家庭向け蓄電池市場の広がり、海外勢やサブスク型とメーカー・販売方法も多様にvol.1
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2021年08月31日
一般社団法人エネルギー情報センター
2009年からはじまった余剰電力買取制度。10年を迎えた2019年には53万件、2023年までに計165万件が制度対象外になると資源エネルギー庁が公表しています。そこで電力の自家消費等の側面から蓄電池の導入が進んできました。今回は2回に渡り、家庭用蓄電池の今後について、諸外国の事例や企業のサービス事例も参考にしながら考えていきます。vol.1では、テスラやファーウェイなど海外メーカーも増える現在の国内の蓄電池市場の状況について、整理していきます。
国内需要は2023年1200億円規模へ
以下は年度ごとの家庭向け蓄電池の出荷実績の推移です。東日本大震災後の2012年、非常用電源の確保や電力不足の解消を目的に家庭用蓄電池の導入を支援する補助金1住宅あたり上限100万円の補助金が出ることになったことを契機に、販売台数が大きく伸びました。
しかし、同制度が2015年度をもって廃止され、蓄電池のみを対象とする補助制度がなくなったことから、2016年度には少し落ち着きを見せました。その後、2009年に開始した太陽光発電の余剰電力買取期間の満了が始まること※から再び需要が拡大しました。2020 年度は、出荷台数が12.7 万台(対前年 110%)となっています。
※住宅用太陽光発電の余剰電力は、固定価格での買取期間が10年間と定められていることから、2009年11月に開始した余剰電力買取制度の適用を受けた方については、2019年11月以降、10年間の買取期間を順次満了していくことになります。
また、以下は定置用蓄電システム市場概要の国際比較の図です。人口面を加味しても、日本の家庭向け蓄電池の導入は進んでいるといえそうです。(各国の算出条件は同一ではありません。)諸外国の取り組み事例については、vol.2にて記載いたします。
さて、FIT制度を終えた後も電力会社を選んで売電は可能です。しかし、制度開始時に発電を始めた場合の買い取り価格の48円に比べて、買い取り相場は1キロワット時あたり7~9円ほどと大幅に安くなってしまいます。旧一般電気事業者ではなく、新電力の中には電気を高額で買い取ってくれる事業者もいますが、それでもFIT価格には及びません(ご参考:https://price-energy.com/solar_plan)。
買取価格が大幅に下がれば売電より自家消費のメリットが大きくなり、太陽光で発電した電気の自家消費を夜間にも行うためには蓄電が必要になります。このため太陽光発電システムのパワーコンディショナーの買い換えや新規の設置においてハイブリッド蓄電システムが提案され、市場の活性化につながっています。今後は、太陽光発電システムと組み合わせて蓄電池を導入するケースも増加すると期待されています。
そのような背景から、2019年3月に、株式会社日本能率協会総合研究所が提供するMDB Digital Searchでは日本国内の家庭用蓄電池市場を調査し市場規模を推計し、2023年に1200億円規模になると予測しました。(図参照)
さらに、「定置用蓄電システム普及拡大検討会」は2021年2月に、下記2点を仮定し、2030年までの蓄電システム導入台数を予測しています。
- 新築住宅への蓄電システム導入率が徐々に増加すること
- 戸建て住宅ストック及び既設PVストックに対する蓄電システムの導入率が徐々に増加すること
その結果、「新築住宅及び既築住宅向け蓄電システム導入台数を合計すると、2019年実績は年間11万台規模であった市場は、2025年には年間26万台(累積158万台)、2030年には年間35万台(累積314万台)規模に拡大するとの見通しとなった(リプレースは除く)」と言います。(図参照)
また、「PV導入量に占める蓄電システム導入量(ともに累積)の割合は、2025年で44%、2030年で77%程度」としています。
このように、順調に成長が期待されている家庭向け蓄電池。次はその特徴やメリット・デメリットについて、整理していきます。
家庭向け蓄電池の特徴とは、価格やメリット・デメリットについて
家庭向け蓄電池の設置費用の相場は、容量などにより異なりますが、本体プラス工事費で、約80〜200万円といわれています。家庭向け蓄電池では、蓄電容量が5~7kWhのタイプが一般的です。また製品寿命の目安は10〜15年くらいです。
