日本はポテンシャルが高い!?地熱発電を地域観光や企業の自家発電に活用
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電力高騰や原発再稼働などがメディアで取りざたされている電力業界。カーボンニュートラル社会に向けて、これから考えれることは何か。今回は、日本にはまだポテンシャルのあるクリーンエネルギーの一つである地熱発電を取り上げ、国内外の事例をご紹介します。
地熱発電とは、導入量や発電コストなど
地熱発電は、マグマにより生じた高温の蒸気を利用し、タービンを回転させて電気を作る発電方式です。CO2をほとんど出さずにエネルギーを作り出せることや、エネルギー源が枯渇しないこと、発電量が昼夜、年間で変動することもなく安定しているといったメリットがあります。
地熱発電の歴史は長く、1904年にイタリアで地熱発電実験が成功したところから始まります。日本では1919年に掘削が初めて成功し、1966年に日本初となる地熱発電所の運転が開始されました。その松川地熱発電所(岩手県)は、50年経った今も稼働しています。寿命が長く、利用率が高いのも特徴です。大分県には、11万kWと国内最⼤の発電設備容量を誇る八丁原発電所(写真参照)があります。

出典:大分県
現在、導入量は0.7GWで発電コストは16.7円となっており、今後も横ばいとなる予想です。地熱発電は全体の電源構成を示すエネルギーミックスに占める割合が小さく、2019年時点ではわずか0.2%にとどまっています。2030年度時点では1%程度を見込んでいます。
地熱発電の導入が進まないのはなぜか
日本はアメリカインドネシアに次ぐ世界第三位の地熱資源国です(以下図参照)ですが、設備容量でみると、日本は8位にとどまっています。このように、ポテンシャルが大きい割に導入が進んでいないのはなぜでしょうか。

