簡易ガス
簡易ガスとは
簡易ガス(コミュニティーガス)とは、昭和45年に改正・施行されたガス事業法により創設された仕組みです。政令で定める簡易なガス発生設備において生成したガスを導管で送り、70戸以上の家庭(主に団地・集合住宅)などに供給します。
簡易ガスを販売する事業者は、ガス小売事業者の登録を行い、ガスを供給しています。事業者は、簡易ガスの安定供給に必要な規模の特定ガス発生装置を導入することを義務付けられているため、原則として供給不足が生じるリスクがありません。
簡易ガスとして供給されるガスの種類はプロパンガスです。 都市ガスのようにメタンを主成分とする天然ガスではなく、液化石油ガス(LPG)が用いられます。ただし、一般的なプロパンガスとは異なり、個別のガスボンベを設置する必要はありません。団地内などに「バルク貯槽」と呼ばれる設備を設置し、導管を通じて各家庭にガスを供給するため、供給形態は都市ガスに似ています。
なお新電力ネットでは、簡易ガスの販売量・調停数(契約件数)・市場規模の推移について以下ページにまとめています。
簡易ガスの特徴
簡易ガスには、大きく4つの特徴があります。
地域密着型
都市ガスのように市域全体にサービス展開されるわけでなく、ニュータウン、団地、マンションなどの小規模な地域コミュニティで完結する供給モデルです。
クリーンエネルギー
簡易ガスの原料として用いられるLPガスは、燃焼による排ガス中のCO₂排出量は、石油や石炭に比べて非常に少ないクリーンエネルギーです。また、天然ガスと比べて約2.5倍の発熱量を有するため、環境にやさしいエネルギーとしても注目されています。
災害対応
災害対応の早さも簡易ガスの特徴です。平成28年4月14日に発生した熊本地震では、災害発生から14日後の4月28日中に安全点検と設備補修が完了し、復旧をしています。これは、4月30日に全面復旧を果たした都市ガスよりも早い復旧ペースでした。
初期コストの安さ
簡易ガスを設置する場合は導管などの埋設工事が必要ですが、この費用は事業者側が負担することが一般的です。 また、簡易ガスを利用する場合は、プロパンガスとは異なり、各家庭がガスボンベを設置する必要がありません。そのため、簡易ガス導入時の初期コストを抑えられます。
簡易ガスに関する法制度
簡易ガス事業を開始する場合は、経済産業大臣の許可を受ける必要があります。許可にあたっては「ガス利用者の利益を阻害しないこと」「ガス工作物が著しく過剰とならないこと」が必要とされており、これらの要件に基づき、一般ガス事業との関係を調整しなければなりません。 このため、許可を受けた供給地点については、他の簡易ガス事業者が参入できず、簡易ガス事業間での独占が認められています。
また簡易ガス事業者には、ガス事業法に基づく保安義務が課せられています。
例
- 技術上の基準に適合するように維持する義務
- ガス工作物の使用前検査等の義務
- 消費機器に関する周知及び調査義務
- 緊急時の対応義務
また、ガス小売全面自由化の導入により、簡易ガスにおける料金規制は撤廃されました。従来は一般ガス事業者が家庭などへのガス供給を地域で独占していましたが、現在は登録を受けた事業者であればガス小売事業に参入できます。ただし、需要家保護のために競争が不十分な一部の地域では、規制料金メニューの提供が経過措置として義務付けられています。
簡易ガスの課題
簡易ガスは、液化石油ガス(LPG)をバルク貯槽に蓄え、導管を通じて各戸へ供給する仕組みです。その燃料であるLPGは国内自給率が低く、多くを輸入に依存している点が大きな課題となっています。
国内生産されるLPG(原油精製や化学製品の副産物)は2023年時点で全体の約15%にとどまり、残りの約85%を輸入しています。 このため、産出国の政治情勢や社会情勢が変動すれば、簡易ガスの安定供給が揺らぐリスクは避けられません。
しかしLPG輸入量のうち6割以上をアメリカから輸入しており、さらに近年、オーストラリアやカナダからの輸入量も増加しています。かつて主な輸入先であった中東諸国と比較して、供給は安定しやすく、調達リスクの軽減、価格の安定化にも繋がっています。
また政府は国家・民間による備蓄を定めており、LPガスの供給リスクに備えています。国家備蓄では輸入量の50日分、民間備蓄では輸入量の40日分の備蓄を実施しています。
また、簡易ガスの多くが特定の団地内における独占的な供給形態となるため、事業者間の競争原理が働きにくいことも課題の一つです。ガス小売全面自由化以降も、規制料金メニューの提供が経過措置として義務付けられており、十分な競争環境が生まれていない可能性があります。経済産業省は、この課題に対して「ガスシステム改革」を打ち出し、更なる競争的な市場環境の整備を進めています。
















