ガスと電力が自由化することで生まれる市場、エネルギー業界における今後の予測(11)

2017年04月10日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

ガスと電力が自由化することで生まれる市場、エネルギー業界における今後の予測(11)の写真

前回から引き続き、「電力とガスの違いについて~それぞれの特徴から考察する~」といったテーマにて連載コラムを掲載いたします。第11回目で最終回となる今回は、ガスと電気が自由化されたことによって生まれる市場や、業界の今後について予測していきます。

自由化によって生まれた総合エネルギー市場

これまで、「電力とガスの違いについて~それぞれの特徴から考察する~」というテーマにおいて、10回の連載コラムを掲載してきました。第1回目のコラムではガス自由化の歴史に始まり、その後は自由化によって変化することや、電力とガスの市場や需要などの動向について見てきました。この連載において最終章となる今回は、最後のまとめとして「電力とガスの今後」といったテーマで将来予測していきます。

今回の連載では自由化について取り上げることも多かったのですが、ガス小売りが全面自由化されることにより、わが国におけるエネルギーインフラにおける市場の垣根は撤廃されました。これにより、エネルギー企業の相互参入や異業種からの新規参入が進むと考えられます。また、競争によるコスト低廉化が実現し、消費者の利便性が向上していくことが期待されます。さらに将来的には、国内市場に閉じることなく、総合エネルギー企業による海外市場への進出が実現すると理想的です(図1)。

総合エネルギー市場の創出

図1 総合エネルギー市場の創出 出典:資源エネルギー庁

暮らしを便利にする料金プラン、多様な企業が強みを見せる

私たちの生活と直接的に関係する料金プランについても、今後は市場競争が新しい知恵を生み、様々な特徴を持ったものが現れると考えられます。現状で電力料金プランの特徴は大別すると6種類あると思いますが、それは①段階別料金、②ライフスタイル型、③他サービスとのセット、④長期契約、⑤節電、⑥電源構成です(図2)。

特に③他サービスとのセットは異業種間の連携も盛んであり、電気自動車やリフォームとの連携、スポーツやアニメとのタイアップなど、多種多様です。多様なニーズをもつ消費者からすると、ガスにおいても電力のようにプランが増えていくことが望ましいです。また電力においても、技術やニーズの変化により、これまでにない新しいプランが今後も生まれることが期待されます。

自由化後の料金プラン

図2 自由化後の料金プラン 出典:資源エネルギー庁

技術進歩の加速、多様な業種のノウハウがエネルギー業界に

自由化によって競争が生まれる利点としては、技術面の部分も挙げられます。技術の進歩がエネルギー業界を変革していくスピードが加速していくと考えられます。例えば、発電部門においては、火力発電所においてIoTの活用による保守業務の効率化や運転効率の最適化の取組が始まっています(図3)。

また、送配電分野においても、デジタル化等による修繕・投資の効率化や保守・監視の取組が行われつつあります。例えば、送電線や鉄塔の巡視・点検ではドローンを使用することで、高所の送電線や鉄塔上部の画像を撮影することができます。そうすることで、迅速な状況把握・作業時間の短縮・安全性の向上に繋がります。

ドローンを使った送配電や鉄塔の巡視・点検

図3 ドローンを使った送配電や鉄塔の巡視・点検 出典:資源エネルギー庁

小売分野に関しましても、スマートメーターの導入を契機とした新しいサービスの創出に向けた取組が行われています。例えば、ヘルスケア分野では、電力利用データに加え、天候情報や 健康情報を用いることで、家電を最適に制御することが想定されます。そうすると、猛暑が予定されている日に、エアコン等を自動制御することで、年配の方や子どもの熱中症を予防することが可能となります(図4)。

電力利用データの活用による新たなサービスの展開

図4 電力利用データの活用による新たなサービスの展 出典:資源エネルギー庁

エネルギー全体を見据えた事業戦略の必要性

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

前の記事:価格と需要から見るガスと電力、これまでの需要推移と特徴を見る(10)

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年02月22日

新電力ネット運営事務局

4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について

2024年度に供給可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年7月、初めての容量市場でのオークションを実施。それに伴い4月から容量拠出金制度がスタートします。今回は、容量市場の仕組みや消費者への影響についてご紹介します。

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年12月29日

新電力ネット運営事務局

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例

持続可能な未来に向けて物流業界の脱炭素化は急務です。その中でも大手物流企業のGX事例は注目すべきアプローチを提供しています。今回は、脱炭素化の必要性と大手物流企業が果敢に進めるGX事例に焦点を当て、カーボンニュートラル実現へのヒントを紹介します。今回は中堅・中小企業のGX事例です。

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とはの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年11月02日

新電力ネット運営事務局

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とは

2023年6月にISSBはスコープ3の開示義務化を確定。これを受けて、日本や海外ではどのような対応を取っていくのか注目されています。最新の動向についてまとめました。

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年09月12日

新電力ネット運営事務局

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへ

厳しい状況が続いた電力業界ですが、2023年に入り、託送料金引き上げと規制料金改定により、大手電力7社が値上げを実施。政府は電気・ガス価格の急激な上昇を軽減するための措置を実施しています。値上げを実施する新電力企業も3割ほどあり、契約停止、撤退・倒産等もピークアウトしています。

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるかの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年08月31日

新電力ネット運営事務局

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるか

2030年度目標のCO2排出量2013年度比46%減を実現するために、地方から脱炭素化の動きを加速させています。今回は、事例を交えて脱炭素先行地域の取り組みについて紹介をします。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス