地域新電力 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法

発売日:2022年7月10日
出版社:学芸出版社

執筆者:稲垣憲治

地域新電力 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法の写真

ゼロカーボンシティを宣言している自治体は679。その実現に向け、自治体や地域企業、住民が一体となって地域エネルギー事業に取り組むことで、脱炭素だけでなく地域内経済が循環し、雇用にもつながる。本書では自治体のエネルギー政策、地域新電力について豊富なデータや事例をもとに紹介し、その可能性や課題をまとめた。

著者情報

一般社団法人ローカルグッド創成支援機構事務局長

稲垣憲治(いながき・けんじ)氏

1981年愛知県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。京都大学大学院博士後期課程研究指導認定退学。文部科学省、東京都庁を経て、地域活性化や地域脱炭素への思いが高じ、2020年から一般社団法人ローカルグッド創成支援機構事務局長。これまで自治体の再エネ普及施策企画、地域新電力の設立・運営などに従事。現在は、地域新電力の価値向上に全力で取り組んでいる。
また、京都大学大学院において「地域新電力×再エネ×まちづくり」の研究活動も行う。環境省、経産省、川崎市、練馬区等の各種検討会等委員、総務省地域力創造アドバイザーなどを歴任。

本書のコンセプトと構成/目次

  1. 第1章 国のエネルギー政策の現状
  2. 1.1 エネルギー政策を大きく変えた東日本大震災
    1.2 再生可能エネルギーの拡大
    1.3 電力システム改革
    1.4 新電力の台頭
    1.5 日本の温室効果ガス削減

  3. 第2章 動き出す自治体エネルギー事業
  4. 2.1  いま、自治体が地域エネルギーに 取り組むべき理由
    2.2 自治体のエネルギービジョンと具体的政策
    2.3 注目の自治体再エネ新施策

  5. 第3章 地域新電力を徹底分析!
  6. 3.1 全国に広がる自治体関与の「地域新電力」
    3.2 全国74の地域新電力を総力調査!
    3.3 地域新電力の意義
    3.4 地域新電力の事例紹介
    3.5 地域新電力の実務と三セクとしての留意点
    3.6 試練にどう取り組むか

  7. 第4章 地域で稼ぐエネルギー事業に向けて
  8. 4.1 地域の稼ぎを測る「地域付加価値創造分析」
    4.2 地域新電力による「地域の稼ぎ」の高め方
    4.3 地域のためのエネルギー事業とするポイント
    4.4 重要性が増す自治体職員のノウハウ蓄積

  9. 補論 地域が稼ぐまちづくり事業のポイント
  10. 1 これまでのまちづくり事業の失敗
    2 まちづくり事業による地域の稼ぎを分析
    1 地域全体をホテルに見立てる「まちやど」
    2 魅力ある地域店舗が出店する「地域マーケット」
    3 地域資源の活用と地域人材による実践が「地域の稼ぎ」を増やす

著者インタビュー

地方創生はずっと叫ばれ続け、それに向けてのまちづくり事業の試みが全国で延々と続けられている。地域活性化、地方創生の掛け声の中、これまで多くの予算がつき、全国でまちづくり事業が実施されてきた。一方で、少なくない事業企画がコンサルタントなどに丸投げされ、美しい報告書が納品されるが、実行主体がおらず実行されない、実行されても責任があいまいなどでとん挫してしまうなどの話も多い。国からの地方への補助金が、委託を通じ、結局大都市の大企業に流れてしまっているという指摘もある。地域主体で実施しないと地域の稼ぎがうまれてこないことは徐々に分かり始めている。本書においては、様々な地域事例が出てくるが、どれも地域の担い手が本気になって取り組み、地域に稼ぎを生み出しているという点で共通している。
本書で言う「稼ぐまち」とは、地域人材自ら事業を実践することによって地域に循環するお金を増やし、さらに事業ノウハウを地域で蓄積していくことで、持続的に発展していく地域である。地域の人が担い手にならずに他社に任せしてしまい、地域の稼ぎを生まなかったこれまでのまちづくり事業の失敗を繰り返すことなく、地域に稼ぎを生み出すエネルギー事業が全国に広がることを願ってやまない。
この本をとおし、地域でやってみればできることも多いこと、そして、地域での実践が何より地域の発展に重要だということが共有されれば幸いである。

(本文より)