新型コロナウイルスによる転換期、グリーンリカバリー
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2020年08月25日
一般社団法人エネルギー情報センター

世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、収束してもまた新たな感染症が生じる可能性が高いです。そうした社会をこの機に変えようという「グリーンリカバリー」の考え方が、世界的に注目されています。
新型コロナウイルスとは
新型コロナウイルスはコロナウイルスの一つで、コロナウイルスには、一般的な風邪を引き起こすウイルスや重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスが含まれます。コロナウイルスは自ら増殖はできないのですが、粘膜などの細胞に付着して入り込み、増えることが可能です。
新型コロナウイルスは一般的に飛沫感染と接触感染で感染します。WHOによると、新型コロナウイルスはプラスチックの表面で最大72時間、ボール紙では最大24時間生存すると発表しています。
新型コロナウイルスに感染すると、軽症や治癒する人も多い一方、普通の風邪症状が出てから約5~7日程度で症状が急速に悪化し、肺炎になり重症化してしまう人もいます。重篤化した場合は、人工呼吸器など集中治療が必要となり、季節性インフルエンザよりも入院期間が長くなる場合があります。
ワクチンの開発までには通常、ワクチンの有効性・安全性の確認や品質維持で大量生産可能かの確認などを行うため、開発には年単位の期間がかかります。大阪大学等が開発を進めているDNAワクチンは臨床試験が開始されています。
新型コロナウイルスの影響と今後
NEDOの調査によると世界各地の報告で、5月頃にロックダウン(都市封鎖)をしていた中でのCO2排出量が、大幅に下がっているとしています。IEAによると今年のCO2削減量は2.6Gtとなり、これはリーマン・ショック時の6倍の削減で、今年は前年よりも8%削減となる見込みです。
国連環境計画(UNEP)は新しい感染症は4か月ごとに発生し、そのうち75%が動物由来で、動物から人へ伝播する感染症は森林破壊、集約農業、違法動物取引、気候変動などに起因し、これらの要因が解決されなければ、新たな感染症は引き続き発生し続けると発表しています。
より良い社会を目指すグリーンリカバリー
そうした中、今ヨーロッパを中心に「グリーンリカバリー」という考え方が注目されています。グリーンリカバリーとは、コロナ禍により世界規模で二酸化炭素排出量などが減り大気汚染が改善した現象を一時だけにするのではなく、今後も持続させ、さらに以前よりも良い社会にしていこうという考え方です。このグリーンリカバリーの考え方は「欧州グリーンディール」が背景としてあります。
欧州グリーンディールについて
EUでは新型コロナウイルスの発生前より、気候変動が中心的な課題の一つと位置づけており、2019年12月1日にウルズラ・フォン・デア・ライアン氏が委員長となる新たな欧州委員会が発足しました。
同年12月11日には欧州グリーンディールの全容が明らかにされました。内容は、新循環型経済行動計画をグリーンディールの基盤とし、持続可能な製品の標準化、循環性が高い産業分野を重視し廃棄物の削減を掲げたり、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという法的拘束力のある目標が組み込まれていたり、グリーンとデジタルによって欧州産業の活性化を目指し単一市場の深化とデジタル化やイノベーション支援などに加え、循環型経済の構築も含むなどの政策があります。
環境政策でありながら、エネルギー、産業、運輸、生物多様性、農業など、政策分野の対象が多岐にわたっています。経済社会の構造から変化させるべく包括的な対策を打ち出しています。
今年の5月27日にフォン・デア・ライアン氏が復興基金として「次世代EU」の創設を提示しました。新型コロナウイルスの危機についてだけではなく、将来を見据えた世代を超える協定とし、欧州グリーンディールを復興の中心的政策の一つだとしました。その中で、「グリーントランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)」を促進することが強調されました。
各国の取り組み
欧州グリーンディールが発表され、それに対応した計画や施策を打ち出し、グリーンリカバリに取り組んでいる国々が出てきています。ドイツ、フランスなどは景気対策に数百億ユーロを投じるとしています。イギリスやデンマークでは建築物のグリーンビルディング化に助成金を出し合う計画があります。カナダでは「Building Back Better Canada Plan」で、建築分野や電気自動車、再生可能エネルギー、製造業など、気候変動の緩和や低炭素社会の実現に結びつく産業を中心に支援を行うとしています。韓国では炭素税導入、石炭火力発電への公的融資を廃止、グリーン・エネルギー・インフラへの大規模投資が計画されています。
国だけではなく、例えば国際エネルギー機関(IEA)はエネルギー効率の改善や風力・太陽光発電配備の加速化を提案、三年間の約106兆円の投資を各国政府に求めるグリーン・リカバリー計画を発表しています。
また、欧州委員会は「Next Generation EU」という欧州復興計画を発表しました。2021-2027年までの130兆円の多年次予算と、同予算を補完する90兆円で構成されており、大半がグリーンディール関連となっています。世界経済人会議(WBSCD)では、NGO、シンクタンク、ヨーロッパ労働組合連合が、Next Generation EUに欧州各国が実際に行動をしてもらうよう求める「Green Recovery Alliance」に署名しました。
以前よりもより良い社会へ
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