図解でわかるカーボンリサイクル、未来エコ実践テクノロジー
発行年月日:2020年9月16日
発行所:技術評論社
カーボンリサイクルは、二酸化炭素の排出を大幅に削減する上で、必要なエネルギーシステムとして注目されています。本書では、CO2の発生から回収、利用に始まり、CO2から化学品や燃料を製造する方法を示し、国際的視点から持続可能な社会を目指す方法を解説します。
著書内容
わが国の一次エネルギー使用量を確保しつつ、CO2実質排出ゼロとするには、低炭素燃料の使用、省エネやCCS、国内の再生可能エネルギー導入だけでは困難であり、海外の再生可能エネルギー活用も含めたカーボンリサイクルを念頭にCO2を有効利用(CCU)するエネルギー社会の構築を目指していく必要性があると考えています。
2019年2月には、経済産業省内にカーボンリサイクル室が発足し、技術ロードマップが策定され、カーボンリサイクルが注目されており、近年、様々な国際会議が開かれています。エネルギー業界をはじめとした産業界だけではなく、各界の皆さんが大いに関心を持つ状況にありながら、技術が分野横断的で範囲が広く、世界の動きや制度もウォッチしなければなりません。そんな状況で、何をなすべきか悩んでいる方が多いのが実情でしょう。
本書は、幅広い読者を対象として、カーボンリサイクルの必要性と概念を説明し、CO2実質排出量ゼロを目指す上で、必要なシステムと要素技術を図や表を用いて解説するものです。CO2はどこで発生し、どうやって回収するか、何に使われているのかに始まり、CO2からオレフィンやポリカーボネートなどの化学品、メタンやメタノールなどの燃料製造の方法を示します。コンクリートに固定化する方法もあります。これら分野における昨今の研究動向も示しました。さらに、CO2を大幅に削減するためには、世界規模でカーボンリサイクルのシステムを構築し、持続可能な社会を目指す必要性を解説します。
また、カーボンリサイクルを進めるには、CO2を発生することなく水素を製造するための再生可能エネルギーの導入が欠かせません。太陽電池(PV)や風力発電などによる再生可能エネルギーを、日本で安価に大量に調達することは難しく、豪州などとの国際協力も重要です。さらに、日本の政府の政策や選択肢、カーボンプライシングを進める上での課題にも触れ、実務に役立つようにしました。
主要目次
第1章 CO2 をなぜ利用するのか
1. 1 大気中のCO2濃度上昇とその問題
1. 2 世界で排出されるCO2 量
1. 3 日本のCO2 排出量
1. 4 現在までと将来予測される気温上昇
1. 5 2030年に向けた日本のエネルギー計画
1. 6 省エネルギーによるエネルギー削減の現状
1. 7 現在のCO2 の用途
1. 8 現在のCO2 生産方法
1. 9 世界の地球温暖化への対応
1. 10 SDGs への取り組み
1. 11 排出量ゼロを達成するに必要なCO2 利用
1. 12 OCO2 利用で削減できるポテンシャル
第2章 CO2利用の難しさ
2. 1 CO2排出量を減らすには
2. 2 CO2の回収方法
2. 3 CO2回収の実績
2. 4 CO2の輸送
2. 5 CO2 回収技術の研究
第3章 カーボンリサイクルの仕組み
3. 1 カーボンリサイクルのイメージ
3. 2 エネルギーシステムと構成する技術
3. 3 CO2 利用技術
第4章 CO2 を固定する技術
4. 1 CO2の地中貯留
4. 2 CO2貯留の実態と課題
4. 3 CO2の鉱物への固定
4. 4 CO2を炭酸塩化する
4. 5 炭素材料
4. 6 石油増進回収(EOR)
4. 7 日本の研究開発プロジェクト
4. 8 海外の研究開発プロジェクト
第5章 CO2 を燃料として利用する
5. 1 燃料化の意味
5. 2 E-Fuelsとは
5. 3 メタン
5. 4 P to G
5. 5 メタノール
5. 6 メタノールエコノミー
5. 7 燃料油
5. 8 バイオ燃料とは
5. 9 必要な再生可能エネルギー
5. 10 太陽熱の利用
5. 11 日本のモデルと課題
5. 12 日本の研究開発プロジェクト
5. 13 海外の研究開発プロジェクト
第6章 CO2 から化学品を製造する
6. 1 化学品とは
6. 2 含酸素化合物
6. 3 オレフィンなどの汎用化学品
6. 4 CO2から合成される高分子化合物
6. 5 日本の研究開発プロジェクト
6. 6 海外の研究開発プロジェクト
第7章 必要な水素の製造
7. 1 従来の水素の製造法
7. 2 再生可能エネルギーからの水素製造
7. 3 水素の輸送方法
7. 4 どこで水素を製造するか
7. 5 日本の水素戦略
第8章 世界の視点からすべきこと
8. 1 再生可能エネルギーの共有
8. 2 ネガティブ・エミッション
8. 3 空気からのCO2 回収
8. 4 日本へのCO2 フリー燃料の導入
8. 5 世界との連携
第9章 カーボンリサイクルへの道
9. 1 日本のGHG削減目標を達成するための施策
9. 2 カーボンリサイクル技術で短期になすべきこと
9. 3 カーボンリサイクル技術で長期を見据えてなすべきこと
9. 4 経済性の観点から考えたカーボンリサイクル
9. 5 政策の選択肢
9. 6 カーボンリサイクルの理想的なあり方
9. 7 カーボンリサイクル推進のための課題
Column 1 間違えてはいけないkWとkWhの違い
Column 2 石油の回収は城攻めで?!
Column 3 天然ガスを液化するLNGプラント
Column 4 Gas to Liqiuds(GTL)技術
Column 5 オーストラリアの太陽光発電電力をシンガポールへ
Column 6 地球上最安値の再生可能エネルギー発電電力単価
Column 7 CCUの国際会議
Column 8 CO2 を減らしながらメタノールを生産する人工島構想
著者情報
一般財団法人エネルギー総合工学研究所の機械・エネルギーシステム工学、資源・エネルギー工学、物理化学、化学工学、および地球環境、水素分野の博士号を有する各専門の研究員7名が総力を挙げ、最新情報を織り込みながら共同執筆したものです。