日本の電力自由化 – 欧州の経験から学ぶべきものはあるのか?

2016年12月27日

セレクトラ・ジャパン株式会社

代表取締役 グザビエ・ピノン

日本の電力自由化 – 欧州の経験から学ぶべきものはあるのか?の写真

セレクトラはフランスで電力の自由化が行われた2007年より電気料金・ガス料金比較サイトを運営しており、現在日本を含め世界7か国で同サービスを展開しております。今回のコラムで、日本では簡単にアクセスできないような情報についてシェアさせていただき、すこしでも皆さんの参考になればと考えております。(セレクトラ・ジャパン株式会社 グザビエ・ピノン)

イントロ

2016年4月により完全自由化となった日本の電力市場。誰でも自由に電力会社が選べるようになり、また誰でも電気の小売り会社となることが可能となりました。切り替え率が思ったほど伸びていない、全く盛り上がっていない、そのような状況をみて「電力自由化は失敗」などと報道されるケースもあると聞きます。

セレクトラはフランスで電力の自由化(ガスの自由化も同時に行われました。)が行われた2007年より電気料金・ガス料金比較サイトを運営しており、現在日本を含め世界7か国で同サービスを展開しております。「エネルギーの自由化」に関しては約10年先輩であります。もちろん、色々な点で日本市場と欧州市場は異なりますが、私たちが、この10年で得た経験と地理的・言語的な理由で日本ではアクセスできないような情報についてシェアさせていただき、すこしでも皆さんの参考になればと考えております。

電力会社の切り替え率は急激に伸びることはない

日本で電力自由化が開始されたばかりの頃は、1か月たっても「切り替え率」が1.数パーセントで、切り替え率が非常に低い、全く切り替えがすすんでいないというニュースが聞かれました。そして、現在もその切り替え率の伸びは非常にのんびりとしたものとなっています。しかし、これはフランスでの経験を考えると全く驚くような数字ではありません。というのも、フランスの場合は、切り替え率が1%を超えるのに、1年以上かかったためです。フランスが1年かかった切り替え率を日本では1か月で超したのですから、むしろ日本の切り替え率のスピードは速いといえます。

しかしながら、このようにフランスの電気料金の切り替え率がこれほどゆっくりしているのには、フランスの特殊な事情も関係しています。この点にについて詳しくお話します。

日本では電力自由化が行われる以前には独占といえども、地域の限定された、電力会社が10社存在していました。一方、フランスの場合は、EDF(Électricité de France)と呼ばれる電力会社が1社がフランスの市場すべてを独占していました。(より正確に言えば、地方などではごく小規模の地元の電力会社が存在していた。)

完全自由化までの過程(フランス)
  1. 2000:大口需要家向け市場(年間消費量が16GWh以上)が自由化
  2. 2003:年間消費量が7GWh以上までに下げられる
  3. 2004:全ての法人向け市場が自由化
  4. 2007:一般家庭も含め全ての市場が自由化。電力小売市場全面自由化となる

しかも、これは世界的にもよく知られていることですが、フランスでは原子力による発電にずっと積極的で、現在も約80%の発電が原子力によるものとなっています。このため、電気料金は欧州の中でもかなり安く、また顧客サービスに関しても特に不満の出るようなものではなく、満足の得れるレベルだったため、EDFに対する国民の信頼は非常に高いものでした。このように唯一の電力会社であるEDFがフランス国民の生活にはあまりに浸透していたため、電力会社を変えるというコンセプトがなかなか現実的に考えれなかったのかもしれません。

しかしながら、例えば、オーストリアは、日本のように電力自由化以前よりたくさんの電力会社が存在しており、加えてエナジーコントロールという機関(通称Eコントロール)が啓蒙活動を行ってきているにも関わらず、その切り替え率は低いままです。さらに、オーストリアは、フランスよりもさらに前、2001年にエネルギー市場が行われているにも関わらず、切り替え率は横ばいで2014年にやっと3.4%になった程度であります。(しかもこれは、オーストリア消費者保護団体による団体契約があったため。)

