電気自動車の未来(2)、蓄電池は6年間で約1/4の価格に、今後は次世代の全固体電池で性能向上

2018年01月30日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

電気自動車の未来(2)、蓄電池は6年間で約1/4の価格に、今後は次世代の全固体電池で性能向上の写真

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は1月、電気自動車や天然ガス自動車に関するレポートを発表しました。2016年のセル+電池パックコストは273ドル/kWh となり、直近6年間で約1/4となる大幅なコストダウンが進んでいます。

蓄電池のコストダウン、多岐にわたる外部調達部品のコスト低減が必要

BNEFの調査によると、電気自動車の蓄電池コストについては、2016年のセル+電池パックコストが273ドル/kWh となりました。2010年の価格は1000ドル/kWhであったため、6年間で約1/4となる大幅なコストダウンが実現しています(図1)。

バッテリーコスト(セル+パック)推移

図1 バッテリーコスト(セル+パック)推移 出典:JOGMEC

蓄電池のコストダウンについては、正極材、負極材(黒鉛等)、電解液(LiPF6、有機溶媒)、正極と負極を絶縁するためのセパレーター(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等、多岐にわたる外部調達部品のコスト低減が必要です。つまり、蓄電池のコスト内訳は多岐にわたるため、調達部品の総合的なコストダウンが必要となります(図2)。

そのため、蓄電池のコストダウンについては、大量生産、集積度の向上による大幅なコストダウンが可能な半導体等とは異なります。蓄電池に関しても、設備稼働率の向上による一定の低減効果はあるものの、一方で生産量の大幅拡大による材料資源価格の高騰が、コスト低減の制約となる可能性があります。

蓄電池材料、外部調達部品コスト内訳

図2 蓄電池材料、外部調達部品コスト内訳 出典:JOGMEC

正極材の安定的な確保、使用量低減が課題

リチウムイオンバッテリーの主要部材は、正極材、負極材、電解液、正極と負極を絶縁するためのセパレーター等で構成されます。EV車の大量導入に関しては、電池材料として特に、正極材の安定的な確保、使用量低減が課題です。正極材は、リチウム、コバルト、ニッケル等となります(図3)。

現在、性能やコスト面で主流となっている「三元系リチウムイオンバッテリー」の正極材として用いられる、リチウム、コバルト、ニッケルといった原料の総コストは、現状のスポット価格ベースで約30ドル/kWh程度です。2016年の電池パックコストは272ドル/kWhのため、約12%程度の割合を占めることとなります。

今後、素材の需要が上がり、供給逼迫による価格の高騰も懸念されるため、使用量の低減、原料資源の確保、原材料価格の安定化が必要となってきます。

リチウムイオンバッテリー正極材材料の特徴

図3 リチウムイオンバッテリー正極材材料の特徴 出典:JOGMEC

性能向上、次世代の全固体電池は2025年頃から実用化の想定

EVの航続距離を伸ばすためには、電池容量(kWh)を増やす必要があります。しかし、単に蓄電池の積載量を増やすだけでは、車両重量増、燃費とのトレードオフとなるため、電池のエネルギー密度の向上のための技術開発が進んでいます。

JOGMECによると、現在、電池パックのエネルギー密度は、約10kg/kWh(100Wh/kg)程度です。2017年型日産リーフの車両重量1.5tに占める40kWhの電池パック重量は303kgとなっており、車両重量の約20%程度です。初期型では24kWhの電池パック重量は294kgであったため、大幅に性能向上しているものの、今後さらなる高密度化がEVの普及拡大の鍵となります。

トヨタは2017年12月、次世代電池として性能向上が期待される全固体電池を、2020年代前半での実用化を目指し開発を進める方針を明らかにしました。全固体電池は、電解質として従来の液体の代わりに固体材料を用いるものです。安全性の向上、モジュール体積の減少、充電時間の短縮、高温や低温での出力低下も少ないといった長所があります。

日本政府も、次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発として、平成30年度概算要求額48.0億円を計上しています。2025年頃には、2.5kg/kWh(400Wh/kg)と、現行の4倍のエネルギー密度を目指すとしています(図4)。

エネルギー密度向上は、燃費向上、積載容量の増加にも直結します。今後の技術革新の進展次第で、EVの利用可能性は大きく広がっていくと考えられます。

車載用蓄電池の技術シフトの想定

図4 車載用蓄電池の技術シフトの想定 出典:経済産業省

蓄電池の性能不足により航空・船舶部門では難しいEV化

長距離・貨物車におけるEV化について、JOGMECによると現状では、「航空・船舶部門」では液体燃料の電動化は困難としています。それは、蓄電池のエネルギー密度・コスト面が電動化の水準に達していないからです。一方で、長距離・重量貨物輸送については、EV化が進んでいるとしています(図5)。

長距離・貨物車におけるEV化

図5 長距離・貨物車におけるEV化 出典:JOGMEC

例えば、距離・重量貨物輸送について、米テスラは2017年11月、電動セミトレーラー 「Tesla Semi」を発表しました。また、日本企業でも、三菱ふそうトラック・バスが電気小型トラック「eCanter」を発表しました[関連記事]。いすゞ自動車も、電気小型トラックを商品化する予定があります。

航空機の電動化についても、現状の技術水準では難しいですが、例えばZunum Aero社は、2022年までに電動旅客機を飛行させる計画を発表しています[関連記事]。また、Liliumは、垂直離着陸ができる「Lilium Jet」を2025年にはタクシーのような形で利用できることを目標とすると発表しています[関連記事]。そのほか、「solar Impulse 2」は、太陽エネルギーのみで世界初の世界一周飛行を達成しました(図6)。速度についても向上が進んでおり、シーメンスは電気飛行機「330LE」のプロトタイプにおいて、世界最高記録である340km/hを達成したと発表しました[関連記事]。

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