法人向け 家庭向け

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへ

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへの写真

厳しい状況が続いた電力業界ですが、2023年に入り、託送料金引き上げと規制料金改定により、大手電力7社が値上げを実施。政府は電気・ガス価格の急激な上昇を軽減するための措置を実施しています。値上げを実施する新電力企業も3割ほどあり、契約停止、撤退・倒産等もピークアウトしています。

新電力の倒産が相次いだ背景

前回5月の記事(ご参考:https://pps-net.org/column/109853)で、2021年4月時点で登録のあった「新電力会社」706 社のうち累計 195 社が「契約停止、撤退、倒産、廃業」となったという実態についてご紹介をしました。また、大手電力会社でも、10 社中 8 社が 2023 年 3 月期の連結決算で最終赤字を計上していました。

これは、2020年末~2021年にかけてのコロナ禍からの経済再開によるエネルギー需給の逼迫がきっかけでした。電力市場価格が高騰。2022年からはウクライナ侵攻による影響で、原油や石炭、液化天然ガスなどの燃料価格が高騰しました。年後半以降は、急速な円安で電力調達コストが急騰しました。

近年、新電力市場は競争が激化しており、価格競争が続いてきました。一部の企業は顧客獲得やサービスの差別化に取り組んでおり、競争力を維持しようとしていますが、そうした中で、このような複数の要因が連続的に起きたで、電力業界にとって影響が避けられない厳しい状況となりました。

電力業界の直近の動き

その後の電力業界の動きとしては、4月1日に託送料金が引き上げられ、6月1日には、経産省から規制料金(経過措置料金)改定の認可を取得した大手電力 7 社が値上げを実施しました。政府は需要家の電気料金の値上がりを軽減するため、総合経済対策に基づき「電気・ガス価格激変緩和措置」を9月まで実施しています。

日本卸電力取引所(JEPX)のシステムプライス平均価格は、2022年8月は26円、平均でも 22.4 円と高値で推移していました。しかし2023 年 6 月時点では平均 11.5 円とほぼ半値に下落し、取引価格は落ち着きを見せている状況です。

新電力の契約停止、撤退、倒産の最新状況

帝国データバンクの調べによると、新電力会社706 社のうち、2023年6月25日時点で「事業の契約停止や撤退、倒産や廃業」が判明したのは、180 社なりました。これは前回調査(2023年3 月時点)の 195 社から15社減少したことになります。

理由としては、3 月時点で契約停止となっていた 112 社のうち 31 社がサービスを再開(一部再開を含む)したことで、契約停止企業が減少したためです。これらのデータから新電⼒の撤退、倒産や廃業はピークアウトしたといえるでしょう。

出典:帝国データバンク

同時に、電力・ガス取引監視等委員会 6 月 1 日公表データによると、「電力難民」といわれる新電力会社の倒産や撤退で契約継続が困難となり、無契約状態となったため大手電力会社等から供給を受ける企業数(最終保障供給契約件数)も1万7414件と、ピーク時(2022年10月)に比べて62.0%減少し、4万5871件になっています。

約3割の新電力企業が「値上げ」の動きへ

次に、事業を継続している 613 社の動向をみると、198 社が「値上げ」の動きを取っていることがわかりました(帝国データバンク(以下、同社)の調査結果)。これは全体の構成比32.3%を占めています。これは、託送料金や規制料金の引き上げがあったことや、電力高騰の厳しい市況といったことが主な理由になります。

出典:帝国データバンク

198 社のうち、143 社は2023 年に入ってから料金の改定・変更・見直しを発表しています。その他の55 社は、実質的な料金の引き上げとして、市場価格が変動した際に電気代に反映できるものとして利用されている燃料費調整金の導入や、不特定多数に対して大量の取引を行う際の取引条項を定める約款の変更や改訂、料金プランの変更などをホームページで記載していたということです。

また、同社の調査によると、2022 年末以前に価格を見直している企業もあり、実際にはさらに多くの新電力会社が電力高騰以降、価格改定に動いていたのではないかということです。

