三菱ふそう社、電気トラック「eCanter」を量産する世界初の商用車メーカーに
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2017年09月21日
一般社団法人エネルギー情報センター
9月14日、三菱ふそうトラック・バス社は、ニューヨーク市において、電気小型トラック「eCanter」を世界市場へ向けて発表しました。「eCanter」は、世界で初めて量産される電気トラックであり、2019年から一般の顧客向けに量産を開始するとしています。
世界で初めて量産される電気トラック「eCanter」、2019年から一般の顧客向けに量産を開始
運輸部門は、日本の社会・経済活動を維持・発展させていく基盤として重要な役割を持ちます。一方で、日本全体のCO2排出量の約2割を占めることから、運輸部門の地球温暖化対策の強化はCO2排出量削減にとって重要です。
2015年度の運輸部門における二酸化炭素排出量は2億1300万トンであり、1990年度比で約3.4%増大しています。一方で、2001年に2億5900万トンを記録して以降、これまで排出量は低下傾向にあります。
ただ、2015年度の日本の二酸化炭素排出量は12億2700万トンであり、運輸部門からの排出量は全体の17.4%と、大きな割合を占めます。その内、営業用貨物車は3663万トンとなり、日本全体の約3%を占める規模となっています(図1)。国としても、貨物自動車運送事業においては、ハイブリッド、圧縮天然ガス(CNG)等の次世代トラックの導入促進を行っています。
運輸部門における二酸化炭素排出量の内訳 出典:国土交通省
こうした中、三菱ふそうトラック・バス社は、ニューヨーク市において、電気小型トラック「eCanter」を世界市場へ向けて発表しました。「eCanter」は、世界で初めて量産される電気トラックであり、2019年から一般の顧客向けに量産を開始するとしています。
走行1万キロメートルあたり、最大1000ユーロのコスト削減
電気小型トラック「eCanter」は、今日の都市が抱える騒音や排出ガスの課題を解決する答えとして、三菱ふそうが開発した車両です(図2)。今回、北米で発表された車両は、車両総重量7.5トンクラスとなります。従来のディーゼル車と比較して、走行1万キロメートルあたり、最大1,000ユーロのコスト削減を可能にしました。
電気駆動システムには、モーターと、高電圧リチウムイオンバッテリーパックを6個搭載しています。直流急速充電で1時間の充電で、航続距離は100km以上となります。
図2 電気トラック「eCanter」北米仕様車 出典:三菱ふそうトラック・バス
国内で初となる電気トラック用の急速充電設備を開設
今回の量産電気小型トラックの生産開始に先駆けて、2017年5月に川崎工場内に国内で初となる電気トラック用の急速充電設備「EV Power Charger」が開設されました。7月には、国内向け「eCanter」が川崎工場にて生産を開始しました。50台の「eCanter」が製造されており、その内25台はセブン‐イレブン・ジャパンへの納入が予定されています。
国外においては、7月下旬に、連結子会社三菱ふそうトラック・ヨーロッパのトラマガル工場(ポルトガル)にて、欧州・北米向けの車両100台の生産が開始しています。
また、三菱ふそうトラック・バス社は、ダイムラーグループ企業であり、その利点を活用するとしています。例えば、ダイムラーのトラック部門は、バッテリーを製造するメルセデス・ベンツ・エナジー社、充電設備のプロバイダーであるChargePoint社に加えて、高速充電技術を開発するStoreDot社への投資を決定しています。
量産までの過程
2010年9月 | 「キャンターE-CELL」(プロトタイプ)IAA 2010に初出展 |
---|---|
2011年12月 | 「キャンターE-CELL」(プロトタイプ) 東京モーターショー2011年に出展 |
2013年6月 | 「キャンターE-CELL」(プロトタイプ) 第二世代を発表 「キャンターE-CELL」(プロトタイプ) NEXCO中日本様に実用共試 |
2014年7月 | 「キャンターE-CELL」(プロトタイプ) ポルトガルにて実用共試 |
2016年4月 | 「キャンターE-CELL」(プロトタイプ) ドイツにて実用共試 |
2016年9月 | 「eCanter」(プロトタイプ) IAA 2016にて世界初公開 |
2017年5月 | 川崎工場にトラック用急速充電設備「EVパワーチャージャー」開設 |
2017年7月 | 川崎工場にて「eCanter」(量産型)生産開始 トラマガル工場(ポルトガル)にて「eCanter」(量産型)生産開始 |
「eCanter」、最初の納入はアメリカ
最初の「eCanter」の納入は、アメリカに本社を置くUPS社となります。UPS社では、持続可能な社会の実現を目指し、保有車両をゼロ・エミッショントラックに移行していく予定です。
また、8台の「eCanter」が、ニューヨーク市に拠点を置く下記4つの非営利団体に提供される予定です。これは、ニューヨーク州検事総長エリック・シュナイダーマン氏の協力によるものです。
- 野生生物保護協会
- ニューヨーク植物園
- ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ニューヨーク
- ビッグ・リユーズ・ブルックリン
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
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