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元Google米国副社長が予見する「電力ビジネス」の今後、小売から情報業へのシフトとは

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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今回は、『ブロックチェーン×エネルギービジネス』出版記念の特別企画として、本書の推薦コメントを頂いた元米グーグル副社長の村上憲郎氏と著者(江田)との対談を掲載します。

悪事を働くと自らも傷を負う、新たな仕組みブロックチェーン

江田

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などデジタル技術が世間で注目されるようになってきました。村上さんはそうした一連の動きをどう見ていますか。

村上

一般的に、デジタル化とは「インターネットを使って何かすること」程度にぼんやりと捉えている人が多いのではないでしょうか。産業界では、人口減少など社会的な変化に対応しつつ、さらなる事業発展や効率化に向け、デジタル技術を導入する機運が高まっています。需要家側も、デジタル技術を利用すると何が実現できるのか、具体的に描けるようにしておくことが今後大切になってくるでしょう。

江田

私はデジタル技術の中でも、ブロックチェーンが将来的に大切な役割を果たしていくと思い、『ブロックチェーン×エネルギービジネス』を上梓しました。仮想通貨を通して世の中に認識され始めたばかりですが、とても可能性のある技術だと思っています。

村上

ブロックチェーンは、従来のインターネットシステムと全く概念が違います。これまでのシステムはハッキングなどの悪用を排除するため、セキュリティーの脆弱性を排除する方向で開発が進んできました。これに対し、ブロックチェーンはインターネット上に悪人がいることを前提に仕組みが考えられています。悪事を働くと、自らも傷を負うような仕組みになっており、商取引などのドキュメントの改ざんが防げます。これは画期的な発明といえるでしょう。

江田

悪用すると自らも傷を負うというのはとても分かりやすい説明ですね。ブロックチェーンはエネルギー分野でも応用される見込みです。どのように普及していくとお考えですか。

村上

電力小売り全面自由化が始まり、大手電力会社以外からも電気が購入できるようになりました。今後、先物市場など、様々な取引が始まります。その時、必要になるのがデジタル技術です。電力取引システムの基本は証券取引所などで使われているシステムと同様ですが、他と大きく異なるのは、30分同時同量という仕組みがあることです。しかも、小売り事業者が需給バランスの責任を担う点が特殊です。

その中で、阿部力也氏(前東大大学院工学系研究科特任教授)が提唱された「デジタルグリッド」はとても可能性のある技術だと思います。専用コントローラーを利用することでブロックチェーンを応用した電力融通決済システムが実現するほか、専用ルータで実際の電力融通にも対応可能になります。

私がグーグルに在籍していた時に、阿部先生が説明に来られましたが、その時は全く理解できませんでした(笑)。デジタルグリッドが実現すると日本はスマートグリッド分野で世界のトップに立てる。それ位のポテンシャルを秘めていると感じます。

通信業界の先例に見る、事業変革が訪れる時代

江田

デジタル技術が引き起こす変化によって電力産業はどう変わっていくのでしょうか。

村上

電力は成熟した産業で、利が薄いです。しかも、自由化によって競争は激しさを増しています。従来の電気代から利益を得る事業構造から、シフトしていかなければ事業が先細りしていき、どんどん苦しくなります。どのようなビジネスにシフトするのかというと、エネルギーを使った情報業が隆盛していくと見ています。

先行事例があります。35年前に民営化した電電公社です。当時、各世帯には黒電話がありました。回線を利用し通話した時間分の料金を電電公社に支払っていました。

スマートフォンが普及しインターネットが全盛期を迎えた今、NTT等の通信事業者に通話料金を支払っているという感覚を持つ消費者はいますか? いませんね。若い世代ではなおさらです。スマートフォンでLINEやメッセンジャーといったサービスを利用すれば、電話は無料でかけられます。そうした事業変化が電力産業でも起こり得ます。

そこで電力産業において、スマートフォンのような革新をもたらす製品は何かというと、私は「蓄電池」だと思います。電気はとても便利なエネルギーですが、貯蔵できないという欠点があります。だから、30分同時同量のようなルールを守らないといけない。発電した途端に使わないと、価値が消失してしまう。蓄電池とブロックチェーンを組み合わせて、電力需給をコントロールすることが一般的になったら、電気の価値が大きく変わると思います。

江田

村上さんの話を聞いて、デジタル技術がエネルギー産業に大きな変化をもたらすという確信が深まりました。だた、ブロックチェーンはすごくテクニカルなイメージが強いので、「私はいいや」と敬遠する方が多いように感じます。それはとても残念なことです。

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