ソニー・ホンダモビリティ設立!高まるEVニーズで電力逼迫・充電スポット不足をどう防ぐのか?

2022年10月28日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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10月にはソニー・ホンダモビリティの設立発表、テスラ社の売上が前年同月比56%増など、引き続きEVシフトの動きが活況です。国内では、EV普及を見据えて電力逼迫やインフラ不足を回避する新しい動きが出てきています。

直近のEV市場動向について

10月13日、ソニーグループとホンダが共同出資する電気自動車(EV)の新会社「ソニー・ホンダモビリティ」設立の発表がありました。今後、北米のホンダの工場で生産し、2025年前半に先行受注を始め、26年春に北米から出荷するという計画です。販売はオンラインが中心になるということです。

ちなみに、年初のコラム( https://pps-net.org/column/98857)にて、ソニーがEVの新会社を設立する背景や、試作EVである「VISON-S」の特徴などについて紹介しましたのでご参考にしてください。

出典:ソニー・ホンダモビリティ プレスリリース

世界中でEVを巡る競争環境は一段と激しくなっています。先行する米テスラは10月19日、2022年7~9月期決算は、売上高が前年同期比56%増の214億5400万ドル(約3兆2000億円)、純利益が2倍の32億9200万ドルとなったことを発表しました。また、2021年の販売実績は93万6222台となっています。インフレや、半導体不足の中でも業績が好調といえるでしょう。

また、ドイツのアウディ(Audi)は10月14日、2022年1~9月のEVの世界販売の結果を発表しました。総販売台数は7万7000台。前年同期比は45.9%増と2桁増を達成しています。欧州や中国でもEVの販売実績が好調で、高まる資源高もEVシフトの追い風となっているという見方もあります。

このように世界的にEVシフトが加速していますが、この影響で、国内では2つの課題が出てきました。また、それを乗り越えるための新しい動きがありますので詳しくご紹介していきます。

電力不足リスクに対応する新しいサービス

課題の1つ目は、電力不足リスクです。EVの充電には多くの電力を使用します。また、多くの人が夕方~夜の時間帯にかけて帰社(帰宅)後に駐車場にて充電をすることでしょう。

今後EVが本格的に普及したときに、複数台の充電に対応できる設備を設置するケースが多くなることや、充電が集中することによって電力がひっ迫することが予想されます。加えて、充電のための電力設備の増強や、電気契約の基本料金の上昇など、経済的な負担も増加します。

パナソニックと中部電力、EV充電の集中回避の実証実験開始

パナソニックと中部電力は、EVの充電タイミングが集中するのを避ける仕組みの構築を目指し、パナソニックと中部電力が20日から実証試験を開始しました。

中部電力は、施設の電力需要予測やEVの運行計画情報を組み合わせ、複数台配備されたEVの充電優先順位を判定し、運行に必要な量を効率的に充電するEV充電スケジュールの開発を進めています。一方パナソニックは、EVの充電タイミングを制御し、集中を回避するEV充電インフラソリューション「Charge-ment(チャージメント)」を提供しています。

実証実験では双方のノウハウを組み合わせます。中部電力内の2台のEVを使用して、充電を最適に制御し、施設全体の消費電力を抑えます。同時に、電気料金の安い時間帯に充電をシフトすることで、EVの導入に伴い生じる電力設備の増強や電気の基本料金の上昇などの経済的負担を最小限にすることを目指します。

出典:中部電力 プレスリリース

REXEV(レクシヴ)、V2Gで新しいビジネスモデルを模索

また、多数のEVを一元管理して、巨大なひとつの蓄電池として活用する「V2G(ビークル・ツー・グリッド)」と呼ばれる技術が注目されています。

国内でV2Gに取り組むスタートアップ企業のREXEVではEVの電力をグリッド(電力網)に乗せることでブラックアウトを防ぐことを目指しています。4月から保有する数十台のEVを用いて電力を取引する事業を開始。充電器を遠隔制御して深夜だけ充電する設定にしたり、停車中のEVから電気を引き出せる仕組みを提供します。

今後はカーリース業者等と提携して台数を増やし、同時にシステムを増強する予定。そうすることで、リース業者などEV保有業者には需給調整市場の利益の一部が入る想定ということです。

EVステーション不足に対応する新しいサービス

課題の2つ目は、EVステーション不足です。日本国内では、2030年までに15万基の充電インフラ設置を目標に掲げています。現在、全国の充電スポット数は1万8千箇所以上でガソリンスタンド数の約6割に達していますが、インフラ普及においては充電時間の短縮のための急速充電という機能面はもちろん、人の流れやライフスタイルに沿った設置が重要であると考えられています。

近年は、コンビニやスーパーマーケットなど、日常よく訪れる場所や、高速道路のサービスエリアや道の駅など、長距離移動時の幹線道路沿いにも整備されるようになってきました。

プラゴ、EV充電ステーション「PLUGO PLACE」プロジェクトを開始

2018年設立、EV充電サービスの株式会社プラゴは、EV体験の向上とエリアに密接した充電インフラモデルの形成を図り、買い物や飲食、休憩場所などと充電サービスを一体型で提供するEV充電ステーション「PLUGO PLACE(プラゴ プレイス)」を、国内に設置するプロジェクトを開始します。2024年中に1拠点目の完成を目指し、2030年内までに600拠点の設置を目指します。

地域に適したEV充電ステーションと充電時間を有意義に過ごせるコンテンツを設計することで、EVユーザーに対して充電への安心と楽しみを提供するとともに、地域課題の解決や新たな人流の創出を図り、EVシフトを加速させます。

出典:プラゴ プレスリリース

e-Mobility Power、2030年までに急速充電スタンド約3万軒を目標

一方で、電量系統への負荷の問題や、急速充電ステーションを単独のビジネスは現在赤字で、ビジネス化できるのかについて明確な解がない状態です。また、自宅充電といってもマンションなどの集合住宅では充電設備が整っていないところも多く、戸建て住宅でも蓄電池を保有しているユーザーはまだまだ限られているのが現実でしょう。

そこで、自動車会社四社(トヨタ・日産・ホンダ・三菱)と電力会社二社(東京電力・中部電力)が出資して「e-Mobility Power」を設立。2030年までに急速充電スタンドを約3万軒(2019年のガソリンスタンド件数が29,637軒)にするという目標を掲げ、事業を推進しています。

まとめ

これからEVが主流となっていく中で、これまでの社会インフラやサービスについても大きな見直しが必要になっています。これからの流れをビジネスチャンス捉えて、既存の電力事業者や自動車メーカー、そして新興企業が新しいサービスを展開しようとしています。より使いやすく、よりクリーンなモビリティの実現に向けて今後もEV関連の動きに注目していきます。

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