電気自動車の未来(1)、2040年には全体の15%がEVに、電力需要は2%増
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2018年01月29日
一般社団法人エネルギー情報センター
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は1月、電気自動車や天然ガス自動車に関するレポートを発表しました。EVは今後も順調にシェアを伸ばしていき、保有台数は2040年時点で2.8億台(全体の15%)に達し、電力需要が2%増、石油需要は2.4%減少すると見通されています。
2016年時点での世界全体のEVの保有台数は約200万台、全体の約0.16%に
電気自動車(EV)の定義は各国・各メーカー・調査機関等により様々ですが、IEAでは、内燃機関(ICE)を持たないバッテリー式電動車と、内燃機関に加えて外部電源から充電した電力で走行するプラグインハイブリッド車をEVとして、その普及状況・見通し等を整理しています。
IEAの「World EV outlook 2017」によると、2016年時点での世界全体のEVの保有台数は約200万台に達しました。日本自動車工業会によると、乗用車・トラック・バスの普及台数は約12.6億台のため、全体の約0.16%に達します。
特に、中国は保有台数が65万台と、世界第一位です。第二位は、保有台数が56万台の米国が続きます。なお、ノルウェーは人口が約500万人の国ですが、保有台数13万台であり、新車販売の約4割をEVが占めています。これは、凍結防止のため、車庫に電源設備を有していた背景があり、新車登録台数でも米国に次ぐEV先進国となっています(図1)。
2017年に入り、各国政府(英・仏・中国)や自動車メーカー(トヨタ・ボルボ等)から、従来型の内燃機関車を段階的に廃止し、EVの販売、EV車種の拡充等に関する発表が相次いでいます(図2)。例えばボルボは、来年の2019年以降は、EV/ハイブリッド車のみを販売する方針を発表しています[関連記事]。
このように、世界各地でEVの普及が進められています。IEA、BP、BNEFを始め、各国の調査機関が将来のEV化の進展を取りまとめていますが、昨今のバッテリー技術革新や、充電インフラの整備等により、2020年代後半から販売数が増大を始め、乗用車の新車販売の中で大きな地位を占めると予測されています。
EV導入増による燃料需要代替は、IEAの新政策シナリオにおいて、石油需要全体の約2.4%とされています。2040年の石油需要が104.9mb/dであり、その内の2.5mb/dがEVで代替されるとの予測です。このとき、2040年でEVの保有台数を2.8億台(全体の約15%)としており、電力需要が2%増、石油需要は2.4%減少すると見通しされています。
なお、現行想定される政策を盛り込んだメインシナリオ以外にも、技術革新・EV導入がより進むケースも想定されています。この場合、EVの普及台数は、約10億台程度(全体の約半数)となりますが、その場合、石油需要の約1割(9.2mb/d)が代替されるとしています。
輸送部門の高度化と燃料削減
EVの導入、自動運転、カーシェア、ライドシェアといった輸送部門の高度化は、燃料需要を少なくする一方、走行距離の増大(自動車等の需要増加)をもたらす可能性もあります。
BPは、「Energy Outlook 2017」において、2035年の乗用車保有台数18億台のうち、EVが1億台となることをベースケースとし、自動運転、ライドシェア、カーシェアといった「デジタル革命進展シナリオ」、電動化がさらに進展する、「デジタル革命+EV化進展シナリオ」を示しています。「デジタル革命+EV化進展シナリオ」では、ベースケースに加えて、バッテリー式電動車が2億台増加することを想定しています。
「デジタル革命進展シナリオ」では、自動運転等により、石油需要の抑制が見込まれます。しかし一方で、自動車移動のコスト低減やアクセスの良化により、走行距離が増加するとしています。そのため、石油需要の減少は、走行需要の増加により相殺されるとしています。
「デジタル革命+EV化進展シナリオ」では、デジタル革命の成果が全て電動車に集約されると仮定しています。その際、石油需要は、23mb/dから15.6mb/dまで減少するとしており、走行距離の増加は石油ではなく、電力量増に反映されるとしています(図3)。
あくまでシナリオによる想定値ですが、デジタル革命だけでは燃料需要への影響は少なく、EV普及が進められることで、燃料需要は大きく削減できるとされています。
再エネ電源の場合、5万km以上走行でCO2削減効果が発生、石炭電源では20万km
EVは走行時の化石燃料の燃焼に伴うCO2の排出はないものの、EVに給電する電力のCO2排出係数次第で、CO2削減の効果が大きく左右されることとなります。
加えて、「IVL Swedish Environmental Research Institute」によると、リチウムイオンバッテリーの製造段階で、150~200kg-CO2/kWh程度のCO2を排出していると試算されています。
仮に、EV1台あたり、40kWhの蓄電池を搭載した場合を仮定します。そうすると、天然ガス火力発電からEVに給電する場合、約7万km以上を走行した場合に CO2削減効果が生じます。また、石炭火力の排出係数を前提にすれば、約20万kmの走行が必要となります。さらに、バッテリーの劣化により、交換が必要であれば、CO2削減効果はさらに限定的となります。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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