進む、自治体のゼロカーボンシティ宣言。北欧や、吹田市「再エネ100%タウン」など、先進的な取り組みに続けるか。

2021年10月07日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

進む、自治体のゼロカーボンシティ宣言。北欧や、吹田市「再エネ100%タウン」など、先進的な取り組みに続けるか。の写真

2050年までのカーボンニュートラル、脱炭素実現に向けて、連日各自治体により「ゼロカーボンシティ」宣言が報道されています。この動きを宣言、表明だけでとどめず、具体的な取り組みにしてくためにはどういたら良いのでしょうか。今回は、先進的な4つの国内外の事例をご紹介していきます。

444自治体が宣言しているゼロカーボンシティとは

日本の地球温暖化対策の推進に関する法律では、「都道府県及び市町村は、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとする」とされています。

こうした制度も踏まえ、昨今、脱炭素社会に向けて、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体が増えています。その数は、東京都・京都市・横浜市を始めとする444自治体(40都道府県、268市、10特別区、106町、20村)に上ります。(2021年8月31日時点)

2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体
出典:環境省

環境省では、「2050 年に CO2(二酸化炭素)を実質ゼロにすることを目指す旨を首長自らが又は地方自治体として公表された地方自治体」を「ゼロカーボンシティ」とし
ています。
環境省のサイトに掲載されているゼロカーボンシティの表明例は以下の通りです。(ご参考:https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/03_2050ZCC_hyoumeirei.pdf

2050 年 ゼロカーボンシティの表明方法の例
  1. 定例記者会見やイベント等において、「2050 年 CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを首長が表明
  2. 議会で「2050 年 CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを首長が表明
  3. 報道機関へのプレスリリースで「2050 年 CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を
    目指すことを首長が表明
  4. 各地方自治体ホームページにおいて、「2050 年 CO2(二酸化炭素)実質排出ゼロ」を目指すことを表明

環境省ではゼロカーボンシティの取組みを後押しするため、農村や離島、都市など100以上の先行地域を選び補助金を出すなどしています。令和3年度予算においても「ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージ」として要求をしています。
では、ここからは、具体的に4つの国内外の事例をみていきます。

大阪、吹田市のSuita SSTは日本初の再エネ100%タウン

Suita サスティナブル・スマートタウン(Suita SST)は、17団体・吹田市で進める多世代居住型健康スマートタウンです。パナソニックが進めるCRE(企業不動産活用)戦略に基づく工場跡地等を活用したサスティナブル・スマートタウンプロジェクトの第3弾(第1弾は神奈川県藤沢市の住宅中心の郊外型「Fujisawa SST」、第2弾は横浜市の次世代都市型「Tsunashima SST」)です。大阪府吹田市で、次世代スマートタウンづくりを推進し、広く国内外に発信していくことを目的にしています。

計画では、同社の工場跡地に当たる吹田市岸部中5丁目の敷地面積2万3465.80平方メートルに、若者からファミリー、シニアまで、多世代が住まい集い交流する住宅総数365戸の他に、ウェルネス複合施設、複合商業施設、交流公園を備えたスマートタウンを整備します。全体の開発事業者は、パナソニックホームズとJR西日本不動産開発で、着工は2020年春、街開きは2022年春の予定です。

Suita SSTイメージ① 出典:Suita SST

エネルギーでは、関西電力と組み、エリア一括受電と卒FIT電気の活用、非化石証書の利用により、街区全体の消費電力を実質再生可能エネルギー100%で賄う日本初の「再エネ100タウン」を目標に掲げています。同時に、関西電力、大阪ガス、竹中工務店の3者も、住宅やEVの蓄電池や先進ガス機器も活用し、街全体でレジリエンス向上を図ります
。(参考:イメージ図)

Suita SSTイメージ② 出典:Suita SST

Suita SSTの特徴を電力の効率運用、低コスト(電気料金)化、レジリエンスという3つの側面から見ていきたいと思います。

電力の効率運用

吹田SST内の分譲マンションは、エネルギー収支をゼロにするZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)対応になる。すべての施設の屋上に太陽光パネルを網羅し自家発電する。エネルギー効率の高い空調設備や断熱材を完備して消費エネルギーを減らします。一方、自家発電の不足分は、関電が非化石証書を使った実質再エネ電力や、固定価格買い取り制度(FIT)の期間終了後の「卒FIT電力」を調達して街区に供給します。各施設には蓄電池も設置し、ピーク時の電力使用量を自動的に抑えるDR(デマンドコントローラー)で、街区全体のエネルギー消費を抑えます。

低コスト(電気料金)化

SSTでは電気料金も安く抑える工夫があります。敷地内に変電設備を設置することで、複数の段階を経ない受電のため、変換や送電によるロスをなくすことができます、同時に電力コストを抑えられます。非化石証書購入による価格上昇分を相殺し、再エネを使わないときと同程度の電気料金の水準にする予定ということです。

