ワット・ビット連携
発売日:2025年10月1日
出版社:電気書院
執筆者:馬橋義美津、明道保衛、山田智之
GX(グリーントランスフォーメーション)実現の切り札!
電気と光ファイバーによる日本列島改造論。
電力系統と通信基盤を一体的に整備する壮大なプロジェクトの全貌。
東京電力パワーグリッド「MESH(メッシュ)構想」とNTT「IOWN(アイオン)構想」の統合のゆくえ――
「エネルギーと情報の融合がもたらす未来の可能性を具体的かつ体系的に示した必読の書」
東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長、推薦!
著者インタビュー
著者情報
馬橋義美津氏
電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 研究統括室 上席
1992年、慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻修了後、東京電力に入社。2010~2012年、本店技術部電力取引グループマネージャー。2012~2014年、同部電源計画グループマネージャー。2014~2016年、パワーグリッドカンパニー系統エンジニアリングセンター系統技術グループマネージャー。2016~2018年、東京電力パワーグリッド系統計画室系統技術グループマネージャー。2018~2020年、東京電力ホールディングス技術戦略ユニット技術統括室(技術戦略担当)兼渉外・広報ユニット海外事業室。2020~2023年、東京電力ホールディングスとNTTの共同出資会社TNクロス代表取締役副社長。2023年より現職。スマートレジリエンスネットワークアンバサダーを務める。
明道保衛氏
エナ・ストーン 代表取締役
証券会社勤務ののち、メーター関連メーカーにてコージェネレーション(熱電併給)システム関連設備の設計・施工などを担当。ファクトリー・オートメーション(FA)専門商社、エネルギー系ベンチャー企業にてプラント監視や遠隔制御システムを手がける。大手液化石油(LP)ガス事業者の情報部門にてエネルギー管理システム開発、エネルギー系ベンチャー企業にて総合スーパー(GMS)向けエネルギー管理システム開発を行う。新電力エナリスにて組み込み開発及び事業開発を行ったあと、2016年より現職。
山田智之氏
電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 主任研究員
2012年、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻修士課程修了。2018年、電力中央研究所に入所。主に需要側資源の動向を考慮したエネルギーシステム分析業務や、デマンドレスポンス(DR)、仮想発電所(VPP)の海外動向調査業務に従事。
解説/内容
GX(グリーントランスフォーメーション)実現の切り札!
電気と光ファイバーによる日本列島改造論。
電力系統と通信基盤を一体的に整備する壮大なプロジェクトの全貌
東京電力パワーグリッド「MESH(メッシュ)構想」とNTT「IOWN(アイオン)構想」の統合のゆくえ――
本書のコンセプトと構成/目次等
目次
はじめに エネルギーと情報の融合が拓く未来
第1章 エネルギーと情報が出会う時代
1 地球規模の課題:気候変動とエネルギー転換
2 日本の課題:成長を妨げるもの
3 デジタル化の奔流:IoT、AIが変える社会
4 「ワット」と「ビット」の交差点
5 なぜ、今「ワット・ビット連携」なのか?
第2章 ワット・ビット連携とは何か?
