米・バイデン政権の気候変動対策とは?世界、そして日本への影響は?【前編】

2021年02月24日

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バイデン政権の気候変動対策ではどのような取り組みがなされ、どのような効果が期待できるのか、そして世界や日本への影響はどのようなものが考えられるのかについて、2回に渡り考えていきます。

米連邦政府が一丸となって取り組む

バイデン氏は、選挙キャンペーンのときから「THE BIDEN PLAN FOR A CLEAN ENERGY REVOLUTION AND ENVIRONMENTAL JUSTICE」を掲げていました。2020年9月の演説では、次のように述べています。「気候変動の影響は選択できません。それは党派的な現象ではないからです。それは科学です。私たちの対応も同じでなければなりません。科学に基づいて、共に行動する。全員で取り組むことが必要です」。

さらに21年1月に議会のねじれ状態を回避したことがわかった後も、「政府が一丸となった」気候変動対策を公約しています。では具体的には、各連邦機関がどのような役割を果たす可能性があるのでしょうか。

環境保護庁

環境に関して米国を代表する規制当局です。バイデン氏が就任初日にカナダから原油を運ぶ大型パイプライン「キーストーンXL」の建設認可取り消しを命じたように、トランプ元大統領が取り消しまたは縮小した125を超える気候・環境規制を復元するためにルールや科学的プロセスを再構築していくと考えられます。

財務省

気候変動問題に関して重要なプレイヤーになるといわれています。環境に配慮したビジネスへの投資や化石燃料からの撤退を促進するために、金融機関に対して、投資の際に気候関連リスクを織り込むよう義務付けていくと考えられます。

司法省

省内に、環境・気候担当部門を創設し、政府を当事者とする気候問題にかかわる民事訴訟を優先したり、環境汚染企業との和解に向けて補助的なプロジェクトを提案するなどといった動きが考えられます。

内務省

2030年までに全米の土地・水域の3分の1近くを保全対象とすることや、管理下にある土地・水域の新規の石油・天然ガス採掘の中止など、バイデン氏の公約の実行を主導していくと考えられます。

エネルギー省

巨額の公共投資がされるクリーンエネルギーの研究開発プログラムを主導していくと考えられます。

農務省

温室効果ガス排出量の削減・総裁に寄与している農家、酪農家、森林所有者に給付を行うことや、農作物保険を活用して気候変動に配慮した農業の促進を行うことが考えられます。

教育省

教育機関の再生可能エネルギー導入や建築物の改修、通学バスの電気自動車導入や、気候変動に関する専門教育(講師や講座)への新たな投資を行うことが考えられます。

国防総省

連邦政府機関の中で、化石燃料の購入量で圧倒的な首位に立っているため、今後はクリーンエネルギーを調達・購入していけるかがカギになると考えられます。

インフラ、雇用、産業インセンティブに焦点を

気候変動対策は「雇用を創出し、気候変動を緩和し、遅くとも2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロを軌道に乗せるための具体的で実行可能な政策です。インフラに投資して、それをより強く、より回復力のあるものにすると同時に、気候変動の根本原因に取り組むことができます」とバイデン氏は2020年9月の演説で述べていました。

そのため、電力網や公益事業のインフラに早期に重点を置くことで、米国全土に雇用創出の大きな機会が生まれ、テクノロジー企業や技術開発を行うスタートアップ企業にとっても後押しとなることが期待されています。

実際にアメリカでは、すでに、政府による指導があまりなくても新型コロナウイルスの影響による急激な需要減もあり市場が後押しするかたちで再生可能エネルギーへの移行が始まっており、例えば、大手石油会社のShell(シェル)はルイジアナ州にあるプラントを閉鎖し、約700人の従業員を解雇することを発表しています。

農村部では、老朽化した電気・水道インフラの再生や石炭関連資産の再利用、油田・鉱山等環境修復やの埋め戻しプロジェクトに、都市部では、電気自動車の製造に対するインセンティブや環境のための改築、分散型再生可能エネルギーの導入に資金が注がれると思われます。これらの支出はある試算によると総額7500億ドル(約78兆円)に達する可能性があると言われています。

大統領のアドバイザーも「市場が自ら解決策を見出し、いつでもまずインセンティブに委ねるのが望ましい」と述べているように、規制や義務化だけではなくインセンティブを重視しています。

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