まとめ

新電力企業の直近の動向をまとめると、電力卸市場の落ち着きや価格転嫁の動きなどから、サービスを再開する企業数が2023年3月から27.7%増加しました。また、約3割の企業が託送料金や規制料金の値上げを背景に、価格改定を行っていることがわかりました。

資源エネルギー庁の登録小売電気事業者一覧には、2023年6月までに83社が登録されており、登録業者は6月23日時点で731社となっています。2021年4月時点で登録は706 社だったことから、新規参入企業も一定のペースで増加していることがわかります。

新電力企業は引き続き厳しい市況に直面していますが、一部は価格改定やサービスの再開を通じて経営の立て直しを試みています。今後も、市場の動向や政府の対策に注目が集まるでしょう。

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

電力小売全面自由化から10年、数字が語る制度と市場の現実【第1回】数字の区切りに惑わされず、いまの制度と市場を見直すの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年12月31日

新電力ネット運営事務局

電力小売全面自由化から10年、数字が語る制度と市場の現実【第1回】数字の区切りに惑わされず、いまの制度と市場を見直す

「自由化から10年」という言葉が、各所で頻繁に取り上げられるようになりました。 しかし、制度の導入や市場設計の見直しが今も続いており、電力を取り巻く環境は「完成」に近づくどころか、なお変化の途上にあります。 本稿では、数字がもたらす完了感と、制度・市場の実態との間にあるずれを整理し、“節目”という言葉の意味をあらためて考えます。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第5回】社会実装と中長期シナリオ 2030年代のロードマップと日本の戦略の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年12月27日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第5回】社会実装と中長期シナリオ 2030年代のロードマップと日本の戦略

これまで4回にわたり、核融合という次世代エネルギーの可能性を、研究・技術・制度の観点からたどってきました。長らく“夢のエネルギー”と呼ばれてきた核融合は、いま確実に社会の現実へと歩みを進めています。 最終回となる今回は、社会実装に向けたロードマップと、日本が描くべき中長期戦略を考えます。 核融合が“希望の象徴”で終わらず、私たちの暮らしに息づくエネルギーとなるために、次の時代に向けた道筋を描きます。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第4回】制度設計・安全規制・地域産業化 社会実装に向けた最新動向の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年12月17日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第4回】制度設計・安全規制・地域産業化 社会実装に向けた最新動向

第1回では核融合の基本、 第2回では国内研究基盤、 第3回では民間企業による産業化の動きを整理してきました。 こうした技術・ビジネス面の進展を踏まえ、2025年後半には「社会実装」に向けた制度づくりや安全規制の検討が政府内や国際機関で動き始めています。国際基準への日本の参画や、地域での研究・産業活動の広がりなど、核融合を社会に組み込むための枠組み形成が進みつつあります。 本稿では、制度・安全・産業の三つの観点から、この転換点の現在地を整理します。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第3回】民間企業が牽引する核融合ビジネスの現在地  国内外で加速する産業化の動きの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年11月30日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第3回】民間企業が牽引する核融合ビジネスの現在地 国内外で加速する産業化の動き

第1回では核融合の基本原理と方式を、第2回ではJT-60SAやLHDを中心に日本の研究基盤を整理してきました。近年は研究成果が民間へ移行し、実証炉開発や供給網整備が本格化しています。高温超伝導やAIなどの技術進展により小型化と効率化が進み、投資も拡大。本稿では国内外スタートアップの動向と商用化に向けた論点を整理します。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第2回】国内研究最前線 JT-60SAとLHDが描く日本の核融合ロードマップの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年11月24日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第2回】国内研究最前線 JT-60SAとLHDが描く日本の核融合ロードマップ

地上に“小さな太陽”をつくるという挑戦が、いま日本の研究現場で確実に動き始めています。 第1回では、核融合がどのようにエネルギーを生み出すのか、その基本原理や世界的な動向について整理しました。今回はその続編として、日本が持つ二つの主要研究拠点、「JT-60SA(大規模トカマク型装置)」と「LHD(ヘリカル方式の大型装置)」に焦点を当て、国内で進む最前線の取り組みを詳しく解説します。 どちらも世界トップクラスの規模と技術を誇り、2030年代の発電実証を目指す日本の核融合開発に欠かせない“橋渡し役”として国際的にも注目されています。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス