バイオコークス- 再生可能エネルギー社会の礎となる新しい固体バイオエネルギー –

2022年1月20日
コロナ社

井田民男

バイオコークス- 再生可能エネルギー社会の礎となる新しい固体バイオエネルギー –の写真

持続可能な社会の実現に貢献する次世代固体バイオエネルギー「バイオコークス」を解説。

著者情報

近畿大学バイオコークス研究所 所長

井田民男氏

1962年(大阪府)生まれ。学部の卒業研究は、レーザ計測を開発し、乱流拡散火炎構造の実験的研究に携わり、研究の面白さ、奥深さを体験し、師の導きもあり研究者への道へと進んだ。研究では、レーザ診断による乱流拡散火炎構造の解明で博士号を取得し、マイクロフレームと言うミクロな燃焼科学へと発展していった。が、人生の岐路を契機にバイオエネルギーの研究開発に従事し、バイオコークスへと導かれ、国内初の固体バイオエネルギーを研究する近畿大学バイオコークス研究所創設に至った。大学時代は、ヨット部に所属し、セーリングとバイクツーリングを楽しんだ。座右の銘「堪え難きを耐え、忍び難しを忍ぶ」「脱常識」を尊び、自然の中にある真理を見つめる研究を楽しんでいる。

解説

本書では木本系、草本系、農産系、厨芥系、果樹系バイオマス資源の特性を熱・物理学的観点から説明し、さらにバイオコークスの熱エネルギーとしての基本特性や循環型社会実現に向けたバイオコークス開発の意義などについて解説する。

本書の内容

  1. 第1章
  2. バイオエネルギーの位置づけについて、多面的に説明しています。エネルギーは、すべての活動を支えるもとであり、持続的に営みを続けるための原動力であります。バイオエネルギーは、生合成と分解・燃焼反応作用を介して分子構造を変えながら炭素循環と炭素備蓄をほぼ永遠に繰り返す「自然システム」から得られる炭素中立性を有し、持続可能かつ再生可能なエネルギーとして位置づけ、その基本特性について述べています。

  3. 第2章
  4. 植物由来のバイオマスはその植生により、陸上で生育する陸生バイオマスと水中・海中で生育する水生バイオマスとに分類できます。ここでは、固体バイオ燃料の固形化についての基礎的な特性を述べています。

  5. 第3章
  6. バイオコークスは、固体バイオ燃料の一つである。そして、その特殊性は、すべてのバイオマス原料から形成できることと、その形成条件にあります。バイオコークス化は、バイオマスの骨格を構成する三つの主成分の三つの成分を有する粒子間の結合反応により形成され、ほぼすべてのバイオマスを資源として利用することができます。ここでは、バイオコークスの基本特性を述べています。

  7. 第4章
  8. 1970 年代のオイルショックにより着目されたエネルギー備蓄の重要性、エネルギー資源の枯渇危機、地球規模での環境破壊などを原因とするエネルギー問題は、1997 年のCOP3 から再生可能エネルギーによる解決が試みられているが、各国の思惑が食い違い、まとまりきれていません。ここでは、エネルギー基盤としてのバイオコークスの開発意義を研究成果を基に多面的に述べています。

  9. 第5章
  10. 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が森林、町などへ広域かつ多量に拡散されてバイオマス由来の建築材や枯れ葉、草、樹木、樹皮などに付着し、空間線量が上昇する被害が拡大しました。ここでは、バイオコークス化を活用した減容化、放射性物質の閉じ込め効果などを述べています。

  11. 第6章
  12. わが国のバイオエネルギー発展の起点は、2002 年12 月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」であります。これに基づき、関係省庁によりさまざまな計画的な施策の推進が図られてきました。地球温暖化の防止、循環型社会の形成、競争力のある新たな戦略的産業の育成、農林漁業,農村漁村の活性化、これらの実現に向け,産官学が一体となって各施策を推し進めています。ここでは、固体バイオ燃料の変遷から長期エネルギー備蓄の必要性、標準規格化について述べています。

  13. 第7章
  14. エネルギー資源は、ストック(備蓄量)とフロー(消費量)のバランスにより、その循環性が担保されます。このバランスは太陽エネルギーを起源とし、光合成に起因する炭素循環や体内での消化活動に起因する窒素循環などが地球システムの一環を形成している事実からも、エネルギー資源備蓄の重要性が理解できます。ここでは、これから訪れる世界の大きなエネルギー問題を克服するためには、永遠かつスパイラルのように続く研究者が抱える試練と、平和への強い想い、さらにそれらの礎である確固たる理念や哲学を後世に伝える必要性について述べています。

著者インタビュー

エネルギー資源枯渇が視野に入りつつあるなか、地球規模での環境保全が急務となっています。この2つの課題は、1つの解で解決するはずなのですが、この解を実現する難しさにジレンマを感じずには入られません。持続可能なバイオエネルギーの開発と備蓄に向けた取り組みについての議論が活発になることを祈念しています。