4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について
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2024年度に供給可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年7月、初めての容量市場でのオークションを実施。それに伴い4月から容量拠出金制度がスタートします。今回は、容量市場の仕組みや消費者への影響についてご紹介します。
容量市場とは、仕組みを解説
容量市場は、家庭やお店、工場などで使用する電気について、4年後に必要とされる電気の量(需要)に相当する発電能力(供給力)を、日本全国の発電所を対象に一括して確保する仕組みです。この仕組みにより、電力供給および電気料金の安定化などが見込まれます。
では、容量市場で価格はどのように決まるのでしょうか。
電力広域的運営推進機関(広域機関)が、4年後使われる見込みの電気の最大需要を試算します。その需要を満たすために必要な4年後の電力の供給力を、気象や災害によるリスクも含めながら算定します。
次に、その調達量をまかなうために、「4年後に供給が可能な状態にできる電源」を募集します。これはオークション方式でおこなわれ、価格が安い順に落札されます。

容量市場のしくみ 出典:資源エネルギー庁
容量市場創設の背景とは
容量市場の創設は、「将来の電力供給の安定化」を目指すことを目的としています。電力の安定供給は、消費者にとっても大きなメリットといえます。
2021年1月上旬、日本では断続的な寒波による急激な電力需要の高まりが起こり、さまざまな要因のもと、需給ひっ迫の危機と、それにともなう電力市場価格の高騰が生じました。
国外では、同年に米国テキサス州で、記録的な大寒波による電力の供給不足によって大規模な停電が発生し、卸市場価格の急激な上昇がありました。
このような状況も起きる中、需要が最大になったときでも十分に賄えるような容量をあらかじめ確保しておくことで、発電量が需要に追いつかずに停電したり、調達する電力が足りずに卸電力価格が高騰するなどの事態が起きにくくする狙いがあるのです。
では何故このような事態が起きたのでしょうか。
その一つに再エネ増加があります。天候による影響を受けやすい再生可能エネルギー(太陽光や風力)の発電だけでは、天候の変化などにより急な電力不足に陥ってしまいます。
そこで足りない電力の確保の為に、火力発電などで調整を行うのですが、発電所設備の建設・維持コストに対して、再生可能エネルギーの発電量の増加や電気事業者間の競争に伴う売電価格の低下により、設備投資の回収が見込まれなくなっています。
そうなると新たな発電所への投資は生まれず、既存発電所の閉鎖があれば、たちまち需給が逼迫し、最悪の場合、停電する恐れがあります。こうした課題を解決し、安定した電力供給および各発電所の建設・維持コストを確保する為に容量市場が導入されることになりました。

出典:資源エネルギー庁
また、再エネの調整力として必要な電源を確保しておくことで、出力の不安定な再エネを支え、脱炭素社会に必要な再エネの主力電源化に役立てることも目的としてあります。
小売電気事業者にとっては、発電所をもたなくても電力を調達しやすくなること、事業環境を安定化させられることも利点です。
容量拠出金の消費者への影響は?
この制度によって消費者にはどのような影響があるのでしょうか。
小売電気事業者は、2024年から約定金額で定められた容量拠出金の支払い義務が発生します。各事業者への負担額は、1kWhあたり数円程度になると見られており、これが電気料金に加算されるため、容量拠出金分の値上げが予測されています。
そのため、容量拠出金制度の開始に伴い、2024年4月から「制度負担金」として容量拠出金を反映してする事業者が多いようです。料金改定の詳細については、各事業の案内をご確認ください。消費者はこの機会に毎月の電気コストの見直しをされるのもおすすめです。
まとめ
容量拠出金制度の仕組みについて理解しておくことは、毎月の電気料金の内訳を把握し、電気の節約を意識することにつながります。
容量拠出金は小売電気事業者が支払うため、電気料金項目の有無にかかわらず、電気を使用する国民全員でこの供給力コストを負担することとなります。
また消費者へ請求する容量拠出金相当額は、最終的には発電所の運営者である発電事業者へ交付されます。発電事業者の事業収入安定化は電気の安定供給につながり、さらには燃料価格や再生可能エネルギー発電量により変動する電気の価格安定化にもつながります。
このため、容量市場という仕組みにおいて容量拠出金を負担することは、最終的にはお客様が安心して電気を使えるだけでなく、電気料金の安定化が見込まれます。
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