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価格と需要から見るガスと電力、自由化など3つの要素が電気料金に与えた影響(8)

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前回から引き続き、「電力とガスの違いについて~それぞれの特徴から考察する~」といったテーマにて連載コラムを掲載いたします。第8回目となる今回は、自由化など電気料金に影響を与えた3つのマイルストーンについて概要を見ていきたいと思います。

電気料金に影響を与えたマイルストーン①、石油危機

電気は誰もが利用するインフラであり、料金設定は国民全体に少なからず影響を与えます。その単価は一律ではなく、時代とともに刻々と変化してきましたが、これまでどのように推移してきたのかを見てみたいと思います。特に、これまでの歴史の中で、電気料金に劇的変化を与えたマイルストーン「第1・2次石油危機」と「原子力発電所の停止」、そして「自由化」について見ていきます。

まず、電気の原料価格に大きな影響を与えた「第1・2次石油危機」について見ていきたいと思います。第1次石油危機は1972年に始まりましたが、それまで電気料金は比較的安定して推移しておりました。終戦から10年が経過した1955年から第1次石油危機が始まる1972年までの間、電気料金の平均は概ね11~13円/kWhを行ったり来たりしておりました。

このように、安定した電気料金を設定できていた電力会社でしたが、第一次石油危機により原料費が高騰、電気料金の値上げを余儀なくされます。具体的には、石油危機の始まった1972年から1977年の5年間で、電気料金の平均単価は約12円/kWhから約20円/kWhと、1.7倍近くまで急増しました(図1)。電力は原油などによって生成される二次エネルギーのため、原油価格の高騰は料金に直接的に跳ね返ってきました。

電気料金推移(電灯・電力)

図1 電気料金推移(電灯・電力) 出典:資源エネルギー庁

第1次石油危機が始まった一因は、世界景気の同時拡大と石油需要の増加です。主要国の石油需要は、1972年後半から年率7%以上の急増を示しました。そうした中、1973年10月6日に勃発した第4次中東戦争を背景に、中東産油国が原油の供給削減を実施、OPEC諸国の原油公示価格の大幅引き上げが実現しました。原油価格は、1960年代から1970年代までは概ね2ドル/バレルで推移してきましたが、1974年1月からは公示価格が12ドル/バレル近くと、約6倍に引き上げられました。

この第1次石油危機を機に、省エネルギー推進の機運が高まってきました。特に日本は資源輸入国ですので、できるだけエネルギーの利用を減らすことで、原油等の価格変動リスクを減らそうとしたのです。そうした時代要請もあり、1974年に逓増料金(3段階料金)制度が導入されました。この3段階料金は、電気をたくさん使うほど単価が上がっていくものです。大量に電気を使うほど電気料金単価も値上がりしていくため、省エネを実施するインセンティブになりました。

第一次石油危機の電気料金への影響は1977年にいったん落ち着きました。しかしそのわずか2年後、第一次石油危機の影響が冷めやらぬ中、第二次石油危機が訪れました。この第二次石油危機により、1980年には電気料金の平均単価が約28円/kWhの高値を付けることとなりました。1979年から1980年の間、わずか1年間で8円/kWh近く値上がりしたこととなります。

第二次石油危機が起こった一因は、イラン革命や翌年に勃発したイラン・イラク戦争の影響です。1978年のイラン革命に伴い、世界原油の10%もの規模を持つイランに対し、2ヶ月間に及ぶ石油輸出全面禁止が実施されました。これを契機に、OPEC諸国は原油価格を引き上げ、1978年11月には12.7ドルであったアラビアン・ライトの公式販売価格が、1980年4月には28ドルまで引き上げられました。

こうした石油危機を経験した後の1996年、石油価格の変動や円高・円安の進展などの経済情勢の変化を迅速に料金に反映すると同時に、電気事業者の経営環境の安定を図ることを目的に、燃料費調整制度が導入されました。燃料費や為替レートは刻々と変動していきますが、燃料費調整制度はそれらに連動しておりますので、結果的に電気料金の値上げ・値下げ要因となります。

これら第一次・第二次石油危機が起こった10年間で、国際原油価格は18倍以上に急騰しました。1970年には2ドル/バレル程度であったのが、1980年には約37ドル/バレルとなり、原油はほとんどの国が使いますので、世界景気を不況に陥れました(図2)。こうした背景が日本の電気料金にも影響し、1970年には12円/kWh程度であった電気料金の平均単価が、1980年には約28円/kwhへと急増しました。

国際原油価格の推移

図2 国際原油価格の推移 出典:資源エネルギー庁

電気料金に影響を与えたマイルストーン②、原子力発電所の停止

石油危機の次は、原子力発電所停止における料金単価への影響を見ていきます。東京電力福島第一原子力発電所事故によって、2013年9月に一旦、国内の全ての原子力発電所が稼働を停止しました。その結果、日本の電源構成に占める化石燃料依存度は、東日本大震災前の約62%(2010年度)から約85%(2015年度)へ上昇しました(図3)。この水準は、第一次石油ショック時の約76%よりも高いものです。

電源別発電電力量構成比

図3 電源別発電電力量構成比 出典:電気事業連合会

火力発電所の稼働率上昇に伴う火力燃料費の増大などにより、電気料金の平均単価(全国)は、震災前の2010年度と直近値の2014年度を比較すると、家庭用で約25%、産業用で約40%、金額にして家庭用・産業用いずれも約5円/kWh上昇しました。

例えば、東京電力における標準世帯(従量電灯B、契約電流30A、月間使用電力量290kWh)の電気料金は、東日本大震災前の2010年度は月額6,309円でしたが、2014年度は月額8,452円と、約34%上昇しました。

電気料金に影響を与えたマイルストーン③、自由化

これまで、石油危機や原子力発電所の停止における、電気代単価への影響を見てきましたが、自由化の影響はどのくらいでしょうか。まず、高圧部門等の自由化について見ていきます。

1990年代以降、原発停止までは電気料金は徐々に低下してきておりますが、それは1995年に始まった制度改革が大きく寄与していると考えられます。実際に燃料費以外の部分である「減価償却費、修繕費、人件費」は1995年に比べて、これまでに約4割低下(6.3円/kWh)しています。原料費は国際情勢に左右されるので、日本の自由化が与える影響は極めて限定的ですが、それ以外の減価償却費等は電力会社の努力により圧縮できます。そうした意味で、燃料費以外が約4割低下したことは、自由化が一定の成果を挙げたからだと考えられます。

これらの結果、電気料金単価は1990年の19.3円/kWhから、2010年には15.9円/kWhに減少しました。ただ、その後は燃料費(+為替レート)の影響があり、2013年には19.8円/kWhまで電気料金単価が値上がっています(図4)。このように、燃料費等の影響で電気料金単価としては値上がることもありますが、燃料費以外の部分は減少傾向にあるといえます。

電気料金(電灯・電力)の推移(円kWh )

図4 電気料金(電灯・電力)の推移(円kWh ) 出典:資源エネルギー庁

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