1 電力網と通信網:まったく異なるネットワーク
2 エネルギー(ワット)の世界:電力システムの基礎知識
3 情報(ビット)の世界:ICTの基礎知識
4 ワット・ビット連携の定義と概念
第3章 ワット・ビット連携を支える基盤技術【エネルギー編】
1 スマートグリッド:次世代電力網のアーキテクチャ
2 スマート電力量メーターと高度計測基盤(AMI)
3 再エネの出力制御と系統連系技術
4 蓄電技術の活用
5 パワーエレクトロニクス:電力変換と制御の要
第4章 ワット・ビット連携を支える基盤技術【情報通信編】
1 IoT:モノのインターネット
2 通信技術と通信プロトコル
3 データ分析とAI活用
4 サイバーセキュリティ:インフラ防衛の重要性
5 IOWN:光を駆使した次世代通信網
第5章 ワット・ビット連携以前の取り組み
1 エネルギーマネジメントシステム(xEMS)
2 DR
3 VPPと市場
4 EVとの連携:V2Xの可能性
5 スマートシティにおける地域エネルギー最適化
第6章 ワット・ビット連携の今
1 日本における取り組み
2 海外の先進事例
3 各国の政策・規制・制度
4 国際標準化の動きと相互接続性の確保
5 データセンターの分散化と電力最適化
第7章 ワット・ビット連携が生み出す新ビジネスとエコシステム
1 新たな市場とビジネスモデル
2 ステークホルダー
3 データを最大限活用するために
4 セクターカップリングの重要性
5 デジタルツインの可能性
第8章 ワット・ビット連携の未来展望と乗り越えるべき課題
1 技術進化の方向性
2 将来のエネルギーシステム
3 社会実装に向けた課題
4 持続可能な社会への貢献:カーボンニュートラル実現に向けて
5 MESH:自律的な電力網の実現に向けて
おわりに 情報とエネルギーが創る持続可能で快適な社会のために
関連用語集
参考文献
著者メッセージ
情報とエネルギーが創る持続可能で快適な社会のために
エネルギーの世界は今、「Utility 3.0」と呼ばれる、地球に優しく、長く続けられる社会を創るための大きな変化の中にあります。
脱炭素化の流れは、これまで電気を使う人でしかなかった私たちに電気を作る力を与え、世界を変えていくきっかけとなりました。再エネは、瞬く間に電源としての地位を確立していきました。電気を作る会社、使う家庭や企業、技術を造る会社、官公庁や投資家など、多くの人たちが協力する新しい社会の形が生まれているのです。
そして、AIやIoTといったデジタル技術の普及は、私たちの暮らしや仕事が便利になる一方で、電気を使う量がますます増えているという問題も出てきています。
さらに、地球環境に優しい再エネを中心にしていこうという動きが進んでいるなかで、石油や石炭など化石燃料由来の火力発電所が次々に止まっています。これにより、電力を安定して供給することが難しくなってきています。必要なときに、必要な場所へ、必要なだけ電気を届けられなければ、「Utility 3.0」の社会は実現できません。
これまでは「良質な電気を必要なだけ使う」という考え方が中心でしたが、これからは「今ある電気の質と量に合わせて、賢く使う」という新しい考え方が大切になります。再エネやインバーター機器の導入は、これまでのような「良質な電気」を求めることさえ厳しい環境をつくってしまっていることも事実です。そこで、電気を作る側だけでなく、使う側も工夫しながら社会全体でバランスをとることが求められているのです。
最終的な形態、「MESH」で示す世界は、この多種多様な人たちをつなぐことで社会全体としてエネルギーの利用の最小化、最適化目指すものであり、このような新しい社会を目指す考え方の入口が「ワット・ビット連携」です。
電気を賢く使うためには、インターネットやAIを使って「どのくらい使うか」や「どうやって使うか」といった情報を集めてつなげることが大切です。そして、電気の質や量に合わせて使い方を工夫することで、新しい発電所や電気の設備をたくさん造らなくても、早く電気を使えるような環境を整えられます。これこそが「ワット・ビット連携」という考え方の中心であり、データセンターは、その象徴的な存在といえるのです。
そして、このつながりをより早く、効率よく進めるための技術が「IOWN」といえるでしょう。これは、本書でも述べたとおり、光を使って遠くにいる人たちを素早くつなぐ仕組みです。IOWNを使うことで、データをやり取りするときに使う電気を少なくでき、遠くにある機械やコンピューターを素早くかつ効率よく動かせます。
本書では、データセンターに端を発したワット・ビット連携の姿と、それを社会全体の行動変容へと導くMESHによる未来像を解説しました。もちろん、ワット・ビット連携の実現には、技術的な課題だけでなく、制度設計、標準化、セキュリティ、人材育成、社会的合意形成といった多くの壁を乗り越える必要があります。しかし、それらをひとつずつ解決していくことで、私たちは、持続可能かつ快適なエネルギー社会の実現に向けた道筋を描けるのです。本書が、そうした未来に向けた一助となり、読者の方々の次なる行動や連携の起点となることを願っています。
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