蓄電所ビジネス

発売日:2025年6月20日
出版社:電気書院

執筆者:江田健二、出馬弘昭

蓄電所ビジネスの写真

電気を「作る」だけではなく、「貯める」ことがますます重要になる時代に入り、蓄電池をはじめとしたエネルギー貯蔵の技術やビジネスの可能性は、日々広がりを見せています。 本書は、そのバイブルとなり得る一冊です。

著者情報①

一般社団法人エネルギー情報センター 理事
RAUL株式会社 代表取締役

江田健二氏

1977年、富山県生まれ。2000年、慶應義塾大学経済学部卒業。東京大学Executive Management Program(EMP)修了。アクセンチュアに入社。エネルギー/化学業界を担当し、電力会社・大手 化学メーカー等のプロジェクトなどに参画。2005年に同社を退社後、ITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、RAULを設立。エネルギー情報センター理事、サステナビリティコミュニケーション協会理事なども兼務。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。オンライン番組「プロジェクトE ~エネルギーDX・GX時代を切り開く」パーソナリティ。主な著書に『2025年「脱炭素」のリアルチャンス すべての業界を襲う大変化に乗り遅れるな!』(PHP 研究所)、『「脱炭素化」はとまらない! 未来を描くビジネスのヒント』(成山堂書店)、『ブロックチェーン×エネルギービジネス 世界の51事例から予見する』、『エネルギーデジタル化の未来』(いずれもエネルギーフォーラム)など。 

著者情報②

東北電力 事業創出部門アドバイザー
大阪大学フォーサイト 取締役

出馬弘昭氏

1960年、大阪府生まれ。1983年、京都大学工学部機械系物理工学科卒業後、大阪ガスに入社し、主にR&D・IT部門でオープンイノベーション、サービスサイエンス、データサイエンスなどを主導。2016年より業界で初めて米国シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテック(脱炭素系スタートアップ)とのビジネス開発を開拓。2018年東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)立ち上げに参画。2019年に米国Plug and Play Tech Centerの「Corporate Innovation Award」を業界初受賞。2021年に帰国、東北電力に入社し、事業創出部門アドバイザーに就任。また、大阪大学フォーサイト取締役のほか、エクサウィザーズやグリーンタレントハブ、インベストメントラボ、東京都脱炭素化ファンド・オブ・ファンズの顧問なども兼務。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学大学院非常勤講師、大阪市立大学(現:大阪公立大学)非常勤講師、日本オペレーションズ・リサーチ学会副会長などを歴任。主な著書に『図解即戦力 電力・ガス業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など。 

解説/内容

メガソーラー(大規模太陽光発電)、洋上風力発電の次はこれだ。 系統用蓄電池、長期エネルギー貯蔵システム(LDES)が花形産業――

本書のコンセプトと構成/目次等

  1. はじめに

  2. 第Ⅰ部 系統用蓄電池(短期エネルギー貯蔵)
  3. 第1章 系統用蓄電池ビジネスとは
    第1節 系統用蓄電池ビジネスのスキーム
    第2節 系統用蓄電池ビジネスが生まれた背景
    第3節 系統用蓄電池ビジネスでの主な参入方法/立ち位置
    第4節 蓄電所の種類:高圧/特別高圧(特高)
    第5節 蓄電所の事例
    第6節 蓄電池の大きさ比較
    第7節 系統用蓄電池の市場規模(2030年ごろまで)
    第8節 系統用蓄電池の市場規模(2040年ごろまで)
    第9節 系統用蓄電池の補助金の採択結果と支援制度
    第10節 系統用蓄電池ビジネスの難しさ

    【コラム①】
    米国のクリーンエネルギーの動向を日本の指標に
    阪口 幸雄(クリーンエネルギー研究所 代表)

    【コラム②】
    欧州企業から見る日本市場でのビジネスチャンス
    ミハル・スカルスキー(セカンド・ファンデーション・ジャパン COO)
    水田 昌紀(IQg 代表取締役)

    第2章 系統用蓄電池ビジネス収益構造/各市場について
    第1節 系統用蓄電池ビジネスの収益と費用
    第2節 収益シミュレーション
    第3節 JEPXについて
    第4節 EPRXについて
    第5節 容量市場/脱炭素オークションについて

    【コラム③】
    系統用蓄電池ビジネスの最前線
    村谷 敬(AnPrenergy 代表取締役)

    第3章 系統用蓄電池ビジネスの導入検討~運用開始までの流れ
    第1節 主なビジネスプレーヤー(導入フェーズ)
    第2節 系統用蓄電池プロジェクトの主な実施事項と関係者
    第3節 運用開始までの期間と影響要因
    第4節 系統連系に関する概要と費用について

    【コラム④】
    系統用蓄電池での安全面や各種補助金について
    伊藤 菜々(電気予報士)

    第5節 設置場所について
    第6節 蓄電池の種類と特徴
    第7節 リチウムイオン電池の経年劣化について
    第8節 リチウムイオン電池の種類と特徴

    【コラム⑤】
    系統用蓄電池の導入事例について
    小嶋 祐輔(パワーエックス 執行役)

    第9節 蓄電所の初期費用について
    第10節 蓄電池の工事(搬入~設置)でのポイント

    【コラム⑥】
    現場目線で語る系統用蓄電池工事の真実
    淺岡 佑珠広(クローバー・テクノロジーズ 代表取締役社長)
    前田 貴征(クローバー・テクノロジーズ EPC事業部 プロフェッショナルマネジャー)