レジリエンス

災害時の電力のレジリエンス(耐久)機能も高めます。2018年6月に発生した大阪北部地震では、吹田市も停電などの被害を受けました。吹田SSTは街中で蓄電機能を備えることで、非常時にマンションの共用部で約3日間、電気を自足できます。自然災害などで送電線にトラブルが発生すれば、街の外からの電力供給は途絶えます。公園では非常用コンセントの開放も検討するということです。。また、EVのカーシェアリングサービス、充電設備も導入します。非常時には周辺地域へEVから給電することが可能になります。

当然、断熱性の高い設計や効率の高い省エネ機器の導入による建設コストが高くなるというのは理解できます。民間主導のプロジェクトなので、事業収支のバランスも不可欠になっています。国内外に発信していくために、入居者の理解と継続的な街の運営が必要不可欠です。

世界でも先駆的なデンマーク、コペンハーゲンの取り組み

次に、海外の事例をご紹介します。2025年に世界初のカーボンゼロ都市になると決めたデンマークの首都コペンハーゲン市です。デンマークは人口で日本の兵庫県ほどの規模です。2019年は、二酸化炭素(CO2)排出量は102万トンで、2005年と比較すると、市の炭素排出量は40%にまで下がっています。都市部における自然との共存や、安心して暮らせる地域づくりを進めるための取り組みも大切なテーマとされています。

大きな特徴としては、市民をクリーンな移動手段に誘導する取り組みです。2025年に75%の市民が徒歩や自転車、公共交通機関を使うのことが目標で掲げられています。例えば、至る所に自転車専用道が敷かれています。2014年には混雑緩和の目的で、自転車専用道路「Cycle Snake」が建設されたことでも注目されました。また、街中のいたるところにセンサーが設置されています。交差点に設置されたセンサーでは車や自転車などの動きを把握することによって渋滞を緩和させるためのコントロールが可能になります。通勤の時間帯は時速20kmで走行すると赤信号にかかることなくスムーズに走れるよう制御されたグリーンウェーブというシステムのほか、自転車から捨てやすいように斜めに傾いたゴミ箱を自転車道沿いに設置するなど、工夫が随所にほどこされています。

他にも、市は駐車場の閉鎖や、大型トラックの市内乗り入れ規制、EVの駐車料金の無料化、ガソリン車やディーゼル車を値上げするといった案の検討を次々としています。

エネルギー分野の仕掛けでは、風力発電を100基造る計画で、現在コペンハーゲン沖にあるミドルグロン洋上風力発電パークには20基の風車があり、10基はコペンハーゲン市民などが出資する共同組合の所有、残りの10基は電力会社の所有で、年間合計約99GWを発電しています。(2019年当時)

他には下水汚泥からのバイオガスで暖房に使う化石燃料を減らす取り組みが行われています。さらに周辺自治体と組み、発電所などで生じるCO2を大気中に排出される前に機械で回収し、北海の古い油田跡の地中に埋める。多額の資金をかけ、年50万トンのCO2削減を目指します。

年間を通して、国内の消費エネルギー自給率85%以上を維持しているデンマークでは、時に近隣の国々に余剰電力を販売しています。逆に、天候の影響などで電力供給が間に合わなかった場合、スウェーデンやノルウェー、ドイツ、オランダから電力を購入することもあります。デンマークと、提携しているその周辺諸国の発電量と消費量が24時間リアルタイムで確認できるサイトがあり、自国の電力供給量を国民一人一人が自分ごととして意識するきっかけにもなっているといいます。(ご参考:https://en.energinet.dk/?fbclid=IwAR2rdmFkXCu3psuDXiyt-sxnTnX2O0aVt7akyADgCPFlV5mo6L8a2y9HmwU

提携しているその周辺諸国の発電量と消費量が24時間リアルタイムで確認できる 出典:ENERGINET

デンマークがここまで、力を入れているのには、コペンハーゲンの先進的な取り組みを海外にアピールし、環境技術やスマートシティ関連技術、システムの海外輸出を進めるという狙いがあります。日本でも海外にアピールできる取り組みができるか注目です。

さて、これまで都市部の取り組みをご紹介しましたが、次に、地域(地方)の特色を生かしたゼロカーボンシティの取り組み事例をご紹介します。

岡山県真庭市のバイオマス発電事業

岡山県真庭市は地元の資源を最大限生かしたゼロカーボンシティの先駆けとして注目を集めています。

岡山県北部に位置する真庭市は総面積のうち8割が林野で、ヒノキの産地として有名です。中心街からほど近いところに、総面積約2万5000平方メートルの広大な木材集積場があります。ここに、真庭市周辺の製材所から出た端材や森林の間伐で出た丸太や枝葉といった木材が集まってきます。

