活性化する商用車の電動化!物流を変える商用EV市場の最新動向。

2021年11月05日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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欧州連合(EU)が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出すなど、世界各国によるEVシフトの動きは加速の一途をたどっています。欧米メーカーだけでなく、中国勢もコスト力で存在感を見せています。ASEANやインドなどの新興国市場でもEVで先手を取ろうと各国のメーカーが積極的な動きを示しています。今回は、国内市場で動きが活発化している商用車の電動(EV・FCV)化について最新動向をみていきます。

欧米を中心に強まる環境規制、商用車にも

7月14日、EUの執行機関である欧州委員会が2035年に発売できる新車は、排出ガスゼロ車のみとする規制を提案しました。対象となるのは電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のみ。ガソリン車やディーゼル車だけではなく、実質的にエンジンを搭載したハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売も禁じることになると言われています。同時に、2030年の二酸化炭素(CO2)排出規制も見直しました。従来は走行1km当たりのCO2排出量を21年比で37.5%削減する案だったが、これを55%削減に引き上げました。このことで、ハイブリット車は実質除外されていく方向になります。

乗用車と同様に、商用車についても欧米がルールメイキングをし、先行する動きを見せています。環境規制が強化されていく欧州では、商用車のCO2排出量を2030年までに19年比で3割削減することを求めています。また、バイデン政権下で脱炭素に取り組む米国では、カリフォルニア州で2045年までに同州で販売する全てのトラックをEVやFCVにする規制を導入しました。

なぜ今、商用車にフォーカスが当てられているのでしょうか。理由は3つあると考えています。

1つ目は、電動車は充電設備などの問題により、インフラとセットで考える必要があると言われてきました。商用車は決められたルートで事業者が使用し、乗用車に比べて、充電インフラの確保や保守メンテナンスが容易であることから、参入しやすいという面があります。
2つ目は、SDGs、気候変動が注目され脱炭素、ESG投資の動きが加速したことで、企業としても自社の脱炭素の取り組みを強化する必要が出てきました。自社で保有する車両をEV化することは脱炭素戦略として非常に重要なアピールになります。
3つ目は、世界中で販売におけるEC化率が年々上昇していましたが、コロナ禍でさらに需要が増加し、運輸業の人手不足や労働力確保が言われてきました。物流の「ラストワンマイル」ということばが注目されているように、電動化することで、配送効率を上げることも期待されています。

商用車のEV化、政府の方針

日本政府は6月に発表した「グリーン成長戦略」の中で、積載量8トン以下トラックなどの小型商用車の新車販売を以下のような目標を掲げています。

  1. 2030年までに、EVやFCVといった電動車を20~30%にする
  2. 2040年までに、電動車のほか、CO2と水素の合成液体燃料「イーフューエル」で走る車両も合わせて100%にする

また、8t超の大型の車については、「貨物・旅客事業等の商用用途に適する電動車の開発・利用促進に向けた技術実証を進めつつ、2020年代に5,000台の先行導入を目指すとともに、水素や合成燃料等の価格低減に向けた技術開発・普及の取組の進捗も踏まえ、2030年までに、2040年の電動車の普及目標を設定する。」と小型商用車に比べてややざっくりとした目標となっています。

しかしいずれにしても、「この10年間は電気自動車の導入を強力に進め、電池をはじめ、世界をリードする産業サプライチェーンとモビリティ社会を構築する。この際、特に軽自動車や商用車等の、電気自動車や燃料電池自動車への転換について、特段の対策を講じていく。」(2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 令和3年6月18日)として、商用車への取り組みを強化することについて記載がされています。

次は国内の自動車業界の動きをみていきたいと思います。

国内自動車メーカーが結集、商用者連合とは

トヨタ自動車、日野自動車、いすゞ自動車で立ち上げた商用車の技術開発会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジー(CJPT)」に、7月から軽自動車を得意とするスズキとダイハツ工業の2社が加わりました。

CASE技術(電動化、自動運転、コネクテッド、シェアリング)の協業を推進するための「商用車連合」ともよばれています。いすゞと日野自動車が商業車事業で培った基盤とトヨタのCASE(コネクテッド=情報通信/オートノマス=自動運転/シェアード=共同利用/エレクトリック=電動化)技術を組み合わせ、輸送業が抱える課題の解決や、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指した取り組みです。

