大気汚染レベルが違法状態にあるイギリス、ディーゼル車とガソリン車の販売を2040年までに禁止
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2017年07月28日
一般社団法人エネルギー情報センター

7月26日、英国政府はディーゼル車とガソリン車の販売を2040年までに禁止する方針を発表しました。こうした電気自動車を推進する動きは、近年、フランス、ノルウェー、インド、オランダなどでも進められています。
NO2の基準が欧州基準を上回るイギリス、2040年以降はディーゼル、ガソリン車の販売を禁止
大気汚染は健康への被害が懸念されており、WHOは、大気汚染への長期的暴露は、肺、心臓および循環器系疾患によるリスクを増加させ、平均余命を減少させるとレビューしています。また、イギリスの王立内科医協会によれば、糖尿病、認知力の低下、そして未産児への影響に波及するとしています。そのため、イギリス内で年4万人の寿命が短くなり、200億ポンドの損失に繋がっていると推定されています。
イギリスの「環境・食糧・農村地域省」と「運輸省」が作成した資料によると、英国の大気は、過去15年間で主要な汚染物質のすべての排出量が削減されています。NO2を主体とするNOxに関しても、ここ数十年で大幅に改善しました(図1)。ただ、それでもディーゼル・ガソリン車から排出されるNO2の基準が欧州基準を上回る状態が長く続いています。
イリギスは、EUが定めるNO2の年間排出目標を順守できていない17カ国のうちの1つです。2015年には、最高裁が政府に対して直ちに削減対策をとるよう命じており、これまで「違法状態」が継続しています。英高等法院は、従来の政府案では不十分だとして、5月中に草案をまとめ、最終案を7月末までに提出するよう求めていました。
そうした中、英国政府はディーゼル車とガソリン車の販売を2040年までに禁止する方針を打ち出しました。こうした電気自動車を推進する動きは、近年、フランス、ノルウェー、インド、オランダなどでも見ることができます。
図1 イギリスにおけるNOxの排出量の年次推移 出典:GOV.UK
自動車販売の規制の他にも、イギリスは汚染された大気に対処するため、27億ポンドもの政府資金を投入します。その内訳としては、例えば自動車の充電インフラの整備や、グリーンバス基金の設置、自転車と歩行者の環境整備、国道網の改善などです。
政府は前述の27億ポンドに加えて、地方自治体による対策を支援するため2.5億ポンドの基金を追加で設立します。自治体はこの資金を、渋滞を減らすために信号機の撤廃や道路のレイアウト変更、そのほかバス運行の改善などに充てることができます。自治体はこれに向けて8カ月以内に草案を出し、2018年12月までに最終計画を策定する予定です。
Michael Gove環境大臣は、「30億ポンドもの資金による対策は、排出ガスを削減するためのプログラムの1つです。大気の質を向上させることは輸送だけではないので、来年は包括的なクリーンエア戦略を発表します。これは、包括的に大気汚染の問題を解決し、きれいな空気を提供する方法を示すものです。」と述べています。
また、Chris Grayling 輸送大臣は、「英国の道路のほぼすべての車とバンが2050年までにゼロエミッションになることを願っています。そのため、2020年までに超低排出ガス車の開発、製造などに6億ポンド以上投資することを約束します。」と述べています。
イギリスのEV、PHV市場は1%程度
IEAの資料によると、イギリス内におけるEV、PHVの市場規模は1%程度です(図2)。そのため、今回の決定はEVの普及に向けた大きな足掛かりになると考えられ、自動車メーカーの今後の事業展開にも影響してくると想定されます。
電気自動車の販売に関しては、直近ではボルボが2019年以降は電気自動車のみの販売にシフトすると発表しています。(関連記事)また、7月25日には、BMW Groupが「MINI」ブランドの電気自動車の量産を2019年から始めると発表しています。
電力会社との連携では、例えば「PHVつながるでんきサービス」がトヨタ自動車により、東北電力、東京電力エナジーパートナー、中部電力、関西電力、四国電力の5社とそれぞれ共同で実施されます(関連記事)。電気自動車の推進に向け、電力業界も協力していく形で、今後も様々なサービス検討や企業間のタイアップが実施されていくことが考えられます。
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