ICTによるCO2削減を収益化、Jクレジットに「情報通信技術を活用した削減活動」追加見込
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2019年10月09日
一般社団法人エネルギー情報センター

現状、プログラム型プロジェクトとして取りまとめることができる属性として5種類が規定されておりますが、「情報通信技術を活用した削減活動の取りまとめ」を6つめの新たな属性として制定することが、9月19日に開催されたJクレジットの運営委員会より検討されました。
Jクレジット制度は、省エネ再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証する制度であり、経済産業省・環境省・農林水産省が運営しています。
地球温暖化対策計画(平成28年5月13日閣議決定)では、J-クレジット制度を「分野横断的な施策」と位置づけており、日本の温暖化対策の1つとして重要な役割を担っています。
JクレジットはCO2削減をビジネス的な商品として生み出せるものであり、その収益性については、プロジェクトによりバラつきがありますが、再エネ分野の場合は総投資額の約0.1~1%が目安となります(図1)。省エネ分野の場合は収益性が高まり、クレジット収益は総投資額の1%を超えることも多く、10%の収益を上げるケースもあります。

図1 再エネ設備導入における総投資額と年間CO2削減量 出典:JクレジットHP
Jクレジットは、様々な排出削減・吸収事業が対象であり、誰でもクレジット創出者になれる可能性があるため、グリーン事業の採算性を高めるためにも、多様な事業者が排出削減・吸収事業を登録しています。クレジットの累計件数も順調に伸びており、2017年1月時点の567件から、2019年7月には784件と、2年半ほどで1.4倍近くに増加しています(図2)。

図2 Jクレジットのプロジェクト登録件数 出典:JクレジットHP
これら登録プロジェクトは、「通常型」と「プログラム型」とに分けられています。通常型は、例えば、中小企業がボイラー機器を省エネ型に入れ替えるなど、単独でCO2削減する事例が当てはまります。一方、プログラム型は、家庭や工場への太陽光発電システムやコージェネレーションシステム、電気自動車などの導入による小規模な削減活動をまとめて一つのプロジェクトとし、随時追加することができる特性を持っています。
現状、プログラム型プロジェクトとして取りまとめることができる属性として、下記の通り5種類が規定されておりますが、「情報通信技術を活用した削減活動の取りまとめ」を新たな属性として制定することが、9月19日に開催されたJクレジットの運営委員会より検討されました。
- 属性a. 家庭部門における削減活動
- 属性b. 運営・管理者又はその構成者が実施する削減活動
- 属性c. 運営・管理者により燃料の供給を受ける者における当該燃料に係る削減活動
- 属性d. 運営・管理者により設備の供給を受ける者における当該設備に係る削減活動
- 属性e. 国又は地方公共団体を財源とする同一の補助金の受給者における当該補助金に係る削減活動
委員会では、「ICTを活用した情報収集・管理システムを用い、主要排出量の算定に用いる活動量を自動的に収集・管理することができる削減活動」を、新たな類型として属性f.として制定することが議論されました。
プロジェクト組成の要件としては、① 活動量を自動的に収集・把握できること、② 全ての削減活動について活動量の収集・把握ができること、といった2つの項目が設定される見込みです(図3)。
「活動量を自動的に収集・把握できること 」とは、例えば、パワーコンディショナーが測定した発電電力量を有線LANを通じて取得し、インターネット回線を経由してデータベース等に自動的に転送するシステム等が該当します。一方で、発電電力量が表示されたモニターをスマートフォン等で撮影し、メールやアプリケーション等を通じて収集する場合は人手を介すると見なし、要件を満たしません。
少なくとも、主要排出量の算定に用いる活動量が自動的に収集・把握できれば良いため、設備情報や付随的排出量の算定に用いる活動量については、必ずしも自動的に収集・把握できる必要はないです。
2つ目の要件である「全ての削減活動について活動量の収集・把握ができること」とは、主要排出量の算定に用いる活動量に関する情報・データ等を、プログラム型プロジェクトに参加する全ての削減活動から漏れなく、重複なく収集・把握できることと定義される見込みです。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年04月29日
日本の電力インフラは現在、大きな変革期を迎えています。再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大やEV(電気自動車)充電施設の増加に伴い、電力設備の管理・保守の重要性が一層高まっています。その中で、電気主任技術者は電力設備の安全を確保し、安定した電力供給を支える要となる存在です。 しかし近年、電気主任技術者の人材不足が深刻化しており、電力業界全体に影響を及ぼしています。特に、高齢化による人材減少、資格取得の難しさ、再エネ・EV充電施設の急増がこの問題を加速させる要因となっています。 本コラムでは、電気主任技術者の人材不足の背景と現状を明らかにし、今後の電力業界における影響についてお伝えします。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年04月16日
FIT制度、2025年度から太陽光・風力・水力の一部が単価変更、再エネ賦課金は3.98円で前年度から14%増加
本記事では、2025年度以降のFIT(固定価格買取)制度に関する再エネの動向を見ていきます。太陽光発電は初期投資支援スキームが導入され、また洋上風力は価格調整スキームが導入されるなど、今後新たな形での再エネ事業開発が進められることが期待されます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年03月23日
第7次エネルギー基本計画について(後編) :原子力発電の役割とカーボンニュートラル実現に向けた政策
2024年12月17日、経済産業省は「第7次エネルギー基本計画」の原案を公表しました。前編では、日本のエネルギー政策の基本方針や2040年度の電源構成の見通しについて解説し、再生可能エネルギーの導入拡大や火力発電の比率低減が進められている現状をお伝えしました。 後編では、これらの課題に対する解決策として、原子力発電の役割と再評価、エネルギーコストの見通し、そしてカーボンニュートラル※1達成に向けた政策について詳しく解説します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年03月19日
2025年2月、電力先物市場は過去最高の取引高を記録し、3月にはさらに更新。加えて、ヘッジ会計の適用が進展し、市場の透明性と安定性が向上しています。本コラムでは、最新の市場動向とその影響を解説します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年02月27日
経済産業省は2024年12月17日、有識者会議(総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会)を開催し、今後のエネルギー政策の方向性を定める「第7次エネルギー基本計画」の原案を公表しました。本稿では、その概要を2回に分けて解説します。前編では、計画の背景や基本方針、2040年度の電源構成の見通しについてお伝えします。