そこに軽自動車メーカーを組み入れることで、荷主から顧客まで、物流業界が抱える課題を一気通貫で解決しようというのが今回の動きになります。これで脱炭素における商用車分野の協業の総仕上げとなりました。大型から小型まで、商用車を全方位で開発する体制が整ったことになります。先述した通り、物流を担う商用車はあらかじめ決められたルートを通ることが多いです。荷物の集配所から受け取る人までの「ラストワンマイル」の物流を担う軽自動車は、電動化やコネクテッドなど新技術の開発には欠かせません。

参加の背景として、スズキの鈴木俊宏社長は「求めやすい価格で脱炭素を実現するには単独では非常に難しい」と説明しています。また、トヨタ自動車の豊田社長も「商用軽は収益だけを考えると非常に厳しい」と発言しています。コストをいかに低減し、競争力のある生産体制を築けるかが今回の鍵となっています。鈴木社長は「企業としても脱炭素をアピールできる軽の商用電気自動車(EV)へのニーズはこれまでも高かった」として、今後へ意欲を見せています。

ただ、すでに宅配便大手のヤマト運輸や佐川急便は、海外の自動車メーカーと手を組み、開発スピードを上げ、コストを抑えた生産に早くから着手しています。こうした動きはさらに加速していきそうです。

市場がないところに海外勢や異業種が参入

10月、物流大手のSBSHDは、中国自動車大手の東風小康汽車から1トン積載のEVトラックの供給を受けることを発表しました。EVスタートアップのフォロフライ(京都市)が設計し、東風小康が生産をします。SBSHDは2030年までに別の中国メーカーに発注する1.5トン車と合わせて、計1万台のEVの供給を受けることになります。航続距離は300キロメートルで宅配などに使われます。

東証1部上場である同社は配送時の温暖化ガス排出を減らそうとEV導入を模索していました。しかし、国産の1トン積載型が市場になく、日本車メーカーに生産依頼をした場合は高額になるということから、今回、中国産のEVトラックの導入を決めたと言います。今後5年で配送の協力会社に使用を促す分も含め国産ディーゼルトラックから順次切り替えます。日経新聞によると、国の補助金も見込めるため、「現行のトラックに比べてコストは安くなる」と言います。

他には、スタートアップ企業、HWエレクトロの蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)CEOは、同社が扱う初の小型商用EV「エレモ」を7月に発売しました。同社が発売するのは米セントロ社が中国で生産する小型のトラックです。すでに米、独、仏、伊の4カ国で販売実績があります。全長が軽自動車規格をわずかに上回るサイズで、宅配やキッチンカーとしての利用を見込んでいます。日本の保安基準に適合した仕様も完成し、2022年後半には自社開発の軽トラックと軽バンの販売を計画しています。

そのような中、10月28日、カー用品店チェーン大手の株式会社オートバックスセブンが、同社に出資、資本提携に関する契約を締結したことを発表しました。今回、オートバックスセブンはHWエレクトロ社に出資することで、EV市場へ参入します。全国のオートバックス店舗をエレモの販売やメンテナンス拠点として活用し、関連商品・サービスの販売や、新規サービスの共同開発を連携・協業していくことについて検討を開始しました。HWエレクトロ社では、日本市場へ本格参入するうえで、全国に拠点を持つ自動車の販売やメンテナンスのノウハウを有する企業との連携を模索していたところでした。

オートバックスセブン、EV市場へ参入 出典:オートバックスセブン プレスリリース

また、伊藤忠商事は中国企業との連携を強化しています。10月28日、自動車エンジニアリング会社の中国IAT Automobile Technology(IAT)と、同社が開発する商用の電気自動車(EV)バンの中国国外向けの輸出などで提携すると発表しました。今回、両社は、IATが開発する、EVバンユーザーのニーズに応える機能を兼ね備えた、競争力のある車両・部品の海外向け輸出、海外でのEV開発案件開拓、EV関連事業の検討を行うことに合意したということです。

3つの事例をご紹介しましたが、未構築の国内の商用EV市場に、次々と海外(特に中国)勢や異業種が参入してきています。では、国内自動車メーカーはどのような可能性を模索しているのでしょうか。