ゼロカーボンシティ実現の柱はこれらを活かした真庭バイオマス発電所です。2013年に地元の林業従事者や木材業者、市が一体となって木質バイオマス発電所を設立しました。

燃料確保のために、搬出費や処分費がかかるだけの木材を燃料代として買い取る画期的な仕組みをつくりました。これまでは山に放置された木材もあり、土砂災害の原因になっていたと言います。かつては「森林のゴミ」として年1億円かけて燃やしていた端材は、真庭市の電力をまかなう木質バイオマス発電の燃料に変貌を遂げました。

現在、発電所は24時間、年330日稼働しています。この発電所の出力は1万キロワットで、市役所や小中学校など公共施設83カ所と、民間施設に電力を供給しています。
真庭市のエネルギー自給率は約12%(14年度)から、約32%(20年度)に大幅に上昇した。CO2排出量も発電所だけで、年間5万4000トン削減しました。

一方で、課題は、2035年に迎えるFIT(固定価格買い取り制度)の終了に伴う、売電価格の低下です。今まではFITで一般的な価格より高い価格で売電していましたが、FIT終了後の価格は3分の1に下がる見込みです。そうした背景から、FIT後にも事業を継続していくためには、バイオマス発電に係る運営費用を圧縮していくことが必要になってくると想定されます。

そこで、真庭市は2基目のバイオマス発電所の建設を検討しています。新たにFITを活用できる発電所を増設し、燃料となる木材の買い取り価格の下げ幅を緩和することで木材業者などの負担を抑えようとするものです。また、買い取り価格を下げても納入業者が利益を捻出できるよう伐採コストを下げる仕組みをつくることも検討しています。

こちらもやはり持続可能な仕組みづくりが不可欠と言えます。そこで最後に、今回、持続可能な都市構築を目指し何十年にも渡って続けられた取り組みが評価されたフィンランドのラハティ市の事例をご紹介します。

欧州グリーン首都賞、フィンランドのラハティ市の事例

欧州グリーン首都賞は欧州委員会が2008年に創設した賞で、環境改善と持続可能な都市生活を牽引する都市を毎年表彰しています。フィンランド南部にある湖畔の街、ラハティ市は、首都ヘルシンキから北東約100kmに位置し、人口約12万人ほどです。これまでに欧州グリーン首都賞を受賞した都市のなかで最も小さく、最も北にある街です。

同市は石炭使用を廃止しており、2025年までにカーボンニュートラルに、2050年までに廃棄物ゼロの循環型経済都市となることを目標としています。例えば、家庭ごみの99%以上をリサイクルしています。また、暖房にはリサイクル燃料と地元の認証を受けた木材を使用しています。現在、CO2排出量は1990年と比べて70%削減しています。

ラハティ市はスポーツの街として世界的に有名で、これまでにFISノルディックスキーワールドカップを7回開催し、世界記録となっています。今年1月に開催されたFISノルディックスキーワールドカップ・ラハティ大会は、環境保護の認定を受けた大会で、グリーン首都の年間プログラムの一つでした。同大会の特別テーマは安全と衛生で、観客へのチケット販売はなく、飲食はすべて環境に配慮したリサイクル・堆肥化可能な段ボールを使用した容器で提供され、ごみはすべてリサイクルされました。

特に興味深い取り組みは、市民一人ひとりが移動手段で排出取引できる世界で初めての都市であることです。サステナブルな交通手段である徒歩や自転車、公共交通機関を人々が選択することを推奨しており、「シティスキー」の事例もあるように、スキーも移動手段のひとつになっています。

シティスキーとは、市が無料でスキーを貸出し、スキーで市内移動できるものです。FISノルディックスキーワールドカップ・ラハティ大会が始まった1月22日から試験導入を開始しました。スキーはフィンランドで幅広い世代に親しまれています。

フィンランド・ラハティ市がヨーロッパの2021グリーン首都賞を受賞 出典:Visit Finland(フィンランド政府観光局)

このようにラハティ市は、カーボンニュートラルと廃棄物ゼロの循環型経済都市を目指して、街の特色を活かした持続可能なモビリティの促進やイベント開催などを市民とともに実現しています。

今回は、北欧を中心とした海外の先進的な事例と、国内の都市部・地方の事例をご紹介いたしました。2050年のカーボンニュートラルに向けて、環境と経済を両立させ、持続可能な街のあり方を実現していきたいですね。444自治体がそれぞれの街の特徴を活かしてゼロカーボンシティに取り組むことで、地域の良いところを再発見できるきっかけとなり、結果として地域の活性化につながることを期待します。

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