世界で太陽光パネル廃棄に関する議論が加速。日本は24年にリサイクル義務化検討へ

2022年09月08日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

世界で太陽光パネル廃棄に関する議論が加速。日本は24年にリサイクル義務化検討への写真

今後、寿命を迎えた太陽光パネルの大量廃棄が起こるという懸念が世界中で広がっています。日本では、環境省が太陽光リサイクル義務化の検討にはいりました。そこで今回は、現状のリサイクル設備やパネル回収システムについてご紹介しながら、今後の廃棄・リサイクルの動きについて考えていきます。

なぜ大量廃棄が起きるのか、リサイクル義務化の流れ

日本では、太陽光発電(PV)は、1990年代後半から設備導入の普及が始まりました。2011年の東日本大震災を契機に太陽光発電への注目が高まり、2012年には住宅用太陽光発電システムの国内導入件数が100万件を突破。さらには同年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)が導入されたことで一気に加速しました。IEAの2021年の年間太陽光発電設備導入量データによると、日本は世界4位で78.2GWとなっています。

出典:IEA「スナップショット2022」

しかし、このように広がった太陽光パネルが25年~30年の寿命を迎えて、大量に排出される時代が迫っています。NEDOによると排出量のピークは2035~2037年頃(以下図、参照)で、年間約17~28トン程度となるということです。これは産業廃棄物の最終処分量の1.7~2.7%に相当し、最終処分場がひっ迫される恐れがあります。

出典:環境省

そこで、環境省は5月に使用済み太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入りました。2030年代後半を見据え、適切な処理制度をつくるのが狙いです。建設リサイクル法を改正して対象品目に追加し、解体業者などに再資源化を求める案を軸に制度設計を進めます。太陽光パネルに特化した新法制定も視野に入れており、法案は2024年の通常国会にも提出したい考えです。

ではその処理・廃棄に関わる費用はどのように賄うのでしょうか。太陽電池モジュールは長期間の使用に耐えられるように封止剤で固めた非常に強固な構造で、リサイクル時は封止材の分離・除去が最も困難といわれています。事業者は使用済み太陽光発電システムを処分・廃棄する際に、リサイクル処理費用の他に、回収費用やPVシステムの撤去費用などが発生するため、その費用の確保が必要です。

しかし2019年に総務省が調査したところ、実際に廃棄費用を積み立てていた発電事業者は16%しかいないことがわかりました。そこで、7月から事業用の太陽光発電設備が使用済みになった際の廃棄等費用を積み立てることが義務化されました。

このように動きが加速している太陽光発電の廃棄、リサイクルですが、リサイクル施設やその処理方法はどのようになっているのでしょうか。

リサイクル施設の広がりと処理方法について

NEDOの2014年度~2018年度に行われた「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」では低コスト分解処理技術の可能性がいくつか示されました。このことで各社リサイクル設備に関する事業化が促され、産業廃棄物処理業者の参入が進みました。

JPEA(太陽光発電協会)では、適正処理(リサイクル)可能な全国の産業廃棄物中間処理業者35社の一覧を公表しています。(ご参考: https://www.jpea.gr.jp/wp-content/uploads/2110%E7%94%A3%E5%BB%83%E4%B8%AD%E9%96%93%E5%87%A6%E7%90%86%E6%A5%AD%E8%80%85%E4%B8%80%E8%A6%A7%E8%A1%A8.pdf )また、ここ数年で国や都道府県では太陽光パネルのリサイクル促進に向けて補助金事業が進んでいることも後押しの要因になっています。

リサイクル処理方法はいくつかありますが、代表的な設備ではどれも、処理後はジャンクションボックス、アルミ、ガラス、バックシートの4つに分離されます。その後、素材ごとにリサイクルもしくは回収・処分されます。ガラスの比重は7割程度と多いので、二次製品化(発泡ガラスや防草材)など、ガラスをリサイクルする用途や技術への開発・研究も進められています。

リサイクルに関して政府としても、ここ数年でガイドラインなどの整備などを進めてきていますが、まだ現状は事業者側からすると廃棄に関する手続きも情報が不足しておりどこにお願いすればよいのかわからずたらい回しになるケースがあり不法投棄が起こる懸念や、施工業者(ハウスメーカーなど)への問合せが多くなっていますが各社対応しきれていない現状があります。他にも、廃棄に必要となるパネル情報が海外製であるために入手が困難なケースなどもあります。特に、リサイクル事業での効率的な回収・運搬方法は大きな課題です。

海外でも太陽光発電の大量廃棄の懸念は同じくあり、その問題提起や解決に向けた動きが加速しています。再エネ先進国の欧州では早くから太陽光パネルリサイクルの取り組みに着手しており、今回はその事例についてご紹介します。

欧州の「PV CYCLE」の概要とリサイクルスキームについて

PV CYCLEは、使用済み太陽電池モジュールの自主的な回収・リサイクル・適正処分システムの構築を目的とした非営利団体です。欧州太陽光発電協会(EPIA)、ドイツソーラー産業協会(BSW)、太陽電池モジュールメーカー6社によって2007年設立、2010年より活動を開始しています。