出典:資源エネルギー庁
その背景には、発電設備を作るための調査や開発に莫大な時間とコストがかかるということがあります。また、開発に適した場所であるにもかかわらず、国立公園や温泉地といった建設するハードルの高さや開発に制限が課せられるケースが多いことは地熱発電における導入拡大の足かせになっています。
また、技術的な課題としては二酸化ケイ素や炭酸カルシウムなど、地中のお湯に含まれている物質(スケール)が沈着することで、生産井のパイプが詰まることがあります。一方、世界では地熱発電へ投資が進んでおり、日本の技術が海外へ流出することが懸念されています。
そのような中でも、直近地熱発電を導入した国内の事例を二つご紹介します。
奥飛騨温泉郷に地熱発電所!?熱水は温泉に無償提供
2022年11月30日、岐阜、長野県にまたがる焼岳の地熱を活用した奥飛騨温泉郷中尾地熱発電所が、高山市奥飛騨温泉郷中尾に完成しました。12月1日から運転を始めています。
2013年に計画がスタートし、2020年に事業化。中部電力グループのシーエナジーと東芝エネルギーシステムズが共同出資した2社による特別目的会社「中尾地熱発電」と、地元の宿などに温泉水を供給する「中尾温泉」が事業契約を結びました。地表調査を進め、必要な蒸気量が確認できたため本格的に建設がスタートしたのです。
当事業では「フラッシュ方式」を中部地方で初めて採用しています。フラッシュ方式とは、地熱発電の主な発電方式のひとつで、地下のマグマの熱エネルギーを利用して電気を起こします。主に200℃以上の高温地熱流体での発電に適しています。地熱流体中の蒸気で直接タービンを回し、発電に使われた後の蒸気は、冷却塔で冷やし水になり地下に戻します。地熱資源は火山性の地熱地帯で、マグマの熱で高温になった地下深部(地下1,000~3,000m程度)に存在します。
中尾温泉では、これまで地下約400メートルから温泉水をくみ上げていた井戸の一部は停止し、中尾地熱発電が新たに地下1100~1500メートルの2本を掘削しました。発電で使用しない熱水は地下に戻さず、中尾温泉に無償で提供しています。このように「温泉と発電事業の共存共栄モデル」として期待が寄せられています。
今回の発電事業のメリットは3つです。
- 二酸化炭素をほぼ排出せず、昼夜や天候にかかわらず安定した発電量を見込むことができる
- 中尾温泉側は井戸の維持管理費を削減できる
- 従来より深い場所からくみ上げる熱水であるため、温泉の一部の有効成分が高濃度になる
今回の総事業費は約45億円。年間の発電量は約1500万キロワット時で、一般家庭4千世帯分に相当。全て中部電力パワーグリッドに売電します。中尾温泉の内野政光社長は「温泉と地熱発電の共存は、地元の夢と希望を乗せた大事業。末永く続けていきたい」と発言。温泉地と相性が良いのが地熱発電です。コロナからの観光復興としても、このような取り組みが活性化することが期待されます。
新日本科学の自家発電設備(地熱発電)の系統連系用特高変電所をNECファシリティーズが建設
新日本科学はメディポリス指宿(鹿児島県指宿市)に所有する東京ドーム77個分という広大な敷地において、地熱発電所の稼働における温室効果ガスの削減や、3種類のホテルと連携したメディポリス事業を行っています。
現在、1500kwの地熱発電を高圧(6600V)連系で実施しています。さらに今回、新たに地熱発電所(温泉発電)625kwを建設。NECファシリティーズは、当事業において、系統連系用特高変電所の建設を受注し、本年10月に竣工しました。
今回、電力会社と系統連系を行う上で、高圧(6,600V)を特高(66,000V)に昇圧して系統連系を行う必要があり、工場の施設運営等で電力設備の構築ノウハウを豊富に有しているNECファシリティーズにて設計・施工を行うことになったということです。
次に世界の動向を見ていきましょう。今回は、カナダとアメリカの事例をご紹介します。
カナダやアメリカの地熱発電スタートアップ
新日本科学はメディポリス指宿(鹿児島県指宿市)に所有する東京ドーム77個分という広大な敷地において、地熱発電所の稼働における温室効果ガスの削減や、3種類のホテルと連携したメディポリス事業を行っています。
カナダのEavor社
Eavor社は、クローズドループ地熱利用技術を開発するカナダのスタートアップ企業です。同技術は、地下にループを設置し、内部に水を循環させることで、地下の熱水や蒸気が十分に得られない地域でも効率的に熱を取り出すことが可能です。このため、幅広いエリアでの開発が可能であり、掘削後に地下の熱水や蒸気の不足により開発が中止となるリスクを回避できます。
また、本技術を活用した発電は、ベースロード運転だけではなく、低需要時に地下に蓄熱し、高需要時に蓄熱したエネルギーを電力に変換する負荷追従型の調整力電源としての機能も備えています。これらのことから、将来的にエネルギー業界のゲームチェンジャーとなることが期待されています。10月には中部電力が出資を発表しています。
アメリカのFervo Energy社
2017年に設立したFervo Energy社(アメリカ、テキサス州)です。同社は水平掘削や分散型光ファイバーセンシングなどの技術を利用して、地表下に存在する高温の岩石の貯留層から熱を取り出して蒸気をつくって発電します。
これまでは熱源探索の不確実性が高かったのですが、低コストで使えるセンサー技術等の発達で、精度の高い探索ができることによってヒット率が格段に向上し、事業リスクが大きく下がっているということです。
Googleやビルゲイツも注目しており、8月には1億3800万ドル(約188億円)を調達したと発表。10月には大手電力事業者とPPA契約を締結し、カリフォルニア州の300万世帯に電力を供給します。

出典:Fervo Energy社
アメリカでは新たなベースロード電源として地熱発電に着目しています。米国のDOE(エネルギー省)は2021年4月、地熱をより効率的に採取するための技術開発に向けて1,200万ドル(13億円ほど)を充てることを発表しているなど、国土の広さを活かして将来的にクリーンエネルギーを大量導入する戦略が垣間見えます。
まとめ
最後に再び国内の取り組みに話を戻します。全国チェーン「業務スーパー」の創業者である沼田昭二氏は、日本の地熱発電のポテンシャルに注目し、2016年に起業しました。現在、九州地方などで発電設備を建設しています。稼働開始は2024年4月の計画で、8000世帯分の電力を生み出し、年間で約14億円の売電収入を見込んでいるということです。事業費は100億円にも上ると言われています。
開発や地表設備など日本の技術力は高いと言われています。長い時間と大規模投資が必要な事業ではありますが、今後のわが国のエネルギー自給率を考える上でも、ポテンシャルがあるにも関わらず活かしきれていない地熱発電にこれからも注目をしていきたいと思います。
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