風力発電の最新の国内動向や、課題と解決策について
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三菱商事の洋上風力の入札案件や豊田通商の陸上風力開発など、風力発電関連のニュースが多く取り上げられています。再生可能エネルギーとして日本では太陽光に次ぐ導入ポテンシャルがある風力発電の最新の国内動向をご紹介。また、課題や解決のための取り組みについても取り上げます。
風力発電のポテンシャルとは
風力発電の現在の累積導入量は458万kw、2574基(2021年12月末時点)です。これは日本の発電エネルギー全体の中で1%程度です。ただ、その導入量は年々増えています。(以下図参照)

日本の風力発電導入量 出典:風力発電協会
カーボンニュートラル社会の実現を目指す2050年までに時間軸を伸ばすと、その導入ポテンシャルは高位シュミレーションで7000万kwにまでのぼります。

出典:環境省
陸上風力は安定的に風が吹くところや、自然環境や景観上問題が起こりにくい所などの適地限られますが、洋上風力は排他的経済水域世界第6位という海に囲まれた日本の立地を生かすことができ、大量導入が可能です。また、将来的なコスト低減による国民負担の低減効果や、地域社会の活性化や雇用の増加といった経済波及効果が大きいことから、「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札」と位置付けられています。
上記の図を見ると、中でも洋上風力の浮体式の導入ポテンシャルが高いことがわかります。日本の海域は遠浅が少ないこともあり、欧州で普及する着床式よりも浮体式の普及が期待されています。環境省によると、全国の洋上風力発電導入ポテンシャルの29%を九州エリアが占めており、次いで北海道エリア(26%)、東北エリア(14%)となっています。
政府は2020年12月に「洋上風力産業ビジョン」を取りまとめ、年間100万キロワット程度の区域指定を10年程度継続し、2030年までに1000万キロワット、2040年までに3000万~4500万キロワットまで拡大する導入目標を掲げています。
風力発電の直近の国内動向とは
企業の動向として、トヨタ通商や三菱商事の事例をご紹介します。また、政府の動向としては、日本版セントラル方式の検討が本格化しています。
トヨタ通商などによる国内最大級の陸上風力発電設備が2023年から稼働
北海道北部の稚内市から幌延町にまたがる地域で、トヨタ通商が5月に完全子会社化した国内風力最大手のユーラスエナジーホールディングスや、コスモエコパワー、Looopがそれぞれ発電を行います。2023年から稼働予定で、発電能力は54万キロワット。これにより北海道内の風力発電量は約2倍に増える見込みです。
また、国の補助金も活用し、送電網や蓄電池を合わせて開発することも特徴的です。大手電力事業以外ではまだ数が少ない事例となりますが、発電と送電を一体で整備し、再生可能エネルギー普及の課題である送電網の強化につなげるということです。将来的には北海道の風力で発電した電力を首都圏にも供給する方針です。
洋上風力3海域で三菱商事系が、売電価格「11.99円」で入札
2021年12月に、秋田県沖の海域と千葉県銚子市沖の海域で、洋上風力発電の公募を実施されました。国が発表した公募結果によると、三菱商事を中心とする事業体が3海域で全勝しました。その理由は、売電価格が1kw時あたり11.99~16.49 円であったことです。政府が設定した上限価格29円を大きく下回ったことで、メディアでも大きく注目されました。
当事業の本格導入は2028年~2030年を予定しています。政府は発電コスト(着床式)を2030~2035年までに8~9円/kWhにする方針です。また、風力発電が盛んな欧州では一般的な10円未満に迫る水準となっています。今回の入札によってそれらの水準に近づいてきたことになり、今までの参入ハードルを下げることになった事例といえるでしょう。
日本版セントラル方式の検討が本格化
セントラル方式とは、ヨーロッパでは主流となっている入札の仕組みです。国が一括して事前調査を実施した後に、事業者に入札をかけることで、複数の事業者による、風況や海底地盤等の洋上風力発電設備の基本設計に必要な調査項目のほか、環境影響評価で事業者が共通して行う項目についての重複実施が必要なくなるため、効率的にコスト削減をはかることができます。
そのため、導入目標に向けて案件形成を加速化していくことができます。政府は日本版セントラル方式の議論を進めていますが、費用負担の在り方についてなどの課題も残っています。
日本ならではの風力発電の課題とは
風が吹くことで発電することが特徴ですが、一方で台風のような強すぎる風であると、発電施設が破損する恐れがあります。そのため台風が多い日本で故障のリスク高いと言われています。
風力発電機には10,000点以上の部品が使われており、メンテナンスが大切です。ただ、部品の多くを輸入に頼っている現状です。そのため、故障が起きると設備を止める必要があり、その間の設備利用率が低下します。安定した発電を行うためには日々の点検で故障のリスクを最少にする必要があります。このように、保守や維持運営にコストがかかり、さらにはそうした管理やメンテナンスをする人材が不足しているという現状があります。同時に海外製の発電機や部品が多いので、サプライチェーンの問題もあります。
また、洋上風力は陸上に比べて機械を大型化できるというメリットがある一方で、その製造や設備にかかるコストが高いという点があります。
風力発電の直近の国内動向とは
そこで、このような課題を解決するために自治体や企業によって産業の創造の動きや新しい機会が開発させています。今回は、北九州市とアルバトロス・テクノロジー社についてご紹介します。
洋上風力関連の総合拠点を目指す北九州市の取り組み
北九州市では、部品製造の内製化からメンテナンスまで、洋上風力関連の総合拠点を目指しています。新しい産業として根付かせるために研究・開発や人材育成ができる企業などを積極的に誘致するの取り組みを行っています。
北九州市は、平成28年8月より北九州港内の水域(約2,700ha)を対象に、洋上風力発電事業者の公募を開始しました。同市は、響灘地区の広大な産業用地や充実した港湾施設などのポテンシャルを活かし、産業の裾野が広く雇用創出効果が高い風力発電をターゲットに据え、あらゆる機能が集積した「風力発電関連産業の総合拠点」の形成などを目指した「グリーンエネルギーポートひびき」事業を22年度より推進しています。総事業費は約1,750億円、5メガワット級の洋上風力発電施設を最大44基設置し、34年度より着工し、順次運転が開始される予定です。