蓄電池の導入メリットは、家庭の電気エネルギーを効率良く使えるという点があります。電気料金は今後も高くなっていくという見方が一般的です。夜間に蓄電池に電気をためて、日中ためた電気を使うというように、電気を使う(買う)時間帯をずらすことで電気料金を抑えられるのは経済的なメリットとなります。また、蓄電した電気は停電時にも使用できるので、非常時に役立ちます。災害時は停電も発生し、場合によっては数日間電力が復旧しないケースも考えられます。このようなときも、蓄電池があれば緊急時の生活への影響を少なくできる可能性が高まります。近年は、台風や大雨による災害や、2018年9月に北海道で起きたブラックアウトなど、停電のリスクは高まっている中で、蓄電池の導入を検討する人は増えているようです。
デメリットとしては、やはりまとまった初期費用を用意しなければならないことが挙げられます。蓄電池の購入費用は前述した通り、100万円~200万円程度かかると言われています。加えて蓄電池は15年前後の長期運用が前提のため、故障のリスク(メンテナンスやリプレイス)も考慮しなければなりません。仮に耐用年数まで故障がない場合でも、初期費用を償却できない可能性が高いです(家族構成やライフスタイル、システムによる発電量や屋根の形、方角など様々な要因が絡んできます)。また、蓄電池を導入するには、一定の設置スペースを確保する必要もあります。この初期費用のハードルを解決する、サブスク型のサービス事例をvol.2にてご紹介します。
家庭用蓄電池で国内の主力メーカーにはシャープ・京セラ・ニチコン・パナソニック、オムロン、伊藤忠商事などがあります。一方、最近は価格も安く性能もよい海外メーカーも日本市場に参入してきています。
テスラやファーウェイなど海外メーカーの日本市場へ参入
その代表例はテスラ社の「Powerwall」です。2020年春から日本でも設置をはじめました。
2019年に自民党が経産省にかけあい、家庭向けで国内メーカーの半額と圧倒的に安い米テスラ製の日本での販売が解禁されました。それが、日本国内の価格競争に火をつけると考えたからです。
「Powerwall」の日本での販売価格は13.5キロワット時で99万円です。1キロワット時換算で7万円強となるため、「日本勢の平均とされる18万円前後を大きく下回」りました。テスラはネットでの直販で流通費を浮かす戦略をとっています。一方、国内は三菱総合研究所が調査したところ、設備関係費が1キロワット時あたり15万円の蓄電システムで、卸売業者などに払う流通費は7万円かかっています。
日本だけの話ではありませんが、5月にテスラ社は累計で20万台目の「Powerwall」設置完了を発表しました。この1年間で需要が倍増しているといいます。同社は決算説明会で、今後はPowerwallなしで「Solar Roof(ソーラールーフ)」パネル製品のみを販売することはしないと述べ、太陽光発電と蓄電池をシステムとしてセット販売することを強調しています。
また、太陽光発電でも台頭する中国勢の中で、ファーウェイ社は2020年11月5~6日、明治記念館において「HUAWEIデジタルパワー製品展示交流会」を開催しました。パワーコンディショナーなど太陽光関連機器をはじめ、UPSソリューションやデータセンター向けなどの新製品を幅広く展示し、2日間で1000人を超す来場者を集めました。ファーウェイ社はグローバルでトップシェアを誇るパワコンメーカーとして知られていますが、UPSやスマートフォン関連の蓄電池でもトップシェアを獲得しています。デジタルパワー事業部本部長の張氏は「今回発表した蓄電システムは、長年にわたって他領域で積み重ねてきた経験と技術を、満を持して太陽光発電分野に持ち込んだもの」といいます。
軽量コンパクトで、12,000サイクルの長寿命、97.0%の変換効率といった業界でも指折りの性能を有したハイブリッド蓄電池「LUNA2000」は2021年初旬より国内で販売されています。その他にも、新しい蓄電池モジュールと古い蓄電池モジュールが混在していても互いに影響を受けないといった特徴もあります。数年後にモジュールを増やすことができるので、ライフスタイルの変化に対して、柔軟に対応できる蓄電システムといえます。また、停電を感知すると5秒以内に自立運転モードに切り替わる機能が搭載されており、万一の災害時にも心強い製品です。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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