2021年度の固定価格買取制度の検討状況、小規模はFIT継続、大規模はFIPや入札になる可能性

2019年08月15日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

2021年度の固定価格買取制度の検討状況、小規模はFIT継続、大規模はFIPや入札になる可能性の写真

「特別措置法」であるFIT法には、2020年度末(2021年3月31日)までに抜本的な見直しを行う旨が規定されています。本記事では、国による検討内容から、2021年度以降のFIT制度における方向性を見ていきます。

改正FIT法の抜本的見直しへ

日本において2012年7月に創設されたFIT制度は、再生可能エネルギー導入初期における普及拡大と、それを通じたコストダウンを実現することを目的とする制度です。この制度により、再エネ発電の普及による環境問題への対処や、石油資源に対する代替エネルギーの確保、そして量産効果による価格の低下が実現しました。一方で、太陽光発電への導入偏重、初期の高価格案件の未稼働といった問題が生じ、急激な電源開発と併せて国民負担が著しく増大することとなりました。

こうしたFIT制度創設以降に生じた課題に対しては、2017年に改正FIT法が施行され、入札制の導入や、未稼働案件の防止、そして適切な事業実施を確保するための事業計画認定制度の創設などの対応が行われました。

改正FIT法の成立以降、現時点の状況を確認すると、再エネの導入が更に進展した一方で、依然として、発電コストは国際水準と比較して十分に低減したとは言えず、国民負担の増大の一因となっています。再エネ賦課金についても年々と上昇しており、2019年度の単価(2.95円)は2012年度(0.22円)と比較すると10倍以上になっています。

なお、2030年度のエネルギーミックス(再エネ導入水準(22~24%))について、これを達成する場合の FIT 制度における買取費用総額は3.7~4.0兆円程度になると長期エネルギー需給見通し(2015年制定)では想定していますが、2019年度の買取費用総額は既に3.6兆円程度に達すると見込まれています。

また、再生可能エネルギーの導入拡大により、系統制約が顕在化しつつあり、加えて小規模のFIT電源を中心に、既に導入されている電源の調達期間終了後の事業継続や将来的な再投資が滞るのではないかといった懸念、設備廃棄を含めた責任ある事業実施に対する懸念等も明らかとなっています。

これらの課題解決に向け、FIT制度の在り方について国による検討が進められています。前提条件として、FIT制度は時限的な特別措置として創設されたものであり、「特別措置法」であるFIT法にも、2020年度末(2021年3月31日)までに抜本的な見直しを行う旨が規定されています。本記事では、国による検討内容から、2021年度以降のFIT制度における方向性を見ていきます。

FIT制度の改正に係る全体的な方向性

2021年度以降のFIT制度の在り方の検討内容として、大きな変更点の1つに、大規模案件を中心としてFIT制度廃止が検討されている点が挙げられます。8月に行われた再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の中間整理では、FIT制度から入札制やFIP制度へ完全に移行し、競争を促進すべきとの意見が報告されています。

また、FIT制度のメリットとして、長期的な事業計画が立つため資金調達が容易になる点が挙げられますが、FIP制度への移行とともに、開発リスク低減など包括的な政策をとることが必要が示されています。

その他、現状のFIT制度ではインバランスリスク負担の回避によって、電力市場のメカニズムから半ば隔離された状況で再エネの導入が進められてきました。しかしながら、今後はインバランスリスクや出力制御など、発電事業者としての然るべき責務を負うべきだとされています。それに伴い、需給調整市場への再エネ発電事業者の参入を進めるべきとの方向性も見られます。

再エネに関する制度例
種類 制度概要 実施国(例)
FIT 一定価格で一定期間買取り 日本、トルコ、ケニア
FIP 市場取引+プレミアム付与 ドイツ、デンマーク
CfD 市場取引+ストライク・プライスと卸電力市場価格との差額を決済 英国
全量買取 送電会社に対し再エネの全量買取を義務付け 中国
ネットメータリング 消費者側設備による余剰電力を消費電力と相殺して精算 米国(州別)、イタリア
RPS 販売電力量に応じ再エネの一定割合の導入を義務付け 米国(州別)、韓国
グリーン証書 電力取扱量に応じ一定割合の証書購入を義務付け スウェーデン、ノルウェー
排出権取引 事業者別に設定された排出枠を満たす義務 カナダ(州別)、メキシコ
Investment Tax Credit(ITC) 再エネ設備設置費用に対する税金を一部控除 米国
設備容量に応じた補助 収益率一定水準以下の設備に対し設備容量当たりの金額を毎年補助 スペイン

出典:経済産業省資料より作成

太陽光発電

太陽光発電は、大型案件(500kW以上)は既に入札制度となっており、その他の電源と比較すると一足先に競争原理が導入されています。小規模な案件については、2021年度以降、自家消費を促す制度構造になると考えられます。

例えば、小規模の事業用太陽光発電は、需給一体型のモデルで成り立つものを国として支援することが適切だとされています。したがって、全量買取ではなく、余剰買取となる可能性があります。

