ソニー、EVの新会社を設立。モビリティ―とエネルギー、通信業界の融合へ
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2022年01月13日
一般社団法人エネルギー情報センター
年始にソニーがEVの新会社を設立することを発表しました。かつて家電メーカーであったソニーは、これまでの事業の特徴や技術を活かしたEVを開発しています。今回は、モビリティ産業を進展させ、エネルギーや通信業界と融合する新しい動きとして、「ソニーモビリティ」に注目していきたいと思います。
「ソニーモビリティ」を設立。VISON-Sの特徴とは?
ソニーは2022年1月5日~8日に米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2022」で、EV(電気自動車)の市場投入の本格検討を行なう事業会社である「ソニーモビリティ」を設立すると発表しました。新会社設立により「ソニーEVとしての商業化を探っていく」とのことです。
同社は、2020年のCESで試作EV「VISION-S」を公開していました。今年はそのSUVモデルである「VISION-S 02」をお披露目し、「広い室内空間を用いたエンターテイメント体験や7人乗車のバリエーションなどを通して、VISION-S 01とともに、価値観が多様化する社会での様々なライフスタイルへの対応を推進していきます」とコメントしています。
VISON-Sには、セーフティ、アダブタビリティ、エンターテイメントの3つのコンセプトがあります。簡単にリリースの内容を一部引用しながらご紹介します。
セーフティ
「高感度、高精細、広ダイナミックレンジのCMOSイメージセンサーや立体空間を3Dで正確に把握するLiDAR(ライダー)などの周囲360度に張り巡らされたセンサーにより、周辺環境の認識・把握をリアルタイムに行い、安全運転を支援します。」VISON-S 02には、車内外合わせて40のセンサーが装備されています。
アダプタビリティ
「5G通信を含めたモバイル通信を用いて、車両とクラウドシステムを連携させることで、車両設定やキー施錠、ユーザーの設定が同期されます。また、アップデートがOTA(Over the air)で車両へ反映されていくため、セキュリティ面、サービス機能や付加価値提供については継続的に進化させていくことが可能です。」同社ではこれまでスマートフォンの開発を通じて培ってきた通信技術や、通信セキュリティ等の技術や知見を活かしたリモート運転を重要技術と位置付けています。
エンターテイメント
「立体的な音場を実現するシートスピーカーと「360 Reality Audio」に対応したストリーミングサービスにより、好みのアーティストの生演奏に囲まれているような没入感のある音楽体験を提供していく。」臨場感のある映像視聴体験の提供や、自宅のPlayStation®にリモート接続してのゲーム体験なども提供するとのことです。
EVはスマートフォンやロボットと一緒!?
新会社に関して同社は、「AI・ロボティクス技術を最大限に活用し、誰もが日常的にロボットと共生する世界を実現し、人を感動で満たし、社会へ貢献することを目指します。」とリリースしています。これまでのエンタテインメントロボットの「aibo」や、ドローンの「Airpeak」、に「VISION-S」を加え、「様々な領域において新たな価値創造を行っていこう」というのです。
たしかに前述した通り、VISION-Sには多数のセンサーを搭載しており、それらの情報とクラウド連携を使い、ソフトウェアによる制御の関与度が高いEVといえます。「インターネットにつながり、クラウドで処理した情報を使うという意味」では、「EVもaiboも同じ」で、「どちらもIoTである」ということをインタビューで関係者も応じています。
また、5Gなどのネットワークを使い、自動的かつ継続的に機能がアップデートしていく前提で開発がなされています。ユーザーインターフェース部分にはSoCとしてQualcommのSnapdragonが使われ、OSはAndroidをベースにしたものです。クラウドインフラとしてはAWSが採用されていて、収集した情報を処理して機能アップに活かします。このような機能もスマートフォンや「aibo」に近いといえます。
事業モデルも進化。売り切りではなくリカーリング型になるか
ソニーグループの吉田憲一郎社長は、EVのビジネスのあり方として「リカーリング(継続型)ビジネスになる」と話した、と報道されています。
リカーリング型とは製品を売って終わりではなく、その後も顧客から継続的に収益をあげるビジネスモデルを指します。近年拡大するサブスクリプション型は支払額が定額なのに対し、リカーリング型は使用量によって変わりますが、注目すべきは、売り切りではないということです。
ソニーのEVが、アップデートやカスタマイズ前提になるとすれば、そこでは顧客との接点が生まれることになり、EVはリカーリングビジネスになります。ソフトウェア制御の領域が増えるのでアップデートは必須で、EV自体の動作チェックを自動で行なえるため、メンテナンスなどについて、ドライバーに注意を促すのも簡単になります。
事業モデルも従来のような所有をベースにしたものから変化していく可能性があります。
例えば、EVを使っていない時間、他人に貸し出すカーシェアリングを販売モデルに組み込むことで、自動車を手に入れる費用をより安いものにすることもあり得ます。また、走行距離に応じた課金をし、車両価格を分割してリカーリング価格に上乗せすることで、EVの購入の敷居を低くすることもできそうです。
エネルギーとモビリティそして通信が融合する社会へ
ロボットやスマートフォンとEVが同じ領域としてカテゴライズされ、開発されていくことは非常に興味深いです。なぜなら、今まで全く別の産業として考えられていたモビリティ産業、通信産業、エネルギー産業が横断的に融合され、新しい価値やサービス生み出されることを意味するからです。
その世界観ではEV・IoT機器・ロボット・蓄電池など間での電気やりとりは自動化されることが予想されます。モビリティ(EV)自体がエネルギーの需要源となり、エネルギー供給サイドと連携をします。モビリティサービス需要とエネルギー供給の双方を把握しようとする動きが活発化する結果、以下のようなことが起きるかもしれません。
例えば、供給側は電力供給が少ない時間帯には、モビリティ利用料の価格を上げて移動タイミングをずらすことや、相乗りを促すことが考えられます。また、EVの充電料金を時間帯ごとに変え、ピークを避けて充電するよう誘導することなども考えられます。
需要側ではデジタルを用いて適時にエネルギー利用状況を把握し、省電力化することでシステム全体の電力量を抑えます。また、EVと分散型供給システムと連動するような仕組みを備えておくことなどが考えられます。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
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