総合拠点イメージ 出典:北九州市
風車はナセル、タワー、ブレード及び基礎といった重厚長大な部材で構成されており、その荷揚げ、運搬・保管、事前組立や洋上への積出しを安全で効率よく行うには、高い耐荷重性を備えた荷さばき地と岸壁が不可欠となります。これらを備えたものが「基地港湾」です。現在、本市では、総合拠点の基盤となるインフラで、主に「風車積出拠点」機能に必要不可欠な「基地港湾」の整備を進めており、令和2年度からはその一部を国の事業として国が整備することになりました。基地港湾が響灘洋上ウインドファーム事業で利用されることにより、洋上風力発電に関わる新しい産業が基地港湾及びその周辺に創出されることが期待されています。
垂直軸型風車開発のアルバトロス・テクノロジー、2040年に実証実験
アルバトロス・テクノロジーは2012年創業のベンチャー企業です。浮体式の垂直軸型風車(Floating Axis Wind Turbine:FAWT)の開発に取り組んでいます。2022年9月14日、総額1億円の資金調達を行い、小型海上実験の準備を開始したと発表しました。
アルバトロス・テクノロジーは2012年創業のベンチャー企業です。浮体式の垂直軸型風車(Floating Axis Wind Turbine:FAWT)の開発に取り組んでいます。2022年9月14日、総額1億円の資金調達を行い、小型海上実験の準備を開始したと発表しました。

出典:アルバトロス・テクノロジー
傾斜しても回転性能が低下しにくく、最大出力時に20度までの傾きを許容できるといいます。こうした特徴から、強風時などに垂直不動を維持するための大型浮体が不要です。また、クレーンを使わずに組立・海上設置が可能なため、水深の浅い港も基地港にできます。結果、製造・設置・保守といった総合的なコストの低減を図ることができるということです。
さらに、発電機も含めて100%国内調達が可能なデザインだといいます。先述したサプライチェーンの問題やメンテナンスの人材不足の課題解決にもつながります。風車産業の国産化による国内経済への還元にもつなげていきたいということです。
今後の展開として同社では、2024年度に小型機の海上実験を開始する予定としており、今後の大型機の海上実証プロジェクトに繋げていきます。大型機で実証済みとなれば、商用機のプロバイダーとして風力発電事業社らと提携し、国内外の洋上風力入札に参加できるようになるということです。
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