EUでは使用済み太陽電池モジュールを含む廃電気・電子機器の発生抑制、およびリサイクルの促進による埋立処分量の削減等を目的に、2012年改正WEEE指令が制定されました。PV CYCLEは、改正WEEE指令に基づく各国法に準拠した処理業者の一つであり、欧州市場における太陽電池モジュールメーカーの90%以上が加盟しています。

欧州最大の太陽光発電導入国であるドイツでは、太陽電池モジュールメーカーが第三者機関に対して、モジュールの処理を委託することが可能と国内法で定められています。そのため、メーカーは国内法に準拠した処理業者を選択し、使用済太陽電池モジュールの処理を委託することが可能となっています。

PV CYCLEドイツでは、排出された使用済太陽電池モジュール(住宅用)の枚数が、40未満の場合には、自治体に設置された回収ポイントへの輸送までを所有者が手がけ、それ以降のプロセスはPV CYCLEが実施します。一方で、排出されたモジュール(住宅用)が40枚以上または非住宅用モジュールの排出の場合には、太陽電池モジュールの解体・撤去までは所有者が、輸送以降のプロセスはPV CYCLEが実施する仕組みとなっています。

運営費用としてPV CYCLEでは、会員企業(製造業者等)から会費を徴収し、太陽光発電設備の回収から処理までを担っています。

例えば、住宅用の太陽電池モジュールが廃棄された場合、住宅から回収ポイントまでの輸送費用は所有者が負担しますが、回収ポイントからリサイクルプラントまでの輸送費用、およびリサイクルにかかる費用は、WEEE情報等管理団体(Clearing House)が計算し、太陽電池モジュールメーカー等が負担しています。なお、将来の廃棄処理費用についての保証額として、各太陽電池モジュールメーカーが負担する費用は、「住宅用太陽電池モジュールの販売重量×回収率(予測値)×重量あたり必要費用」に基づいて算出されています。

その一方で、非住宅用の太陽電池モジュールは、発電事業者と太陽電池モジュールメーカーの間で、その回収・リサイクル・適正処分に係る費用負担を取り決めことが可能となっています。しかしながら、その実態としては、通常の産業廃棄物と同様に、発電事業者が費用を負担するケースがほとんどとなっています。

このようなPV CYCLEの事例は世界各地で参考にされてきました。次に国内の事例をみていきましょう。

全国初、福岡県で効率的な回収システム

福岡県は太陽光発電施設導入容量で全国4位(平成29年3月末時点)です。それらの排出のピークを2036年と設定し、その年間排出量は1万トン(Paypayドーム約25個分)を超えると予想しています。

全国のモデルケースとなるべく、平成30年7月に設立された福岡県太陽光発電(PV)保守・リサイクル推進協議会では、太陽光パネルの廃棄について、課題を以下のように整理しています。

  1. 効率的回収スキームが未確立⇒埋め立て処分(資源未循環)、不法投棄の懸念
  2. 有害物質情報が不明瞭である⇒埋め立て処理費の高騰、不法投棄の懸念
  3. (低圧事業者の)事業実態が不明であるため、点検・保守の実態が不明⇒リサイクル推進の障壁、放置による火災の恐れ

そこで、使用済太陽光パネルを効率良く回収・リサイクルするには、「点検・保守(メンテナンス)事業者、産業廃棄物収集運搬業者、リサイクル事業者等と全体マネージメント機関が連携したスキームを作ることが必要」とし、2021年7月に全国初となる「廃棄太陽光パネルスマート回収支援システム」を開発しました。

このシステムを利用することで、メンテナンス業者が使用済太陽光パネルの保管情報をクラウド上に登録し、収運業者がルート回収を行い、リサイクル業者へ収運することが可能となります。(以下図参照)

出典:福岡県

各セクターのメリットは以下のように整理されています。

<各メンテナンス業者>

収集運搬業者、リサイクル業者への手配を支援ソフトにより一元化して行える。(産業廃棄物の処理に必要な電子マニフェスト(管理票)の手続も一括で実施可能)

<収集運搬業者>

点在するパネルの保管場所・量などの情報を事前に把握し、回収ルートを最適化することで、収集運搬を効率化できる。ルートの自動検索機能で回収ルートが地図上に表示され、効率的に保管場所を回れるようになる。

<リサイクル業者>

まとまった量のパネルの搬入日時について見通しが立ち、業務を効率化できる。

当システムの利用については、協議会への加入が必要となっており、会員企業を随時募集しています。福岡県ではシステムの活用により、点在する廃棄パネルを効率的に回収し、再資源化を図り、循環型社会を形成することを目指しています。

まとめ

東京都では住宅への太陽光パネル設置義務化も検討されており、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて今後も太陽光パネルの導入は進められていくでしょう。持続可能な自立型電源として有力な太陽光発電がライフサイクル全体でサスティナブルになるよう、法整備やリサイクル回収システムの構築は必須です。

埼玉県では「住宅用太陽光パネル回収事業」が、東京都でも「太陽光パネルの高度循環に向けた実証事業」が過去実施されています。直近8月には東北電力が、2021年1月に設立したPV CYCLE JAPAN内の実行機関「地域収集モデル検討委員会」の委員長に就任し、委員会における活動を通じて、使用済太陽光パネルのリユース・リサイクル推進に向けた取り組みを開始することを発表しました。

引き続き、このような取り組みが全国各地で加速していくことが期待されます。

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