持に努めること」、「定期的に費用、発電量等を報告すること」、「系統安定化等について適切に発電事業を行うこと」、「設備の更新又は廃棄の際に、不要になった設備を適切に処分すること」の4つが基準として加えられます。発電設備の保守・点検・廃棄などに関する内容が含まれます。

②事業実施の確実性に関しては、「接続契約を締結していること」、「土地利用に関する法令を遵守すること」、「適正な期間内に運転開始すること」の3つが加えられます。未稼働案件の抑止を強化するなどの内容が含まれます。

③設備の適切性に関しては、「発電設備の安全性に関する法令を遵守すること」、「設備の設置場所において事業内容等を記載した標識を掲示すること」の2つが加えられます。安全面の強化を促すなどの内容が含まれています(図8)。

適切な事業実施を確保するための新認定基準

図8 適切な事業実施を確保するための新認定基準 出典:資源エネルギー庁

産業用太陽光では安全性確保の強化

産業用の太陽光に対しては、安全性の確保等に向けた見直しが実施される方針です。まず、これまでは2000kW以上のみで必要だった技術基準適合性確認が、500kW以上の規模であっても実施するよう義務づけられます。

また、架台・基礎の設計例などの具体的な標準仕様が明確化され、技術基準に例示されます。また、感電防止対策等の技術基準についても検討が進められます。

さらに事故報告の規制が拡大・強化されます。これまでは家屋等の損壊などの有無で報告の必要性が判断されていました。それが、パネルが発電所構外に飛散すれば、損害に関わらず報告義務が発生するよう規制が強化されます。また、これまでは500kW以上の太陽光パネルのみ、脱落・飛散が生じた場合の報告義務が課されていましたが、50kW以上のより小規模な設備にも対象が広がります(図9)。

太陽光発電における安全性の確保等に向けた制度見直し

図9 太陽光発電における安全性の確保等に向けた制度見直し 出典:資源エネルギー庁

賦課金減免制度が一律8割から減免率に

固定価格買取制度による費用は、再エネ賦課金という形で電気利用者が負担しています。賦課金には減免制度があり、これは電力を多く利用する事業者に対して再エネ賦課金負担の8割を減免するものです。この制度開始から3年が経過しましたが、国民負担が増大していることから、制度が見直される予定です。

現在、減免率は8割と一律になっていますが、省エネの取組状況に応じた減免率が設定される見込みです。詳細については、今後、政省令で規定されます。

系統情報の公開で事業の見通し確保

固定価格買取制度を利用した電源開発の際には系統の情報把握が重要です。以下にて、近年進められている系統の情報公開などについて見ていきます。

電力事業者は、系統の空き情報や送変電設備の工事費単価が把握できないと、事業の見通しを立てづらいです。そのため、特別高圧以上の各送変電設備に関し、平成27年12月から電力広域的運営推進機関にて空き容量が具体的な数値として公表されることとなりました。

また、平成28年3月から、同機関が工事費負担金に含まれる送変電設備の標準的な単価について公表しています(図10)。

系統情報の公表

図10 系統情報の公表 出典:資源エネルギー庁

工事負担金が特定負担から一般負担に

固定価格買取制度に関する電源開発について、これまで工事費負担金は全額が特定負担(再エネ発電設備設置者の負担)とされていました。しかし、火力電源等と同様に一部を一般負担とすることとなり、費用を託送料金で回収する形式となりました(図11)。

費用負担ガイドラインの整備

図11 費用負担ガイドラインの整備 出典:資源エネルギー庁

一般負担金は上限金額が設定される

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