次世代エネルギーの目玉である水素と国内各社の最新の取り組みについて
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2021年04月11日
一般社団法人エネルギー情報センター
CO2排出実質ゼロ、枯渇性化石燃料に頼らない脱炭素社会の実現を目指して世界が激しく動く中、次世代エネルギーの主役候補として脚光を浴びている水素。なぜ水素が注目されているのか、普及に向けた課題や、国内の最新の取り組みについてお伝えしていきます。
注目される水素社会。実現に向けた課題とは
水素は、無色無臭の地球上で最も軽い気体であり、水などのように他の元素との化合物として地球上に大量に存在します。その特徴は大きく2つあり、1つ目がさまざまな原料、資源からつくることが出来る点です。2つ目が、エネルギーとして利用してもCO₂が排出されない点です。そのため、クリーンなエネルギーになりえるとして注目を浴びています。
日本の水素エネルギーの導入推進は、2014年4月に策定されたエネルギー基本計画で定められた3E+S(エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合、安全性)と国際化推進、国際市場の開拓と経済成長に貢献するものといわれていますが、この基本戦略等で掲げた目標を確実に達成し水素社会を実現するためには、クリアすべき課題が多くあります。
例えば、海外資源等から大量に水素を調達するための製造、水素発電技術の確立、燃料電池自動車(FCV)やFCバス、エネファーム等における燃料電池システムのコストダウン等です。また、水素タンクや燃料を充てんするための水素スタンド等をはじめとする水素インフラにおいては、各省庁からの規制が多く、実用化するまでに時間がかかるといった問題を抱えています。
そこで、経済産業省が、2019年3月に、「水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~」を発表しました。このロードマップでは、“利活用”の観点からは、車体の価格低減や水素ステーションの整備、CO2フリー水素の活用に向けたカーボンリサイクルの実用化等を、“供給”の観点からは、水素製造コスト価格の安定化、水素液化効率の向上、水電解装置の耐久性向上に向けた技術開発等が取り組み項目としてあげられています。では、国内の各社の動向を見ていきます。
トヨタ、燃料電池システムをパッケージ化したモジュールを開発
昨年12月にトヨタ自動車が発売した燃料電池車(FCV)の新型「MIRAI(ミライ)」。14年に発売した初代モデルと比べると、「燃料電池(FC)システムのコストを半減できた」と開発責任者の田中義和氏が明かしました(3月16日)。田中氏は「ミライは水素が将来のエネルギー源であることを広く認識してもらうためのシンボル。」とも語っています。
トヨタは、年産3万台の実現に向けて、主要部品の設計を変更し、新型ミライの投入に合わせてFCVの生産能力を10倍に増強しました。このことで、次は自社製品に限らず、FCシステムを広く外販していく戦略をとることが可能になりました。
背景には、トヨタがFC関連の特許実施権無償提供など水素社会実現に向けた取り組みを進めてきた中で、様々な業界において、多くのFC製品事業者が自社製品に適合させやすいFCシステムを求めていることが分かったということと、水素サプライチェーンのプラットフォーマーになることが水素社会の実現を加速させる大きな鍵となるということがあったと考えています。
そこで燃料電池(FC)システムをパッケージ化したFCモジュールを開発し、2021年春以降、販売を開始する予定です。このモジュール化により、トラック・バス・鉄道・船舶などのモビリティや定置式発電機など様々な用途のFC製品の開発・製造事業者が容易に活用することが可能となります。
また、16日に、水素社会の構築・拡大に取り組む民間団体「水素バリューチェーン推進協議会」(共同代表者であるトヨタ自動車の内山田竹志会長など)は梶山弘志経済産業相に対し、水素社会実現に向けた政策提言書を手渡すなど、トヨタを中心とした利活用の動きはますます加速していきそうです。
伊藤忠商事、北九州で水素地産地消モデル事業構築を発表
3月12日、伊藤忠商事と日本コークス工業、ベルギー海運最大手のCMBはコークスの製造過程で副産物として発生する水素(副生水素)を船舶燃料として供給する取り組みを始めると発表しました。
3社は2月下旬、九州北部で水素の地産地消モデル構築に向けた共同調査を実施することで合意していました。本プロジェクトは脱炭素化社会実現の一助となるべく、日本コークスの副生水素と、CMBの水素エンジンを柱に、九州北部で水素の需要と供給双方の創出を行い、早期の地産地消型のサプライチェーンの構築を目指すプロジェクトです。
まず2023年度から船舶2~3隻分に相当する年数百トンを海運会社などに提供するとのことです。コークスの製造工程から水素だけを分離して外販する試みは世界的にも前例が少ないということです。伊藤忠は九州での取り組みをモデルケースとして副生水素の活用法を確立し、九州以外の他地域でも展開していくことを狙っています。全国各地の眠れる水素源を掘り起こすことができるか、注目が集まっています。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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