2040年には10億以上の家庭が相互接続された電力システムに参加するとの予測、IEA発表(1)

2017年11月28日

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11月6日、国際エネルギー機関(IEA)は、デジタル化とエネルギーの相互作用に関する包括的なレポートを発表しました。このレポートは、IEAが、デジタル化がどのようにエネルギーシステムを変革していくかを分析したものです。

国際エネルギー機関(IEA)、デジタル化とエネルギーの相互作用に関する包括的なレポートを発表

デジタル技術は、今後数十年間でエネルギーシステムを変革し、安全性、生産性、アクセシビリティ、持続可能性を改善するほか、世界中のエネルギーを繋げていくと想定されます。自宅のネット接続されたデバイスから、工業生産プロセス、スマートモビリティに至るまで、デジタルテクノロジーは、エネルギー消費それ自体の概念を変革していきます。

例えば、データ分析等の驚異的な進歩により、スマート家電、共有モビリティ、3D印刷など、さまざまな新しいデジタルアプリケーションが実現可能となります。こうしたデジタル化されたエネルギーシステムは、誰がエネルギーを必要としているかを特定し、適切なタイミングで、適切な場所に、最低コストで配信できる可能性があります。

しかし一方で、デジタル化によって新たなセキュリティとプライバシーのリスクも高まっています。また、市場、企業、雇用も変化していきます。新しいビジネスモデルが登場していくため、過去のモデルから脱却する必要性に迫られるケースも考えられます。

こうした中、国際エネルギー機関(IEA)は、デジタル化とエネルギーの相互作用に関する包括的なレポートを発表しました。このレポートは、IEAが、デジタル化がどのようにエネルギーシステムを変革していくかを分析したものです。電力部門とスマートグリッドが変革の中心に位置づけられていますが、デジタル化は需要と供給の境界線を曖昧にするため、最終的には家庭、運輸、産業などのエネルギー需給のすべての分野が影響を受けることとなっています。

IEAの報告によると、スマートメーターと接続機器が普及することで、2040年までに10億以上の家庭が、110億以上のスマート機器が相互接続された電力システムに参加することができます。これにより、グリッドから電力を引き出す時期と量を、家庭単位で変更できるようになります。需要側でエネルギーの需要変動に対応可能となり、185GWの柔軟性が確保され、新たな電力インフラへの投資を2700億ドル抑えることができます。

インターネットトラフィックは過去5年間で3倍に

近年、データは指数関数的に増加しており、インターネットトラフィックは過去5年間で3倍になり、世界のデータの90%は過去2年間で作成されました。2001年、世界の年間インターネットトラフィックが1exabyteを超え、2017年にはzettabyteの閾値を超えることが予想されています。

人とデバイスもますます増え続けています。2001年には35億人以上の人口、つまり世界人口のほぼ半分がインターネットを利用することとなりました。現在、家庭の約54%が自宅でインターネットに接続しています。過去5年間で、2017年の世界のモバイルブロードバンド加入者数は3倍に増加し、40億人を突破しました(図1)。

腕時計、家電、自動車などの日常的なものは、電力網のスマート化、住宅のオートメーション化、個人用ヘルスケア製品のIT化などにより、通信ネットワーク(IoT)に接続されます。接続されるIoTデバイスの数は、2017年の84億台から2020年には200億台に増加すると予測されています。

世界のネット接続状況の推移

図1 世界のネット接続状況の推移 出典:IEA

エネルギーデジタル技術への投資額、ガス火力発電より約40%多い

エネルギー分野は、デジタル技術を早期に採用してきました。1970年代、電力会社はデジタル利用のパイオニアであり、新技術を使用してグリッドの管理と操作を容易にしました。石油およびガス企業は、貯留層やパイプラインを含む探査および生産を改善するために、デジタル技術を長い間使用してきました。

産業部門は、エネルギー使用を最小限に抑えながら、品質と歩留まりを最大化するために、特に重工業で数十年にわたりプロセス制御と自動化を使用してきました。

近年、エネルギーのデジタル化のペースは高まっており、ここ数年、エネルギー会社によるデジタル技術への投資が急増しています。例えば、デジタル電力技術インフラとソフトウェアに対する世界的な投資は、2016年には470億ドルに達しており、2014年から20%以上増加しています(図2)。この2016年の投資額は、世界のガス火力発電の投資額(340億ドル)よりも約40%多く、インドの電力セクターへの総投資額(550億ドル)に近い値です。