例えば、三菱自動車工業は、EV車「ミニキャブ・ミーブ」を日本郵政や東京電力に導入する動きが進んでいます。元々、三菱自動車はアジアを中心にシェアを持っているので、アジアのエネルギー転換政策の状況も鑑みながら、プラグインハイブリット(PHV)も含めてEV車の販売を強化していくとしています。また、スズキは2025年までに、インドで100万円台の軽ベース小型EVを投入する方針です。スズキが軽EVで得意とするインド市場を攻略する一方で、ダイハツは得意市場のマレーシア、インドネシアに共同開発の軽ベース小型EVを投入します。少し出遅れ感が目立つ日本メーカーの商用EVに対する取り組みですが、アジアを中心に日本メーカーがまだまだシェアを伸ばせる余地もあるのではないでしょうか。

大型商用車でも海外攻勢

次に、大型商用車についてです。トラックやバスを電気自動車 (EV)や燃料電池車(FCV)に転換する機運が高まっています。

商用EV事業のグローバル展開に関する地上鉄との戦略提携について 出典:伊藤忠商事プレスリリース

伊藤忠商事は9月に、出資先の地上鉄社有限公司と、戦略提携協議書を締結し、数年以内をめどに、日本を含むASEAN各国にて商用EVの導入・運営管理を一括で請け負う商用EV総合リースサービス事業の設立を目指すことで合意したと発表しました。両社はすでに日本およびシンガポールでの事業開始に向けてパートナー選定・事業検証を進めており、今後は他のASEAN各国でも同様の協議を開始する予定です。

地上鉄社は2015年の設立以降、世界最大のEV市場である中国でEV物流車に特化した総合リースサービス事業を展開し、現在は中国全土約200都市にて4万台の商用EVを管理・運営する業界最大手として中国の商用車電動化を牽引しています。伊藤忠は、CO2排出量の多い運輸分野での電動化要請が世界的に高まる中、ハードウェアとしての車両の提供に留まらず、車両電動化時に課題となる充電サービス、電力マネジメント、車載電池の二次利用といった総合的なサービスの構築を目指しています。

他にも、中国の比亜迪(BYD)は、2015年に大型EVバスを日本の事業者に初めて納入しました。国産の商用EVのラインアップが少ない中で、小型を含むEVバスを50台以上販売済みです。また、大型EVバスを30年までに累計約2000台販売するとしています。直近では、80人乗りの大型EVバス「K8」の価格を4000万円から26年をめどに4割値下げを目指すことを発表しています。

独ダイムラーは2018年に大型のEV「eアクトロス」を実用化しました。2030年までに新車販売の6割をEVかFCVにすることも発表しています。

一方、日本勢では三菱ふそうトラック・バスが2017年に積載量が最大 約4トンのEVトラックを発売しました。いすゞ自動車や日野自動車は2022年以降の投入を見込んでいます。日本メーカーは少し様子見なところがあるのでしょうか。実は、商用トラックの分野では、小型商用車と異なり、燃料として積んだ水素で発電して走行する燃料電池車(FCV)の導入も有力視されています。

なぜ大型トラックではFCVが有力視されているのか

理由は貨物積載時の総重量にあります。中型貨物トラックは最大積載時の総重量が10トン前後です。10トン以上の荷物が積めて長距離の幹線輸送に使用される大型トラックになると、最大積載時の総重量は20数トンに及びます。また、長距離輸送を担う大型トラックなら、少なくとも(500キロメートル離れた)東京〜大阪間を充電なしで走れるくらいの航続距離は必要と言われています。

そのような条件下で、仮に現在の技術で長距離輸送用の大型トラックをEV化した場合、最大積載時に1回の充電で走行できる航続距離は300キロメートル程度にとどまるといわれています。また、フル充電するには、急速充電でも約3時間は必要である点や、電池の重さだけで2.5トンに達するため、重量的な制約により、貨物の最大積載量を現行のエンジン車よりも約1割減らさざるをえないというデメリットがあります。

そこで大型トラックでは、EVより航続距離を伸ばしやすく、燃料充填時間も短いFCVの技術が注目されているのです。走行ルートが決まっていることが多い商用トラックなら、乗用車に比べて水素充填インフラの問題も解決しやすい点もメリットです。

しかし、まだまだ技術開発やインフラの問題で時間がかかるとも言われてるFCV。各社はEVと両軸で可能性を探っていくことになるのではないでしょうか。

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