新電力による卒FIT対象者へのPR、同封スキームにより改善見込、「卒FIT買取事業者連絡会」設立予定

2019年08月20日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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旧一電による卒FIT対象者への個別通知につき、新電力の買取情報を同封するスキームにつき調整が進んでいます。この取り組みは、FIT卒業電源へのアクセスに関する事業者間の非対称性の改善や需要家の選択機会の拡大に資するものと考えられます。

卒FIT電源、新電力の買取メニューを同封するスキーム

日本における本格的な再エネ電力の普及施策は、1992年から電力会社が自主的に始めた「余剰電力買取メニュー」がその発端だと考えられます。「余剰電力買取メニュー」は、太陽光発電が需要を上回って発電した場合に、余った電力を、需要家向けの電力販売価格と同じ値段で電力会社が買い取るというものです。当時、太陽光発電の買取価格は、住宅用が約24円/kWh、非住宅用は11~15円/kWh程度でした。

また、太陽光発電を設置する住宅には、1994年から2005年まで新エネルギー財団(NEF)により、補助金も交付されることとなりました。補助金額は、当初定率補助でしたが、その後kwあたり定額制となり、徐々に減額していきました。

具体的には、当初は1件当たり300万という高額の補助がされていましたが、2005年までにkwあたり2万円となりました。ただし、住宅用の場合、太陽光発電設備の導入費用を回収するまでに、「余剰電力買取メニュー」と補助金を利用した場合でも、案件により異なりますが、概ね20年程度要する状況となっていました。

その後、2009年2月に、当時の二階俊博経済産業大臣は「太陽光発電の新たな買取制度」の導入を発表しました。この新たな買取制度は「エネルギー供給構造高度化法」を根拠に制度設計が行われ、2009年11月1日から「太陽光発電の余剰電力買取制度」として開始しました。

本制度により、電力会社は、太陽光発電設備からの余剰電力を定められた価格で買い取るよう義務付けられました。買取価格は、2010年度の場合で住宅用(出力10kW未満)で48円/kWh(自家発電設備等を併設するダブル発電では39円/kWh)、非住宅用は24円/kWh(ダブル発電は20円/kWh)と、余剰電力買取メニューの約2倍に設定されました。

2019年11月、この「太陽光発電の余剰電力買取制度」の開始から10年が経過し、住宅用太陽光発電設備のFIT買取期間が終了し始めます。FIT制度による買取期間が終了した電源については、法律に基づく買取義務は無くなるため、①電気自動車や蓄電池と組み合わせるなどして自家消費すること、②小売電気事業者やアグリゲーターに対し、相対・自由契約で余剰電力を売電することが基本となります。

昨今、RE100やSDGsなど環境経営に対する企業意識に加え、消費者のエネルギーに対する意識も高まる中、大規模な非化石電源の開発が困難な新電力にとって、卒FIT太陽光は重要な電源となります。新電力はこうした電源を確保することで、顧客ニーズに応える新たなビジネスや、新たな価値創造に繋げられる可能性もあります。

ただし、卒FIT電源へのアクセス(買電についての営業)について、旧一般電気事業者(小売)と新電力の間に情報の非対称性が存在するという課題が存在します。理由は、卒FIT電源の大宗は各エリアの旧一般電気事業者(小売)が買取を行っており、新電力はFIT卒業電源設備に関する所有者、所在地等の情報を有していないためです。

また、卒FIT対象者が特に意思表示しない場合には、セーフティーネットとして旧一電による買取が継続されることとなります。しかし、卒FIT対象者が自身で意思表示し、適切な買取先を選択できる環境を整えることは重要であると考えられます。そのためには、卒FIT対象者が新電力による様々な買取プラン情報へ容易にアクセスできるようにする必要があります。

しかし、全需要家が対象となる小売全面自由化ではマスPRなども有効ですが、時期・対象を特定できない卒FIT対象者へ新電力が効果的にPRする手段は現実的に存在しません(図1)。こうしたこともあり、一部の新電力が、FIT卒業電源へのアクセス改善等を求める要望を「電力・ガス取引等監視委員会」に寄せています。

新電力の卒FIT買取における課題

図1 新電力の卒FIT買取における課題 出典:電力・ガス取引等監視委員会

このため、「電力・ガス取引等監視委員会」は、関係事業者との意見交換を実施しています。その中で、新電力から、すでに送付が始まっている旧一電の個別通知へ新電力の買取情報を同封するスキームについて提案があり、旧一電との調整が進んでいます(図2)。この取り組みは、FIT卒業電源へのアクセスに関する事業者間の非対称性の改善や需要家の選択機会の拡大に資するものと考えられます。

個別通知への新電力の買取情報の同封スキーム

図2 個別通知への新電力の買取情報の同封スキーム 出典:電力・ガス取引等監視委員会

「卒FIT買取事業者連絡会」設立予定

同封スキームの効率的な運営および卒FIT対象者の利益保護のため、「卒FIT買取事業者連絡会」が設立される予定です。消費者に誤解を与えたり、消費者が十分に認識せずに高額商品を購入してしまう等のトラブルを防止するため、チラシの記載内容に一定の制約を設け、「卒FIT買取事業者連絡会」がチェックします(図3)。なお、同封するチラシにつき、買取プランと関連しない機器やサービスの紹介はNGとなっています。

主な役割
  1. チラシの同封を希望する事業者の募集・登録・管理
  2. チラシへの記載ルール等の策定
  3. 上記ルールに基づく各社の買取チラシのチェック
  4. 同封スキームに関する卒FIT対象者からの問合せ対応
消費者の保護について

図3 消費者の保護について 出典:電力・ガス取引等監視委員会

直近1年に低圧小売実績がある登録小売電気事業者が入会可能

新電力各社や「卒FIT買取事業者連絡会」は、卒FIT対象者の個人情報を扱いません。また、新電力各社より広く入会を受け付け、公平な費用負担とすることで公平性への配慮がなされます。入会条件は、直近1年に低圧小売実績がある登録小売電気事業者です(図4)。なお、運営費用等は固定費と変動費に分け、応分を各社負担することとなります。

個人情報の保護、参加する各社間の公平性について

図4 個人情報の保護、参加する各社間の公平性について 出典:電力・ガス取引等監視委員会

既に実施されている個別通知への影響

同封にあたっては、封筒サイズなど含め、現在実施中の個別通知の運用への影響に最大限配慮する内容となっており(図5)、また同封スキームに伴う追加コストは新電力が負担することとなります。

既に実施されている個別通知への影響

図5 既に実施されている個別通知への影響 出典:電力・ガス取引等監視委員会

今後のスケジュール

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