激震走る国際エネルギー情勢
発売日:2022年6月23日
出版社:エネルギーフォーラム

本書では、ウクライナ危機、カーボンニュートラル、コロナ禍等、激震にさらされた2020年以降の国際エネルギー情勢を俯瞰して、世界が、日本がどこに向かうのかエネルギー問題解決に向けた取り組みをどう進めていけばよいのかという問題意識をもって、さまざまなトピックを取り上げ、分析しています。
著者情報

日本エネルギー経済研究所 常務理事・首席研究員
1959年、長野県生まれ。1986年、早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、日本エネルギー経済研究所入所。2001年、英国ダンディ大学博士号(PhD)取得。日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員、現職。東京大学公共政策大学院客員教授、東京工業大学科学技術創成研究院特任教授を兼務。その他、国際経済研究所客員シニアフェロー、日本卸電力取引所理事などを務める。経済産業省をはじめ政府審議会・委員会などの委員を多数歴任。
本書のコンセプトと構成/目次
ウクライナ危機、カーボンニュートラル、コロナ禍――柔軟な複眼的思考を基にした戦略を追求せよ!- はじめに
- 第1章 本書の論考における視座
- 第2章 世界のエネルギー市場に関する「現実」
- 第3章 コロナ禍で激変した国際エネルギー情勢
- 第4章 加速化する脱炭素化の潮流:カーボンニュートラルを目指すエネルギー転換
- 第5章 バイデン政権の気候変動・エネルギー政策とその影響
- 第6章 米中対立激化及びウクライナ危機とエネルギー安全保障の重要性
- 第7章 高まるイノベーションへの期待と課題:世界的な水素・アンモニアブーム
- 第8章 同時多発エネルギー価格高騰とウクライナ危機の衝撃
- 第9章 日本のエネルギー戦略へのインプリケーション:結びに代えて
- おわりに
著者インタビュー
本書を執筆しようと考えた最大の理由は、まさに本書の題目のとおり、2020年以降の国際エネルギー情勢が激震にさらされ、今後のエネルギー情勢がどうなるのかが混沌としている中で、将来を考えるために少しでも役に立つ分析をしてみたいと思ったことである。
コロナ禍で激変した国際エネルギー市場、その中で一気に進んできたカーボンニュートラルの潮流、その後2021年後半からのエネルギー高騰とウクライナ危機の発生など、国際エネルギー情勢は激動の最中にある。その背景には、米国でバイデン政権が誕生し、気候変動政策が180度方向転換するなどの巨大な変化が生じ、米中対立激化やウクライナ危機による地政学情勢の著しい緊張などが存在し、世界を揺り動かし続けている。
安定供給の確保
安全保障の強化
エネルギーは私たちの暮らしや経済にとって必要不可欠なものであるが、価格が安く、安定しているときには空気や水のような存在になってしまいがちである。しかし、今日、まさにエネルギーの戦略的な重要性は世界で、日本で注目の的となっている。エネルギー安定供給の確保、あるいはエネルギー安全保障の強化がエネルギー問題の中心として復活したといってもよい。しかし、同時に、世界は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を大幅に削減し、気候変動対策の抜本的強化にも取り組まなければならない。エネルギー安全保障と気候変動対策の強化を両立させる新たなエネルギー転換が求められているのである。
しかし、その道程は決して平坦ではなく、むしろ険しく不透明で、さまざまな課題が山積しているといった方が正確である。本書は、国際エネルギー情勢を俯瞰して、世界が、日本がどこに向かうのかエネルギー問題解決に向けた取り組みをどう進めていけばよいのかという問題意識をもって、さまざまなトピックを取り上げて分析を試みている。足元で生じ続けている変化は激しく、将来を先読みすることは容易ではない。しかし、そうした中で、本書がエネルギー問題に関心を持ってくださる読者にとって、少しでも役に立つ情報・分析・視点・視座を提供することができるのであれば、望外の喜びだ。
刻々と変化していく国際情勢を踏まえ、またエネルギー情勢を見つめながら、その変化の背後にある骨太の構造をとらえていくことが現在は何よりも重要になっている。本書もその意識をもって執筆したが、今後もエネルギー問題の研究についての自己研さんを重ね、微力ながら社会への貢献を試みていく所存である。