また、住宅用太陽光発電については、現行では電気料金よりも買取価格の方が高いため、自家消費が少ない方が採算性が高いですが、自家消費の方が有利になる制度になると想定されます。また、太陽光発電の事業の集約化が重要であり、そもそも50kW未満については経済的なインセンティブが働かないような制度に変えるべきでは、との検討もなされています。

全体として、買取義務やインバランス特例をなくしていき、FIP制度など市場連動型の制度に早期に移行させるべきとされ、今後の検討によっては、地域ごとにFIP制度に移行するなど地域偏在性を踏まえた戦略を取ることもあり得ます。

風力発電

風力発電は、RPS制度の下では15年間の買取期間を前提に、12円/kWh程度で導入が進んできており、既にFIT認定容量は10GW近傍であることも踏まえれば、買取義務は必要ない時期に差し掛かっており、追加的な補助策が必要であれば、FIP制度等によって支援すべきとされています。

洋上風力発電については、完全セントラル方式が導入されなければコストが低減しないのであれば、これ以上国民負担を増やしてまで導入すべきではなく、それまで洋上風力発電の導入を待つべきとされています。

なお、風力発電は国内でメインの設備をほとんど作っていないため、FIT制度による風力発電設備への支援が、日本の国際競争力強化につながりづらい部分も課題だと考えられます。

地熱発電

地熱発電は、長期安定電源として期待は大きいですが、一番のネックは開発リスク・開発コストのため、今後はFITではなく、開発支援に重点を置くことが適切であり、開発権の保証や系統接続の担保により開発が進むと考えられています。

なお、地熱発電は規模別で比較するとコストに大きな開きがあり、小規模案件は非常に高くFIT制度からの自立化がいつまでたっても難しいと思われるため、国による支援は中規模以上の案件に注力すべきとの可能性が示唆されています。

中小水力発電

中小水力発電はコストも安く、調整電源としての役割も期待されるため、競争力のある電源と評価されています。そのため、そろそろFIT制度は不要となり、FIP制度や開発支援へのシフトが可能と想定されています。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

EMS関連市場、卒FIT等により2030年に約1.7兆円、省エネからデータ取引等の付加価値の時代へ、富士経済予測の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年12月10日

新電力ネット運営事務局

EMS関連市場、卒FIT等により2030年に約1.7兆円、省エネからデータ取引等の付加価値の時代へ、富士経済予測

富士経済は国内のEMS関連市場を調査した結果として、国内市場が2030年に1兆7134億円(2018年度比194%)に達する見込みであると発表しました。この調査では、EMS関連システムや需要家側EMS関連設備、EMS関連サービスの市場動向を整理し、それらをEMS関連市場として定義した上で今後の動向を推測しています。

太陽光発電の廃棄対応、1kWhの発電につき0.8円程度の積立金の可能性、10kW以上の設備、2022年7月開始予定の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年11月26日

新電力ネット運営事務局

太陽光発電の廃棄対応、1kWhの発電につき0.8円程度の積立金の可能性、10kW以上の設備、2022年7月開始予定

経済産業省では平成31年より「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ」を設置し、適切な積立が行われるよう制度設計が議論されています。本記事では、使用済み太陽光発電に対する省庁の動きを見ていきます。

中小企業等を対象としたRE100の新枠組、「再エネ100宣言RE Action」発足、環境省がアンバサダー参加の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年10月16日

新電力ネット運営事務局

中小企業等を対象としたRE100の新枠組、「再エネ100宣言RE Action」発足、環境省がアンバサダー参加

10月9日、グリーン購入ネットワーク、イクレイ日本、公益財団法人地球環境戦略研究機関、日本気候リーダーズ・パートナーシップの4団体は、使用電力の再エネ100%化宣言を表明するイニシアティブ「再エネ100宣言 RE Action(アールイー・アクション)」を発足しました。

第1回ベースロード市場、価格は8.70~12.47円/kWh、2018年度平均エリアプライスを下回るの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年09月13日

新電力ネット運営事務局

第1回ベースロード市場、価格は8.70~12.47円/kWh、2018年度平均エリアプライスを下回る

本記事では、8月9日に実施された第1回目ベースロード市場のオークション結果(2020年度受渡分)について概要を見ていきます。どのエリアにおいても、約定価格が平均エリアプライスを下回る一方、売りに比べ買い入札量が少なく16.1億kWhの約定量に留まりました。

2021年度の固定価格買取制度の検討状況、小規模はFIT継続、大規模はFIPや入札になる可能性の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年08月15日

新電力ネット運営事務局

2021年度の固定価格買取制度の検討状況、小規模はFIT継続、大規模はFIPや入札になる可能性

「特別措置法」であるFIT法には、2020年度末(2021年3月31日)までに抜本的な見直しを行う旨が規定されています。本記事では、国による検討内容から、2021年度以降のFIT制度における方向性を見ていきます。