エネルギーデジタル化の未来

発行年月日:2017年2月25日
発行所:エネルギーフォーラム

執筆者:江田健二

エネルギーデジタル化の未来の写真

エネルギーにおけるデジタル化の波は、これまでのエネルギーの作られ方や利用方法はもちろん、 エネルギーに対する見方や価値観を根底から変え、新しい大きなビジネスマーケットを創り出す可能性を秘めています。本書は、エネルギーにおける「デジタル化」「データ化」が招く未来について、通信の歴史をなぞらえつつ紹介をしていきます。

著者インタビュー

著者情報

江田健二の顔写真

一般社団法人エネルギー情報センター

理事 江田健二氏

1977年富山県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュアに入社。2005年に起業したのち、RAUL(ラウル)株式会社を設立。一般社団法人エネルギー情報センター理事

ーー本書を執筆した動機は?

昨年4月の電力自由化を契機としたエネルギーを取り巻く状況の変化は、単純に「自由化=市場の開放」というキーワードだけでは語れない、私たちの日々の暮らしや価値観を変えるような影響力をもっています。

「エネルギーにおけるデジタル化」は、エネルギー業界を超えて、新しいビジネスマーケットを創り出す可能性があるのです。変化に乏しいイメージが強くなりがちなエネルギー業界ですが、本書を通じてさまざまな方々にあらためて魅力を感じていただきたいと思い、本書を執筆しました。

ーー本書で特に訴えたいことは?

電力ビジネスは、これから10年から20年という歳月をかけて、デジタル化が進みます。その中で、IoT、ロボット、ドローン、AI、ブロックチェーンといったテクノロジーと融合します。エネルギー業界はこれまで生産者と利用者のやりとりだけで成り立つ、いわば「生産業」「流通業」としての役割でしたが、このデジタル化によって「情報産業」の一翼を担うことになるでしょう。

少し大げさなのですが、これは「今世紀最大のビジネスチャンス」です。通信の自由化から始まった変化が今の私たちの生活習慣に与えた影響を思えば、その変化の大きさを想像していただけると思います。私が高校生のころは、まだ黒電話が自宅にありました。今では、小学生でもスマートフォンを持ち歩き、世界中の友達と当たり前に会話しています。変化の波にいち早く気付くことで、ビジネスの先手を打つことができるのではないでしょうか。

ーー今後のエネルギー社会について?

IoTの技術革新が進むにつれ、電力を必要とする機器が増加する一方、発電での地球環境への影響は、最小限に抑えなければなりません。そのためのエネルギー利用の効率化が進み、またエネルギーの生産方法や蓄電方法の技術革新が進むことは必須です。2030年は、今よりもずっと循環型社会へと近づいていると思われます。

書籍内インタビュー・コラム抜粋

【前編】速水浩平氏に聞く「身近な道具から社会インフラまで幅広く活躍する『振動力発電』」

【後編】速水浩平氏に聞く「大きな目標のひとつは「波力発電」を実現させること」

石橋秀一氏に聞く「電力とIOTの融合でライフスタイルを豊かにする時代に」

目次

第1章
  1. 電力自由化の背景 なぜ日本は自由化に踏み切ったか
  2. 電力自由化の影響(個人)
  3. 電力自由化の影響(法人)
  4. 他業界での自由化(民営化)の効果
  5. 電力自由化が魅力的でないと思われがちな3つの理由
  6. エネルギービジネス第2章の始まり
  7. デジタル化された通信分野
  8. 25年前だったら夢のような話
  9. 通信分野で発展した3つの階層1 インフラ・ネットワーク層
  10. 通信分野で発展した3つの階層2 ハード・ソフトウェア層
  11. 通信分野で発展した3つの階層3 コンテンツ層
  12. 通信分野で発展した3つの階層がもたらしたもの
  13. 電力自由化で起こりつつある予兆
  14. 気づき始めている先進企業
  15. 【コラム】 通話が無料になっても収益が増える通信ビジネスの仕組み
第2章
  1. インフラ・ネットワーク層:スマートメーター
  2. スマートメーターデータを活用がビジネスチャンスとなる
  3. インフラ・ネットワーク層:ワイヤレス充電
  4. ニーズが高まるワイヤレス充電
  5. インフラ・ネットワーク層 ブロックチェーン
  6. 電力業界にも影響を与えるブロックチェーン技術
  7. ハード・ソフトウェア階層:電気自動車
  8. ハード・ソフトウェア階層:蓄電池
  9. 電気自動車・蓄電池の未来
  10. ハード・ソフトウェア階層:エネルギーハーベスティング技術
  11. 電気も集中から分散へ
  12. コンテンツ階層:IoT
  13. コンテンツ階層:ロボット、ドローン
  14. 電気の利用情報が資産となる時代
  15. 変化の途中にある電気の世界
第3章
  1. ビジネスチャンスの見つけ方
  2. 事例の紹介1 インフラ・ネットワーク階層
  3. 〈事例1〉Enernoc社
  4. 〈事例2〉Powershop社
  5. 〈事例3〉espot
  6. 事例の紹介2 ハード・ソフトウェア階層
  7. 〈事例1〉MoixaTechnorogy社
  8. 〈事例2〉Wattway
  9. 〈事例3〉㈱音力発電
  10. 【コラム】 インタビュー ㈱音力発電 代表取締役 速水浩平氏
  11. 事例の紹介3 コンテンツ階層
  12. 〈事例1〉C3 IoT社
  13. 〈事例2〉㈱Sassor
  14. 【コラム】 ライフスタイルを豊かにする電力とIoTの可能性 ㈱Sassor CEO(最高経営責任者) 石橋秀一