ガスと電力を比較する、自由化されるセグメントや需要全体における市場規模(4)

2017年02月28日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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前回から引き続き、「電力とガスの違いについて~それぞれの特徴から考察する~」といったテーマにて連載コラムを掲載いたします。第4回目となる今回は、自由化によって生まれる市場や、そもそもの需要全体における市場規模について見ていきます。

ガスと電力はどんな違いがあるのか

電力・ガスは国民生活、産業活動に不可欠な公共サービスであり、代表的な公益産業です。電力とガスは同じエネルギー系のインフラということもあり、抱えている課題や将来への可能性、制度設計など似通っている部分が多々あります。例えば、電力とガスの双方とも、IoTやAIといった技術革新を活用した新サービスや、グローバル市場、自由化による新たな国内市場など、成長への新たな市場ポテンシャルが存在します。

一方で、少子高齢化・人口減少により、国内の電力・ガス需要が伸び悩むといった課題も共通します。現状では典型的な内需依存型の産業であり、需要は国内の人口動態や経済成長率、工場立地動向などの影響を受けます。加えて、サイバー攻撃の高まりなど、電力及びガス事業の経営リスクは更に高まる可能性があります。

ただ、電力とガスも今の状態のままではなく、分散化、自由化、技術革新等により、電力・ガスビジネスにおける付加価値の力点自体が変容していく可能性を秘めています。例えば電力については、発電、送配電、小売といった事業セクターの概念も変わりうる可能性があります。

われわれ消費者にとっても、「光熱費」という言葉があるように、ガスと電力は同じカテゴリーとして取り扱われることも多いです。他方で従来、わが国のエネルギー市場は、電力、ガスといった業態ごとに制度的な類似点がある一方、「市場の垣根」が確かに存在します。

制度面で似通っている部分も多々あり、例えば全面自由化までの大枠のスケジュールが挙げられます。電力とガスの両方とも、大口のたくさんエネルギーを利用する需要家から自由化が始まっていき、最終的には小口利用の家庭など、全ての需要家に市場が開放される全面自由化に至ります。もちろん、自由化の制度設計で細かい違いはありますが、大まかな流れや内容は類似点が多いです。

一方で、電力とガスで大きく異なる部分として、同様に自由化の観点から見ますと、参入企業数が挙げられます。電力と比較すると、ガス事業を開始することはハードルが高いので、なかなか市場参入する企業がいないのです。全面自由化の始まる2ヶ月ほど前において、電力自由化では150社近くが参入を表明していたのですが、ガス自由化においては10社程度の数となり、15倍程度といった非常に大きな開きがあります。

このように、電力とガスには似通っている部分も、異なっている部分もあり、それぞれに特徴があります。今回は、電力とガスについて「市場規模」といった観点から、それぞれの特徴や違いを見ていきたいと思います。

ガスと電力の比較①【市場規模】

ガスは、現代生活を支える重要な社会インフラの一つです。その市場規模も大変大きいものとなっており、ガス全体では概ね9兆円(都市ガス5兆円+LPガス市場4兆円)近くの市場規模となります。9兆円というと金額が大きいのでイメージしづらいかと思いますが、同じくらいの市場規模をもつ分野は、例えばコンビニエンスストア、アパレル、医薬品があります。また、同じインフラ系では、携帯電話が大手3社で14,500万件程度であり、約11兆円の規模です。

電力小売の市場を見てみますと、ガス小売の倍近くである20兆円ほどの規模があります。日本におけるGDPは約500兆円なので、電力小売だけで3.6%を占めることとなります。同じくらいの市場規模のものを見ますと、全国の銀行における経常収支は16兆円(2014年度)、物流業界24兆円(2012年度)、外食が25兆円(2015年度)となります。

ガス市場は電力の半分の規模と聞くと、なんだか小さな市場のように見えますが、電力の元々の市場が非常に大きいだけで、ガスも十分な大きさの市場的価値がある分野だといえます。

ガス全体では、9兆円程度の市場規模だということが分かりました。それでは、2017年4月から全面自由化される小口部門は、どのくらいの市場なのでしょうか。これは、大体ガス全体(9兆円)の4分の1である2.4兆円となります。需要家数は約2600万件、その内2489万件が一般家庭であり、122万件は小規模な商店・事業所等となります(図1)。

一方で、電力小売市場における小口部門(一般家庭・小規模事業者)は7.5兆円程度です。ガスにおける小口需要の市場は、前述の通り2.4兆円ですので、電力の概ね3分の1程度のスケールということになります。全面自由化される小口需要も、電力の方がガスよりも大きな市場であるといえます。

自由化されるガス市場規模・契約数

図1 自由化されるガス市場規模・契約数 出典:資源エネルギー庁

大口も含めた都市ガス全体としては、全国に約3000万件の需要家がおり、市場としては5兆円程度です。また、これまで段階的に自由化されてきた都市ガス市場ですが、過去に実施された大口における市場は2.6兆円です。ただ、もう少し細かく市場の内訳をみるために、平成24年度の大手ガス10社におけるデータを参照したいと思います。

まず、1995年に自由化された200万立方メートル以上(大規模工場等)では1000件程度の需要家数となります。需要家数は1000件と少ないのですが、一件あたりの規模は大きいので、全体の販売量に占める割合は約47%となります。次に、1999年に自由化された100~200万立方メートル(製造業全般、大規模商業施設等)では約2000件程度(全体販売量の5%)です。2004年から始まった50~100万立方メートル(中規模工場、シティホテル等)では、約3500件(同4%)となります。2007年による10~50万立方メートル以上の自由化では、約12000件(同7%)の市場が対象となりました。そして、第5回目となる最後の2017年における全面自由化(10万立方メートル未満)により、2100万件(37%)の市場が開放されることとなります。

このように見てみると、最初の200万立方メートルの自由化によるインパクトが大きいことがわかります。この最初の自由化で、いきなり全体の半分近くのガス需要が対象となりましたが、それからの市場開放は4~7%程度と、少しずつ進んでいきました。そして最後の全面自由化により、37%もの大きな需要が開放されていく流れとなります(図2)。

もちろん、各販売セグメントにおけるデータは大手ガス10社(顧客数全体の8割程度)によるものですので、全てのガス会社を含めた数値は多少異なることとなります。そのため、全体の大まかな傾向を知る上でご参考にしていただければと思います。

ガス事業の段階的自由化の経緯

図2 ガス事業の段階的自由化の経緯 出典:資源エネルギー庁

次に事業者数を見てみます。都市ガス事業者の数は、電力のこれまでの10社体制と比較すると数が多く、200以上存在します。都市ガスのライバルともいえるLPガスは、2万社以上となります。都市ガスと比較すると、LPガスの事業者は100倍以上もの数となります。ただし、市場規模でいえば都市ガスとLPガスの双方ともに4~5兆円程度ですので、LPガスは小規模な事業者が多いことが特徴といえます。

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