水素基本戦略が6年ぶりの改訂、15年間で15兆円の投資を決定!どのような分野で経済成長が見込まれるのか?
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2023年6月、6年ぶりに「水素基本戦略」が取りまとめられ、今後15年間で官民で15兆円を超える投資を行うことが発表されました。今回は、改訂の背景や、基本戦略の概要や今後の課題について紹介します。
「水素基本戦略」6年ぶり改訂の背景
日本は世界に先駆けて、水素への取り組みを行ってきました。
2017年12月に世界で初めて、府省庁を横断する国家戦略である「水素基本戦略」が策定されました。2018年10月には、水素の利活用をグローバルな規模で推し進めていくために経済産業省とNEDOが「⽔素閣僚会議」を開催。2019年3月には「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表しています。
今回の基本戦略は2017年から6年ぶりとなります。改訂の背景には、世界での脱炭素化の動きに加えて、ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー危機の高まりがあります。日本は化石燃料への7割以上と依存度が高く、エネルギー自給率9%と低いです。
水素はエネルギーとして利用してもCO₂が排出されないクリーンなエネルギーです。加えて、水から取り出すだけでなく、様々な資源から製造できる点もメリットであることから、日本が今後、「脱炭素社会」と「エネルギー安全保障」を両軸で実現するために欠かせないキーワードです。
基本戦略の2つの方向性
今回の基本戦略では主に2つの方向性が示されました。
2040年に現在の6倍の1200万トンの導入量を目指す
まずは水素の利用量を足元の約200万トンから、2040年に1200万トン程度まで引き上げることが示されました。この数値は現在の6倍にあたります。さらに政府としては2050年に水素供給量を2千万トンの目標を掲げています。
9つの分野に15兆円規模の投資
そのためにも、今後15年間で、官民合わせて15兆円規模の投資を行います。投資をする分野として、9つの技術分野が示されました。例えば、水を電気分解して水素を作る「水電解装置」、自動車やデータセンターでの活用が期待される「燃料電池」、海外から水素を運搬する船の大型化などの技術開発も進める「サプライチェーン」の構築などです。
こうしたことから、脱炭素やエネルギーの安定供給だけでなく、さらに経済成長につながるということを政府は強調しています。
では、どのようなシーンで経済的な拡大が想定されるのか、生産・輸送・利用の3つに分けて考えていきます。
■製造(生産)
日本は元々、水素電解装置が強いとされています。こうした装置の製造を手がける事業者に対しては、研究開発だけでなく量産化に向けた支援も行い、水素関連のビジネスを国内だけでなく海外にも展開できる一大産業に成長させたい考えです。2030年に世界シェアの1割を目指します。
例えば岩谷産業が代表的な企業です。6月21日には中期経営計画「PLAN27」を発表。今後5年間で水素関連事業に2千億円近くを投じ、部門売上高を2022年度の約2倍となる920億円に引き上げることを発表しました。他にも、水素電解装置メーカーとしては東レや日立造船といった企業があります。アメリカやEUなど水素導入に積極的な国への設備導入をめざします。

出典:資源エネルギー庁「水素・アンモニアを取り巻く現状と今後の検討の方向性(令和4年4月19日)」
■輸送
輸送に関しては、以前の記事で川崎重工業の世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」の実用化についても取り上げましたが、(ご参考:https://pps-net.org/column/102271 )直近では、今後の液化水素大量輸送に向けて、国土交通省とオーストラリアでの連携が強化されています。
6月19日には、国際水素サプライチェーンの商用化に不可欠な「大型液化水素運搬船」の実現に向け、日豪海事当局間で協議を行い、新たな貨物タンク断熱システムを含む液化水素の運送要件について合意しました。これにより、今後、大型液化水素運搬船の設計が行われることになります。
また、政府はパイプラインなどインフラへの支援も行い、今後10年間で大規模な拠点を3か所、中規模な拠点を5か所国内に整備していくとしています。
■利用
日本を代表する自動車メーカーのトヨタはFCVに取り組んできました。FCV 「MIRAI 」や FC バス「 SORA 」の販売等です。FCV(燃料電池自動車)とは、燃料電池内で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーで、モーターを回して走る自動車のことです。5月26日~28日に行われた24時間耐久レースでは、世界初の挑戦として、液体水素を燃料として搭載した「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(水素エンジンカローラ)で、参戦しました。

出典:TOYOTA
しかしながら、FCVの商用的な普及は依然として限定的です。資源エネルギー庁の「今後の水素ステーション政策の方向性について(2021年8月27日)」では水素ステーションの整備費及び運営費も事業自立化のために更に引き下げていく必要があると指摘されていましたが、状況が進展しているか微妙なところです。政府としては、今回の基本戦略内では、「2020年160 か所整備目標はほぼ達成」し、「2030 年度までに 1,000 基程度の整備目標について」確実に実現したいとしています。
実現に向けた課題とは?
基本戦略の実現に向けて、水素ステーションの整備や、その他の安全性、法整備、製造方法など課題は多数ありますが、やはり、水素の価格についての課題は大きいでしょう。
現在、水素の価格は天然ガスと比較すると、約7~5倍程度あるといわれています。この点について、政府としては水素と化石燃料との価格差を補助し、販売価格の引き下げに向けた支援を行う方向で制度の検討を進めています。
将来的には国際水素サプライチェーンの構築等により、水素コスト(プラント引渡しコスト)を、従来エネルギーと遜色のない水準まで低減させていくことを目指しています。水素・燃料電池戦略ロードマップ(2019年3月12日)によると、具体的には、現在100円/Nm3ですが、「2030年頃に30円/Nm3程度、将来的に20円/Nm3程度まで低減することを目標」としています。
日本としては水素分野で世界をリードしていきたいという考えが強いですが、海外の開発競争も激化しているのは事実です。海外の最新動向については、次回ご紹介いたします。
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