    第4章 系統用蓄電池ビジネスの運用開始以降
    第1節 系統用蓄電池ビジネスの主なプレーヤー(運用フェーズ)
    第2節 蓄電所の運用費用について
    第3節 アグリゲーターについて
    第4節 主なアグリゲーター

    【コラム⑦】
    系統用蓄電池のアグリゲーションについて
    豊田 祐介(デジタルグリッド 代表取締役社長)

    【コラム⑧】
    系統用蓄電池を活用した新たなビジネスモデルの出現
    山口 浩一(Beyond Next Energy 代表取締役)

  4. 第Ⅱ部 LDES(長期エネルギー貯蔵))
  5. 第1章 エネルギー転換とLDESの役割
    第1節 脱炭素社会に向けたエネルギー転換の課題
    第2節 再エネの変動性と貯蔵の必要性
    第3節 長期エネルギー貯蔵の必要性
    第4節 LDESが必要となる時期
    第5節 LDESが果たす社会的・経済的意義
    第6節 LDESの多様性とその可能性

    第2章 LDESの基礎知識
    第1節 LDESとは何か
    第2節 LDES技術のカテゴリー
    第3節 LDESの市場動向と規模

    第3章 LDESを開発する企業
    第1節 電気化学エネルギー貯蔵
    第2節 機械式エネルギー貯蔵
    第3節 熱エネルギー貯蔵

    【コラム⑨】
    ヒートポンプを用いた蓄熱蓄電技術「PTES」について
    岩田 貴文(ESREE Energy 代表取締役)

    第4節 化学エネルギー貯蔵

    第4章 LDESの適用事例
    第1節 再エネとの連携
    第2節 産業分野への適用
    第3節 地域社会での導入事例
    第4節 LDESの経済的インパクト
    第5節 LDESとエネルギー政策

    第5章 LDESの課題と今後の展望
    第1節 技術的課題
    第2節 経済的課題
    第3節 政策的課題
    第4節 課題克服のための戦略
    第5節 未来への展望

    第6章 LDESを取り巻く国際動向
    第1節 世界のLDES市場の現状
    第2節 地域別動向
    第3節 国際協力の必要性

  6. おわりに

著者メッセージ

再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入が進む今、電力の安定供給や効率的な運用を支える存在として、「蓄電池」が大きな注目を集めています。特に電力系統と連携して動く系統用蓄電池や、将来的な電力のあり方を支える長期エネルギー貯蔵システム(LDES)は、これからのエネルギー分野における新しいビジネスチャンスともいえる存在です。

本書は、こうしたエネルギー貯蔵の世界を、初めての方にもわかりやすく、かつ実務にも役立つ形で紹介することを目指してまとめました。内容は、以下の2つのパートで構成されています。

第Ⅰ部 系統用蓄電池(短期エネルギー貯蔵)
第Ⅱ部 LDES(長期エネルギー貯蔵)

第Ⅰ部では江田健二が、系統用蓄電池の基本的な仕組みから、なぜ今このビジネスが注目されているのかという背景、そして、実際にビジネスとして成立させるための収益構造や導入から運用までの具体的なステップを、図表やシミュレーションをまじえて解説しています。
例えば、「電力を安く仕入れて高く売る」という日本卸電力取引所(JEPX)での活用例や、近年整備が進む需給調整市場(EPRX)を活用した収益モデル、さらには容量市場や長期脱炭素電源オークションといった新たな収益機会についても、わかりやすく紹介しています。加えて、設置場所の選定や系統接続の考え方、リチウムイオン電池の特徴や劣化リスクへの対応など、現場で直面する課題や注意点にも触れています。

さらに、第一線で活躍する方々へのインタビューなどをコラムで多数掲載しています。例えば、海外の最新動向を踏まえて日本市場への示唆を語ってくれた方、実際の導入プロジェクトを現場で推進した技術者の視点、系統運用の観点からの課題と展望など、多様な立場から語られる“リアルな声”は、読者の方々の視野を広げ、実践的なヒントにもなるはずです。系統用蓄電池を単なる「技術」としてではなく、「具体的なビジネスの選択肢」として理解できる一冊になっています。
第Ⅱ部では出馬弘昭が、再エネが社会の主力電源になる未来に向けて、これからますます重要になるLDESについて取り上げています。LDESは、容量市場の一部である長期脱炭素電源オークションの第3回入札から対象に加わります。
太陽光発電や風力発電のような自然変動型の再エネ電源を何日、場合によっては何週間も先まで安定的に貯めておくための仕組みがLDESです。LDESと一口に言っても、そこにはさまざまな技術があり、それぞれに特徴があります。第Ⅱ部では、さまざまな技術や海外の企業などを紹介しています。特に海外での事例は、今後の日本にとってのヒントが数多く詰まっています。

第Ⅱ部も、決して難解ではなく、“知ることから可能性が見えてくる”ことを大切にしたわかりやすい内容にしています。新しいエネルギーのカタチに興味がある方々、未来のビジネスチャンスを探している方々にとって、きっとヒントになる情報が見つかるはずです。

本書は、専門家の方々に限らず、この分野に少しでも興味を持っている方々や、新たなビジネスの可能性を探している方々にも手に取っていただけるように心がけて執筆しました。エネルギー貯蔵のこれからについて、身近なテーマとして感じていただけるきっかけになれば幸いです。

2025年5月吉日
エネルギー情報センター 理事
江田 健二
東北電力 事業創出部門アドバイザー
出馬 弘昭