新型コロナが推し進めたデジタル化とCO2排出の影響を考える

2021年04月11日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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新型コロナウイルス感染症を契機に、世界のデジタルトランスフォーメーションの流れが一気に加速しました。ある観点から見れば、デジタル化は環境にプラスの影響を与える一方で、デジタル化の副作用の一つに環境への影響があります。Facebookは「北極圏の近く」にデータセンターをつくっていますし、マイクロソフトは海中にデータセンターを沈めるなどテックジャイアントと呼ばれる企業でもさまざまな取り組みがされています。そこで、今回は、国内外の取り組みを参考に、プラスの影響とは何か、環境への負荷とは何かについて考えます。

DXは環境にプラスの影響を与えるか

日本経済研究所は、2019年に、「デジタル経済への移行により温暖化ガスは6割減する」というレポートを発表しました。当レポートでは2050年の社会では、具体的には、発電所の発電効率の改善、量子コンピューターなどの実用化で電力消費軽減、乗り物のEV化やライドシェアによる自動車生産の減少、人口減少による公共交通機関の需要減等により温暖化ガスが削減される想定が描かれていました。また、コロナ禍で実体験としてもリアリティがあるデジタル化によるCO2排出削減の効果として、わかりやすい例を以下4つほど上げてみます。

  1. 物の消費…物の消費量(紙の消費量など)を削減することにより、物の生産・廃棄にかかるCO2排出量や廃棄物排出量の削減を図ることができる
  2. 電力消費・エネルギー消費…電力やエネルギーの利用を効率化して消費量を削減することにより、発電・送電等にかかるCO2排出量を削減できる
  3. 人の移動…人の移動を削減することにより、輸送の交通手段に要するエネルギー消費量を削減し、CO2排出量を削減できる
  4. オフィススペースの効率化…オフィススペースを効率的に利用することにより、照明や空調等の電力消費量を削減し、CO2排出量を削減できる

いかがでしょうか。デジタル化が環境にプラスの影響を与えることがイメージできてきたでしょうか。一方で、今後、通信トラフィックの激増やCO2排出源の変化が予見されています。環境省によると、例えば、通信分野では日本においては2030年には現在の総電力の約1.5倍、2050年には現在の約200倍の電力をICT関連機器だけで消費するおそれも指摘されています。

そこで、令和3年度重点施策として環境省は、「急速にデジタル化する社会を見据えた脱炭素イノベーション創発・展開事業」を総務省との連携事業を開始しました。概要は次の通りです。

①委託事業:デジタル分野に関わる大幅な省CO2を可能とする技術実証等を支援する。
②補助事業:地域循環共生圏の構築等に資するもので、既存のAI/IoT/センサー等のデジタル技術を用いてエネルギー削減を促せるソリューションへの支援を行う。

この事業概要の中でも、第三次AIブームにより深層学習によりAIが様々な場面に登場しているが、大量の学習データが必要で著しいエネルギー消費を伴うことが指摘されています。他にも、紙の電子化やSNSの流行により、デジタルデータの保存及び、そのデータの処理や分析作業にも多くの電力や資源が必要です。また、科学技術の研究・発展に欠かすことができないスーパーコンピューターも多くの電力を消費することは事実です。持続可能で脱炭素な社会形成と社会のデジタル化の両立は実現可能なのか、次は具体的な事例を紹介していきたいと思います。

データセンターの役割とその環境への影響を考える

データセンターとは顧客のサーバーやネットワーク機器などのIT機器を設置・収容する場所のことを指します。ITの重要性の高まりや、地震や水害などの自然災害によるリスクへの懸念の高まりにつれ、よりシステムが安定稼働できる施設に機器を設置するニーズが生まれ、そのニーズをかなえるためにデータセンターは生まれました。

電力を最も利用するという点で見ると、世界中のデータセンターで消費されるエネルギーの大部分は冷却用です。この冷却作業には何十億ガロン(アメリカの容量の単位)もの水が必要であり、水の大量消費が気候機器の増幅要因と指摘されています。そこで、クラウド企業やデータセンター事業者が水やCO2排出量の削減に力を入れています。この取り組みの中には再生可能エネルギーへの投資もあります。