デジタル電力インフラ技術とソフトウェアに対する世界的な投資額の推移

図2 デジタル電力インフラ技術とソフトウェアに対する世界的な投資額の推移 出典:IEA

石油・ガス部門のデジタル化

デジタル化は、石油やガス、石炭、電力のコストを削減するほか、安全性を向上させ、生産性を高めることが可能です。石油・ガス部門は、特に上流でのデジタル技術では比較的長い歴史を持ち、デジタル化が事業を強化するために重要であるという潜在的可能性を示してます。将来、上流の石油・ガス産業における更なるデジタル化は、すでに使用されている既存のデジタルアプリケーションの範囲を拡大し、改良することに焦点を合わせる可能性が高いです。

例えば、生産システム内の小型化されたセンサーおよび光ファイバーセンサーを使用して、生産量を増加させることができます。または、自動掘削リグとロボットを使用して、海底インフラストラクチャを検査および修復し、パイプラインとタンクを監視することも可能です。そのほか、ドローンがあれば広範囲に広がっているパイプラインの検査もできます。石油・ガス業界では更に、ウェアラブル、ロボット工学、人工知能の応用が見られます。

デジタル技術の普及により、地震データの高度な処理、センサー使用、貯留層のモデリング強化が可能となって、石油・ガスの生産コストを10~20%削減することができます。また、技術的に回復可能な石油・ガス資源は、シェールガスの採算性が高まることもあり、世界的に約5%増加すると想定されています。

石炭部門のデジタル化

石炭については、サプライチェーン全体でデジタル技術を使用することで、生産コストとメンテナンスコストが削減され、労働者の安全性も向上します。例としては、全自動システム、ロボットマイニング、リモートマイニング、オペレーションオートメーション、鉱山モデリングとシミュレーション、GPSおよびGIS(地理情報システム)ツールの使用などがあります。

低コストのセンサと、コンピュータ支援シミュレーションは、石炭事業に新たな可能性をもたらします。しかし、デジタル化の全体的な影響は、他の分野よりも控えめである可能性が高いです。

電力部門のデジタル化

デジタル化は、少なくとも4つの方法で電力システムのコスト削減を期待できます。それは、①運用・メンテナンス効率の向上、②発電所の効率化、③計画外の停止やダウンタイムを削減、④設備などの資産の運用寿命を長期化が挙げられます。これらのデジタル対応による全体的な節減額は、2016〜2040年で年間約800億ドルの規模です。

データ分析はO&M(保守点検)コストを削減し、予測保守を可能にします。2040年までに、デジタル化によって達成されるO&Mコストの削減は5%となり、最終的には消費者の平均で年間200億ドルを節約することができます。

またデジタル化は、発電所での燃焼効率の改善、ネットワークにおける損失率の低減などを通じて、より高い効率を達成することに貢献します。電力網では遠隔監視など、機器をより効率的かつ最適な状態に近づけることで、電力供給の損失率を低下させ効率を上げることができます。

また、障害の発生箇所を迅速に特定することで、より良い監視と予測的な保守を行うことが可能となり、予期せぬ停止の頻度を減らすことができます。これは電力コストを削減するだけではなく、供給の弾力性と信頼性を向上させます。ネットワーク障害は、ユーティリティと経済の両方にとって負担が大きいためです。

電力部門におけるデジタル化の最も重要な潜在的利益の1つは、長期的には、発電所やネットワークの運用寿命を延ばす部分です。電力資産は2016年〜2040年で累積1兆3000億ドルに近い累積投資があり、寿命を伸ばすことは大きなインパクトがあります。平均すると、デジタル化によって発電所への投資額は年間340億ドル、ネットワークでは年間200億ドル減少します(図3)。

2016_2040年において発電所とインフラ網のデジタル化によって削減されるコスト

図3 2016~2040年において発電所とインフラ網のデジタル化によって削減されるコスト 出典:IEA

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