この傾向は、スペイン、ポルトガルなど他の欧州各国においても同様にみうけられます。このように、欧州各国の実例をみれば、事情はある程度違えど、実際に電力会社を変えようという消費者は、急激に増えるものではなく、ゆっくりと変化していくのが普通といえるのではないでしょうか。切り替え率が低いからと言って嘆いたり、やみくもに「失敗」「低調」というように考えるのは正しくないと思われます。むしろ日本は比較的にスピードが速いといえます。しかも「電力自由化により電力会社を選ぶことが出来る」と理解している人の数は、フランスではいまだに国民の約半数にとどまっています。一方、データはありませんが、日本では電力会社を変更こそまだだか、「電力会社を選べる」ことを知っているという人は、少なくとも過半数はいるのではないでしょうか。

欧州の電気料金の種類(フランス)

続いて、欧州にはどのような電気料金がプランがあるのか、フランスを例に紹介していきます。また日本の電気料金プランとの違いをご紹介します。

基本料金

日本の場合は、基本料金はアンペア制と最低料金制の電力会社がありますが、フランスの場合は基本料金はすべてアンペア制になっています。かつての独占企業のEDFの電気料金もその新電力による電気料金プランもすべてアンペア制を採用しています。

さらに付け加えると、単位はアンペアではなくkVA(キロボルトアンペア)で統一されています。日本の場合は、アンペアと電気の使用量の多い需要家向けにはボルトアンペアが単位として使われ、とアンペアとキロボルトアンペアが併用されていますが、フランスはキロボルトアンペアのみです。

また、日本の場合は、10A(1A)から契約ができるようになっていますが、フランスの場合は30A(3kVA)からのスタートになっています。

電力量料金

電力量料金は、日本は使用量に応じて3段階に分かれていますが、フランスの場合は、契約する容量(kVA)ごとに一段階となっています。使用量(kWh)は関係ありません。

フランスでも、社会党のフランソワ・オランドが大統領に就任した際には、電気料金もを日本のような段階制にすべきではないかという議論もあったのですが、分かりにくすぎるという理由で、採用にはいたりませんでした。

実際のに料金表をみてみましょう。以下はEDFの電気料金表です。例えば、3kVAの契約であれば、年間の基本料金は、81.04ユーロ。そして電力量料金は、1kWhあたり0.14910ユーロとなっていることが分かります。

フランスにおける電気料金プランの単価事例

このようにフランスの電気料金プランは日本に比べるとシンプルでわかりやすい仕組みなっているといえるでしょう。

電気料金の種類

上記の料金は、基本プランです。基本プランの他にもピークアワープランやグリーンエネルギープラン(再生可能エネルギープラン)などがありますが、料金の基本的なしくみは、基本プランと同じく、キロボルトアンペアによる基本料金とそれに準じて1キロワットアワーの料金という形がとられています。ピークアワープランも、ピーク時間と非ピーク時間の2種類の時間帯のみで、この時間帯は地域によって異なります。

多少の違いはありますが、欧州全体を通して電気料金の種類やしくみは総じてだいたい同じようなものなっており、やはり日本の電気料金プランに比べるとシンプルで計算もしやすいといえるでしょう。日本の電気料金のしくみがとても複雑なので最初とても驚きました。

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執筆者情報

グザビエ・ピノンの写真

セレクトラ・ジャパン株式会社

代表取締役 グザビエ・ピノン

パリ政治学院・コロンビア大学にて修士号。東京大学に留学経験を持つ。欧州最大手の電気・ガス料金比較サイト「セレクトラ」を運営。現在フランスを中心に欧州7か国でサービスを展開、欧州での経験をもとに2016年5月に日本(セレクトラ・ジャパン:http://selectra.jp/)でのサービスを開始。

企業・団体名 セレクトラ・ジャパン株式会社
所在地 66 Rue Sébastien Mercier, 75015 Paris, France
電話番号 050-3085-0032
メールアドレス contact@selectra.jp
会社HP http://selectra.jp/
サービス・メディア等 https://hikaku.selectra.jp/
https://www.facebook.com/selectra.jp/

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