2016 地産地消電力事業の実態と戦略分析

発刊日:2016年07月
発行所:株式会社矢野経済研究所

編著者:浅野求

2016 地産地消電力事業の実態と戦略分析の写真

本調査レポートは、地産地消モデルの電力小売事業の実態を調査し、事業戦略や将来展望を分析したものです。実際に地産地消モデルでビジネスを展開している事業者に対し、直接面接取材および電話取材等をすることで調査・分析が行われています。

著者インタビュー

著者情報

浅野求の顔写真

株式会社矢野経済研究所 エネルギー&機械産業グループ 主席研究員

浅野求氏

1982年名古屋大学理学部卒業後、技術系企業を経て、1996年に矢野経済研究所入社。主に電力・ガスなどエネルギー分野やビル設備などファシリティマネジメント、エンジニアリング全般、環境関連等の市場調査に加えて、各種文献やDBからの分析業務にも従事する。また、各種の講演、寄稿等などの実績も多数。

Q1.本調査レポートを書いたきっかけは?

電力小売りの全面自由化が始まり、電力各社は自由市場の中で、顧客にとって魅力的なサービスの提供に努めています。家庭向けにおいては価格面以外からのアプローチも活発で、各社が消費者の多様な価値観に沿うように商品性を工夫し、その智恵で競いあっています。

ただし、現状では電力の切り替えにおいて価格面ばかりが重視される傾向にあり、電力自由化が本来もつバリエーションが十分機能していないように考えております。そうした環境の中、価格面だけではなく、地域がもつ再生可能エネルギーのポテンシャルにスポットを当てたいと考え、それが本調査レポートを作成する動機となりました。

Q2.本調査レポートで特に伝えたいことは?

地産地消電力の概念には大きく2つの要素が入っています。まず一つ目は、電力小売りの全面自由化です。自由化されたことにより、発電側も電力消費側も自治体や市町村といった、セグメントされた地域に対し特化したアプローチが可能となりました。

二つ目は、固定価格買い取り制度(FIT)です。再生可能エネルギーによる発電には高コストや発電量の不安定性といったデメリットがありますが、FITはそうしたリスクを吸収してくれる役割があります。

この二つが組み合わさることにより、地産地消電力というビジネスモデルは可能となります。本調査レポートの作成においては、そういったビジネスモデルを持った事業者さまに直接ヒアリングして、実際にどうやって事業を立ち上げたのか、今後はどうしていくのか、といったことなどを取材しました。そうした10以上の事業者さまからの生の声を独自に収集し、得られたデータから戦略分析や将来展望を描き出している所が、本調査レポートの提供できる価値であると考えております。

Q3.今後の地産地消電力について

シナリオを持った電力の小売を行なう地産地消電力ビジネスモデルでは、価格の比較ではなく、その地域の消費者に魅力的な電力商品を提供できます。この「シナリオを持った」というのは、消費者が支払うコストに対し、納得を得られるビジョン =「再生可能エネルギーの普及と地域の活性化」を電力会社が提供できているということです。

電力会社が提供しているシナリオやサービスに納得し、それを受け入れてくれる消費者が増えることが、地産地消電力ビジネス普及の要になると考えています。地域における再生可能エネルギーと電力会社の繋がりを見据えて、それに賛同する人が電力を選択する、そういった流れになることを期待しております。

調査結果のポイント

第1章 地産地消電力事業の現状

1.地産地消電力事業の定義
2.地産地消電力事業の参入事業者
3.参入事業者の実態
  (1)自治体系
  (2)生協系
  (3)デベロッパー/エンジニアリング系
4.地産地消電力事業の市場規模

第2章 有力事業者の取り組みと戦略分析

1.自治体系小売電気事業者
  (1)中之条パワー
  (2)みやまスマートエネルギー
  (3)やまがた新電力(山形パナソニック)
2.生協系小売電気事業者
  (1)パルシステム電力
  (2)コープこうべ
  (3)地球クラブ
  (4)生活クラブエナジー
3.デベロッパー/エンジニアリング系小売電気事業者
  (1)日立造船
  (2)浜松新電力(NTTファシリティーズ)
  (3)千葉電力(フューチャー・リレーション)
  (4)水戸電力(スマートテック)
  (5)みらい電力(エヌパワー)

第3章 地産地消電力事業の将来展望

1.事業課題と将来展望
  (1)制度設計の課題と将来展望
  (2)事業者の課題と将来展望
2.市場規模推移予測