余剰エネルギーにおけるピアツーピアの「自由貿易」、英ブリストル大学が研究開始

2019年05月10日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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将来的には余剰電力につき、より経済合理性に則った形で売買される可能性があります。この課題につき、ブリストル大学では、EPSRCからの46万ポンドの助成金を利用することで、ピアツーピア (P2P)エネルギー市場におけるマイクロ発電機間の「自由貿易」を研究しています。

電力のピアツーピア取引

イギリスでは現在、個人もしくは小規模な組織による再エネ発電の設置が増加しており、それに伴いエネルギーの分散化が進んでいます。それらの家庭用発電機による余剰分の電力は、あらかじめ設定された価格で国内送電網に売却されるルールとなっています。

しかし、将来的にはそれらの余剰電力につき、より経済合理性に則った形で売買される可能性があります。この課題につき、ブリストル大学では、EPSRCからの46万ポンドの助成金を利用することで、ピアツーピア (P2P)エネルギー市場におけるマイクロ発電機間の「自由貿易」を研究しています。

P2Pエネルギー市場では、任意の2つの個人/世帯が、公益事業者または第三者を仲介することなく、互いに電力を直接売買することができるようになります。同大学による研究プロジェクトの主な目的は、「民主化された」P2Pエネルギー市場の実現可能性を調査することです。

プロジェクトを率いるRuzanna Chitchyan博士は、「エネルギーを生産する世帯は、その電力ををどのように取り扱うか決定する力を持つべき。公益事業者に電力を売却するより、むしろ近くのホームレスの避難所に無料で寄付することを望むケースも考えられる。または第三者へのより良い条件での売却、そのほか隣人とシェアするといったことも想定される。同様に、消費者は、どのエネルギーをどの価格で購入するのかを決定する自由があるべき。研究プロジェクトの取引プラットフォームは、この選択の自由をサポートするものである。」と述べています。

また、EPSRCのエネルギー担当責任者であるJim Fleming氏は、「低炭素社会に移行するには、大小を問わず、すべての生産者が生み出すエネルギーを最大限に活用する必要がある。このプロジェクトは、ピアツーピアのエネルギー取引システムを実装するために克服する必要がある技術的課題に注目するもの。成功すれば、人から人への電力融通が可能となる。」と述べています。

電力以外の市場においては現在、例えばホテル業界では「Airbnb」、タクシーレンタルでは「Uber」など、同様の「共有」プラットフォームが既に導入されています。

研究プロジェクトでは、エネルギー市場における「共有化」を可能にするため、家庭レベルのP2Pエネルギー取引をサポートするための技術プラットフォームを開発しています。これにより、市場参加者は低コストでエネルギーの生産、販売および購入に関する記録への読み書きが可能になります。各取引は、取引と請求に対する権利と責任の正確な割り当てを保証するために、正確に記録され、検証可能で、そして安全である必要があります。

なお、今回の研究プロジェクトの産業パートナーである「EDF Energy」は、家庭間のP2P取引の大枠をテストしています。また、エクセター大学およびレスター大学は、研究プロジェクトの協力パートナーです。エクセター大学の研究者は、各世帯がピアツーピア市場に参入する動機を調査しており、レスター大学の研究者は、ピアツーピア取引に関するアルゴリズムおよびゲーム理論の検討を行っています。

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