電気自動車の未来(3)、天然ガス自動車と電気自動車、今後のモビリティの形

2018年02月01日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

電気自動車の未来(3)、天然ガス自動車と電気自動車、今後のモビリティの形の写真

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は1月、電気自動車や天然ガス自動車に関するレポートを発表しました。EVが市場を席巻するには時間がかかると考えられ、環境対策としては天然ガス自動車も有効な選択肢となります。2040年において、天然ガス自動車は電気自動車を上回るエネルギー需要が見込まれています。

天然ガス車、2016年時点で約2400万台以上、EVの10倍超の普及状況

輸送部門の大気汚染対策には、電気自動車(EV)だけではなく、天然ガス自動車という選択肢があります。天然ガス自動車は、光化学スモッグ・酸性雨などの環境汚染の原因となる窒素酸化物、炭化水素の排出量が少なく、硫黄酸化物は全く排出されません。加えて、喘息などの呼吸器疾患の原因となる黒煙や粒子状物質は、ほとんど排出されません。日本ガス協会によると、CO2の排出量を、ガソリン車より約2割低減できるとされています。

EVにおける現時点での課題として、航続距離・充電スタンド・充電時間が挙げられますが、天然ガス自動車はそれらに対し優位性があります。EVの電池コスト・重量等の技術革新の動向が見えるまで、大気汚染対策の現実的な解決策としての普及促進が見込まれています。

天然ガスの輸送への利用は、圧縮天然ガス車、LNG燃料トラック、LNG船舶等で、既に実用化・商業化されています。NGV Globalによると、天然ガス車の保有台数は、2016年時点で約2400万台以上と、EVの10倍超の普及状況となっています。また、世界の天然ガス車の保有台数は、2024年までに3000万台を超える見通しとなっています。

IEA も、新政策シナリオにおいて、輸送部門の天然ガス需要を、2016年の約50Bcmから、2040年には約250Bcmへ増加すると見込んでいます(図1)。このうち、天然ガス自動車需要は約185Bcmであり、原油換算では、約2.9mb/dに相当します。同様の2040年において、EVは約2.8億台、原油換算約2.5mb/dの想定となっており、EVを若干上回る見通しとなっています。

天然ガス自動車の保有台数推移と輸送部門の天然ガス需要見通し

図1 天然ガス自動車の保有台数推移と輸送部門の天然ガス需要見通し 出典:JOGMEC

天然ガス車の普及上位国、イタリアを除きすべて新興国・産ガス国

EV、天然ガス車ともに、既存の輸送用燃料需要を代替するものですが、普及状況の上位の国は異なります。EVの普及国は、中国を除きすべてOECD国であるのに対し、天然ガス車の普及上位国は、イタリアを除きすべて新興国・産ガス国となっています(図2)。これは、現時点では、自動車普及台数が増加段階にある新興国にとって EVの初期コスト負担は困難であるためです。

天然ガス車の燃料補給インフラが既に確立している国でEVが市場を席巻するには、まだしばらく時間がかかると考えられます。また、トラックのような大型車両・長距離輸送を完全にEVに代替するには、単なる政策的な支援だけでなく、新たな技術革新が前提となります。より実現可能な選択肢として、EVだけではなく、天然ガス車を活用する必要性もあると考えられます。

各国のEVとNGVの保有台数

図2 各国のEVとNGVの保有台数 出典:JOGMEC

EVによる社会全体の最適化

移動手段としては、一人乗りの場合は車両重量1.5ンの車よりも、電動バイクの方が燃費でみれば効率的な移動手段となります。輸送量あたりのCO2排出量は、EVが1.2kg-CO2/kmであるのに対し、電動バイクは0.2kg-CO2/kmと6分の1です。また、EV同乗は追加的な燃料消費も少なく、0.1kg-CO2/kmと、極めて効率的な移動が可能です(図3)。

このため、個人所有を前提とした車単体の効率化よりも、「高効率」な車両を、社会全体で保有「カーシェア」し、必要な移動時に「ライドシェア」、蓄電地としての負荷平準化を「電池シェア」することでの社会全体の高効率化が可能です。

積載量、燃費、輸送量あたりのCO2排出量比較

図3 積載量、燃費、輸送量あたりのCO2排出量比較 出典:JOGMEC

今後の自動車については、加速に優れた先進的な車だけでなく、必要に応じた移動手段の確保や、自動運転による快適な輸送空間といった要素が重要になると考えられます。例えば、ソニーは新たな移動体験の提供を目的としたニューコンセプトカート「SC-1」を試作開発したと発表しています。イメージセンサーで得られた映像をAIで解析することで発信する情報を変化させるほか、クラウド側には走行情報が蓄積され、それをディープラーニングで解析することで、最適な運行アシストに繋げることも可能です。[関連記事]

また、トヨタ自動車は、米国ネバダ州ラスベガスで開催される「2018 International CES」において、移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス(MaaS)専用次世代電気自動車、「e-Palette Concept」を出展しています。トヨタ自動車によると、将来は、複数のサービス事業者による1台の車両の相互利用や、複数のサイズバリエーションをもつ車両による効率的かつ一貫した輸送システムといったサービスの最適化を目指すとしています(図4)。

EVの大量普及が期待されるようになったのは、①蓄電池の技術革新、②地球温暖化対策、大気汚染対策、次世代産業の育成のための政府支援、③再生可能エネルギー大量導入に際し、負荷変動を吸収するための「蓄電池」としてのEVへの活用等が要因となっています。

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