旭タンカーなど4社、EV船の開発に向けe5ラボ設立、2021年半ばまでに「世界初」のゼロエミッションタンカーを目指す
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2019年08月07日
一般社団法人エネルギー情報センター

8月6日、旭タンカー、エクセノヤマミズ、商船三井、三菱商事の4社は、電気推進(EV)船の開発、およびEV船を中心とした新しい海運インフラサービスの構築に向けた戦略的提携に合意し、新会社「株式会社e5(イーファイブ)ラボ」を設立したと発表しました。
国際海運から排出される温室効果ガス(GHG)は、そのほとんどがCO2であり、2014年の国際海事機関(IMO)の調査によると、2012年の排出量は約8億トンです。これは、世界全体から排出されるCO2の総排出量の約2.2%であり、ドイツ1国分の排出量に匹敵します。また、世界の海上輸送需要は今後も増加傾向にあると考えられ、国際海運からのCO2排出量も増⼤すると予測されています。
国境を越えて活動する国際海運のGHG排出対策については、船舶の船籍国や運航国による区分けが難しいため、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)ではなく、国連の専⾨機関である IMOに検討が委ねられています。IMO では、世界共通の燃費規制(EEDI)を他セクターに先⽴って導⼊するなど、国際海運の GHG 削減を積極的に推進してきました。
2018年4月、IMOは、国際海運セクターにおいて、①2030年までに平均燃費を40%改善、②2050年までにGHG総排出量を50%削減、③今世紀中のGHGゼロ排出といった削減目標等や、その実現のための対策候補を盛り込んだ「GHG削減戦略」を採択しました。現在、この実現に向け、2023年までにGHG削減のための新たな短期対策に合意すべく、各国からの提案に基づき、検討・審議が進められています。
2019年5/13~5/17に行われたIMO海洋環境保護委員会第74回会合では、国際海運の脱炭素化に向けて、新たな温室効果ガス削減対策の検討が開始しました。この中で、日本は燃費性能規制、欧州・環境NGOは速度規制など、20を超える対策が提案されました(図1)。
これら多数の提案の中、日本の提案は、各船舶が採用する対策に自由度が高いこと、執行面で実効性が高いこと、技術のイノベーションを促すこと等の観点で、多数の支持を得ました。こうした提案は、今後、2023年までに国際条約として導入すべく、国際交渉が行われることとなります。

図1 主な各国提案の概要 出典:国土交通省
こうした中、旭タンカー、エクセノヤマミズ、商船三井、三菱商事の4社は、電気推進(EV)船の開発、およびEV船を中心とした新しい海運インフラサービスの構築に向けた戦略的提携に合意し、新会社「株式会社e5(イーファイブ)ラボ」(以下「e5ラボ」)を設立したと発表しました。
e5ラボの事業内容は、①EV船の企画・開発、② EV船の普及活動、③EV船の知的財産権管理となります。また、EV船のみならず、最先端技術を駆使した海運インフラサービス等も提供するプラットフォームを構築し、そのプラットフォームを通じて、海運業界の持続的な発展に貢献することを目指すとしています。
e5ラボが取り組む7つの課題
- 船舶の電動化により温室効果ガスの排出を抑制し、気候変動の課題
- 船内通信環境の改善により職場環境を改善し、船員不足の課題
- 高度なセンサー技術の活用により、高齢化した船舶を安全に運航するための保守管理
- 自動化技術やビッグデータを活用して陸上から船員の業務を支援し、船舶の安全・安心・効率運航
- 造船業、舶用機器メーカー、船主、オペレーター、荷主といった海運に関わるステークホルダーに EV船プラットフォームを提供し、船舶の標準化等を通じて持続的な成長モデルの構築支援
- 次世代技術の標準規格を提供し、実用・普及に向けた速やかな社会実装の課題
- 大容量蓄電池を活用し、災害時の緊急電力供給など、地域社会のBCPへの貢献
4社によると、まずは、2021年半ばまでに、東京湾内で運航する内航タンカーを、大容量電池駆動による「世界初」のゼロエミッションタンカーとしてEV化することを目指すとしています(図2)。
又、これと平行して、タンカー以外の内航船種のEV開発をすすめ、先に挙げた日本の海運が直面する課題の解決を図ることとなります。加えて、内航船に加えて外航船のEV化も積極的に推進し、「2050年までにGHG排出を2008年対比50%以上削減」というIMOの戦略をいち早く達成させるために必要な技術・人材・運用ノウハウを集積します。
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