アメリカのMicrosoft社では、2018年よりスコットランドのオークニー諸島沖の海底にデータセンターを沈めて試験する取り組みを始めました。輸送用コンテナと同程度のサイズのタンクに864台のサーバー、HDDストレージ、冷却システムなどを設置したという。再生可能エネルギーを作り出す大規模な風力発電施設が近くにあり、海中に設置することにより冷却面で明らかにメリットがあるということで2年間の実験が行われました。2020年9 月に引き上げを行い、高い信頼性と実用性が確かめられた、とのことです。

北極圏へや北極圏に近い国にデータセンターを設置することで、発生する熱を相殺でき、自然冷却を利用してサーバーの過熱を防ぐことができます。冬は平均マイナス20度、夏でも20度以下のこの場所では、普通の空気で十分にサーバー群を冷却することができます。冬には、サーバーによって暖められた空気がオフィスの空調として使われます。アイスランドのVerne Global社や前述した通り、アメリカのFacebook社などがあります。

ドイツのフランクフルトには各国のデータセンターが多く存在しています。Citigroupのフランクフルトのデータセンターでは自然空冷の技術を活用しており、必要な電力を従来のデータセンターの30%にまで引き下げることができ、LEED(環境性評価・認証システム)の最高レベルであるプラチナ認証を受けています。また、NTTコミュニケーションズのフランクフルトデータセンターでは、外気を利用した独自の水冷式空調システムで効率的にサーバールームを冷却しているということをサイト内で紹介しています。

2020年8月にはNEC)とデータセンター内の通信機械設備の空調におけるノンフロンの新冷媒を用いた冷却システムを開発し、共同実験を行ったと発表しました。実験では、従来方式の冷却システムと比較して、空調消費電力を半減できることが確認されたといいます。

日本が誇るスーパーコンピューター「富岳」の役割や特徴について

新型コロナウイルスの治療約候補の探索や、飛沫、換気趣味レーションなどの研究に選考利用されたことでも話題となった理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」が、2020年3月9日に供用が開始されました。

スーパーコンピューターとは、一般的なコンピューターでは解くことができない困難な大規模で高度な計算を処理することができます。ものづくり、基礎科学と応用分野などの研究開発を加速する役割を果たしています。例えば、安全な自動車の開発・設計や、より遠くより早く移動できる一方でより静かでより省エネな航空機の設計、100年後の地球温暖化予測と1時間後の都市の集中豪雨などといった気象予測などで活用されてきました。

日本のスーパーコンピューター「京」の後継として開発された「富岳」は、TOP500で2期連続の首位を獲得した世界最高性能のスーパーコンピューターです。「富岳」が取り組む課題は、下記の通りです。「創薬」、「生命科学」、「複合災害予測」、「気象・地球環境」、「エネルギー利用」、「クリーンエネルギー」、「デバイス・高性能材料」、「ものづくり」、「基礎科学」の9分野であり、さらに、これに加えて、「基礎科学のフロンティア」、「社会経済現象」、「太陽系内外惑星形成」、「神経回路、人工知能」の4つの分野です。

このように、喫緊の課題から先を見据えたテーマまで、日本の科学技術の発展に欠かすことができないスーパーコンピューターの消費電力とはどのくらいなのでしょうか。スーパーコンピューターを動かすためには大きな電力を必要とします。一世代前の「京」の消費電力は、12.65989MW(2011年11月TOP500リストのベンチマーク計測時)で、これは一般家庭の平均消費電力を400Wとしたときのおよそ30,000世帯分に相当します。

それでも電力あたりの性能は世界トップクラスであり、「京」も高い環境性能を持ったコンピューターと言われてきました。さらに、「富岳」ではARMベースのCPUによるスーパーコンピューターであるということが大きな特徴とされています。計算に必要がない、一部の電力をカットするエコモードと、計算を加速するために周波数を上げるブーストモードを搭載しており、これによって、低消費電力と高性能を両立するといった大きな課題を解決し、開発した独自OSにより、超並列処理を高い効率で実現することができているといいます。消費電力当たりの性能ランキングのGreen500では9位となりました。

まとめ

デジタル化とは文脈が異なりますが、2050年までのカーボンニュートラルの世界を実現するにあたり、エネルギーシフトが進められる中で、CO2を排出しないクリーンエネルギーとして注目されている水素も、化石燃料を改質して製造するのが一般的であるため、化石燃料を採掘するときも含めて、製造時はCO2が排出されています。そこで、CCS(CO2回収貯蓄)技術や再生可能エネルギーを利用して製造する技術の開発が進んでいます。

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