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スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とは

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2023年6月にISSBはスコープ3の開示義務化を確定。これを受けて、日本や海外ではどのような対応を取っていくのか注目されています。最新の動向についてまとめました。

スコープ3の開示義務化の背景と今後の日本の動き

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2023年6月26日にスコープ3の開示義務化を確定しました。これにより上場企業が取引先などサプライチェーン全体の「スコープ3」を含めた情報開示義務を求められることがグローバルスタンダードになります。その他、気候変動が起こったときの財務リスクや対応についての情報開示も求められるようになりました。

背景には、ESG投資が増える一方で、気候変動に関する企業の情報開示の枠組みが乱立しており、基準が統一化されていないという実態がありました。今回の開示義務化によって投資家による企業の選別をしやすくするという狙いがあります。

2024年から適用が可能ということで、日本では、同基準をベースに民間のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が主体となり、日本版の基準策定を進めています。25年3月末までに最終確定する計画で、3月期企業であれば26年3月期の有価証券報告書から同基準に基づく開示ができるようになる見通しということです。サスティナブルファイナンスの資金流入を期待する企業では、先行して開示充実に踏み切る動きも出てきています。

スコープ3の開示について、アメリカ、シンガポールの動向は

アメリカ、カルフォルニア州では大手の非上場企業も対象に

気候変動対策で先進的なアメリカ、カルフォルニア州では、2023年9月12日、米国・カリフォルニア州議会において、同州内で事業を展開している売上高10億ドル以上の企業を対象にGHG排出量の情報開示を義務付ける法案が可決されました。この種の義務付けは、連邦政府の義務付けとして米国証券取引委員会(SEC;US Securities and Exchange Commission)が検討しているものに先駆けて、米国初の試みとなります。

アップル、マイクロソフト、アドビなど、大手テック企業やイケアやパタゴニアなど気候変動対策に関心が高い企業が本社を置いており、支持を表明していた一方、スコープ3の排出量算出にコストがかかる点から反対する企業や団体もありましたが、今回、法案としては可決がされました。

開示義務は、スコープ1、2の排出量については2026年から、スコープ3の排出量については2027年から開始され、測定と報告はGHGプロトコルの基準に従って行われる。規則に従わない場合には、最大で50万ドルの罰金が科せられることとなります。

シンガポールでは大手の非上場企業も対象に

シンガポール政府は2023年7月に、上場企業の一部業種に限定していた気候変動に関連する開示義務を、すべての上場企業と非上場の大企業にも情報の開示を義務づける規制案を公表しました。上場企業の約700社と、売上高が10億シンガポールドル(約1000億円)以上の非上場企業の約300社が対象となります。

開示義務は上場企業には2025年、非上場企業には27年の会計年度からが開始となります。「スコープ3」に関しては上場企業に1年、非上場企業には2年の適用猶予期間を設けており、段階的な措置が取られています。非上場企業も対象としている国は英国などまだ一部にとどまっており、シンガポールが導入すれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)で初めてとなります。

スコープ1・2・3とは

ここで、「スコープ1・2・3」について簡単に解説します。スコープ1・2・3は、企業の事業活動に関係する温室効果ガス排出量の算定をおこなうものです。

スコープ1は、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出です。例えば、化石燃料の使用に伴うCO₂排出が該当します。

スコープ2は、事業者の他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を指します。

スコープ3は、スコープ1、2以外のその他の間接排出です。事業者の活動に関連する他社の排出のことで、たとえば、調達先における排出量、販売した製品(家電製品、自動車など)からの排出量がこれにあたります。

スコープ3はさらに15のカテゴリと、日本独自の基準に基づく任意の「その他」に分類されています。自社購入に関わる排出量(上流)カテゴリ1〜8と、自社販売に関わる(下流)カテゴリ9〜15で構成されています。

出典:環境省

例えば、自動車メーカーや日用品メーカーなど消費者が利用するときになんらかのエネルギーを必要とするモノを販売している企業は、消費者が利用する際のCO₂排出も自社分として算定する必要があります。また、モノをつくるために必要な従業員の通勤や出張を通じて排出されるCO₂もスコープ3に含まれます。

スコープ3の算定の目的と算定方法

スコープ3の算定に当たっては、目的の設定が大切です。なぜならスコープ3における排出は、基本的に自社以外からの排出であるため、詳細な算定や削減対策をとることは、自社の取り組みほど容易ではないのが現実だからです。

目的というのは、例えば、スコープ3は「⾃社のサプライチェーン排出量の全体像を把握することが目的」なのか、「国内グループ全体の削減努力を把握することが目的」なのか、「国際認証取得が目的」なのかなど、です。それによって、対象となる範囲も精度も変わってきます。

中小企業に関しては、このような大企業が取引先にある場合に、自社の排出量の提示や削減について要請されるというケースも出てくるでしょう。

いずれにしても大事なのは、この「スコープ1・2・3」という捉え方でモノのサプライチェーン排出量を捉え、効果的な排出削減対策をうち、その進捗を確認しながら社会全体で確実に削減をしていくことです。

目的をセットしたら、算定をしていきます。算定方法は環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームを活用するのがよいでしょう。(ご参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/index.html

CO2排出量は、活動量に排出原単位を乗じることで算定可能です。

出典:環境省

例えば、スコープ3のカテゴリー1、購⼊した製品・サービス原材料・部品、容器・包装等が製造されるまでの活動に伴う排出は、該当年度の製品購入金額×金額あたりの排出原単位で計算されます。「排出原単位データベース」を参考にして排出原単位を当てはめていきましょう。

算定を行った後には、スコープ3の削減に向けてできることを、先進企業の企業事例をもとにひとつずつ検討していく必要があります。その際にも、業種ごとに細かく分類されて他社事例が掲載されていますので、当サイトが活用できるのではないでしょうか。

まとめ

スコープ3を含めた情報開示はグローバルスタンダードになっており、日本もこの流れに沿って対応する見通しであることや、アメリカ、カルフォルニア州やシンガポールでは非上場企業などにもその動きが広がっていることがわかりました。

日本は製造業が多いことが特徴ですが、製造業はその他の産業に比べて、温室効果ガスの削減対象となる項目が多く、製造する製品によって利用しているエネルギーの量や種類、削減方法も異なります。そのため、早めに情報収集を行うことが必要です。製造業以外の業種でもスコープ3に関して、目的設定を行った後に算出を行うことで対策し、投資家や大企業からの要請に応え、さらに自社のビジネスとしてチャンスを広げていくということが必要になっていくでしょう。

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