家庭用設備における非化石証書の可能性、トラッキングビジネスの今後
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

これまで非化石証書は、再エネ電源の由来を特定できず、RE100等のイニシアティブに適用不可と考えられてきました。しかし、2019年2月に実施された実証実験により、トラッキングスキームが導入され、FIT非化石証書の由来となった発電所を明らかにすることが可能となりました。
非化石証書のトラッキングが可能に
平成30年5月に創設された非化石価値取引市場は、①FIT制度による国民負担の軽減、②需要家の選択肢拡大(CO2フリープラン等)、③CO2削減(非化石電源調達目標の達成)に資するものであり、今後はRE100の取組などに利用されることが期待されています。
貫徹小委においては、非化石証書の商品設計については事業者のニーズを踏まえ、市場開設後も継続的に検討していくこととされています。よって、2019年2月には、非化石証書の環境価値の由来となった再生可能エネルギー電源を明らかにする実証実験が行われました。
実証実験には、多くの小売電気事業者及び発電事業者が参加しました。その結果、トラッキングスキームの導入により、FIT非化石証書の由来となった発電所を明らかにすることが可能となりました。
発電された電気に付随する属性情報は、実証実験事務局が情報基盤システムを用いて一括して管理します。属性情報は、小売事業者が購入した非化石証書に付与されることとなります(図1)。
なお、実証実験においては、2019年2月25日~3月1日にて開催されるオークションで取引されるFIT非化石証書が対象となっています。属性情報は、参加を希望した発電事業者が2018年7月~9月の間に発電したFIT電気が対象となります。実施主体は、資源エネルギー庁及びその委託を受けた日本ユニシスとなっています。

図1 トラッキングスキーム概要 出典:経済産業省
トラッキング属性情報の付与における優先順位
実証実験においては、小売電気事業者が非化石証書を購入した後に、トラッキング情報が付与されました。そのため、同一電源に対して複数の取得希望者が発生したケースにおいては、優先順位に則って割り当てが行われます。
属性情報の割り当てにおける優先順位は、「①PPAあり→②発電事業者の個別の合意あり→③残り先着順」と設定されました。この中で、「②発電事業者の個別の合意あり」とは、発電事業者との間で資本関係があるケース(PPAはなし)が想定されています。
PPA等がない場合は先着順にて割当が行われますが、そのトラッキング付非化石証書については、競合する小売電気事業者が希望のトラッキング付非化石証書を購入できないよう妨害するために、空押さえを行う事業者が発生するおそれがあります。
実証実験においては空押さえを行った事業者はいませんでしたが、今後の継続的な事業運営のためにも対策を考えることが重要です。そのため、今後空押さえが頻発するような事態となった場合には、違反の程度によってオークションへの参加を一時的に制限するなどのペナルティを設定することが検討されています。
参加範囲の広い「先着順」の発電施設は4%のみ
実証実験には、59の発電事業者が参加し、142設備が属性情報のトラッキング対象として登録されました。結果として、登録設備のFIT非化石証書の総量は合計約5.5億kWh程度となりました。
このうちの大半がPPA付の設備であり、約5.2億kWh程度でした。PPAがなく、先着順の証書は2,000万kWh(約4%)の参加でした。つまり、96%もの設備においては、既にPPAが結ばれているか、もしくは個別合意(資本関係がある等)がされている設備となっていました(図2)。

図2 発電事業者の参加状況 出典:経済産業省
家庭用の発電設備、個人情報保護の上で証書流通の検討
現状のところ、一部の大口需要家を除き、非化石証書を利用した電力メニューの開発や需要家の開拓はあまり進んでいません。そのため、非化石証書の環境価値の位置づけに加えて、トラッキング付非化石証書の発電所情報とPPAの発電所情報の関係が整理されることが重要となります。
トラッキング付FIT非化石証書を活用することで、現行の小売ガイドライン上では、「実質再エネ電気(XX県FIT太陽光発発電所由来)として訴求することが可能です。しかしながら、より魅力的な訴求方法がなければ、非化石証書の利用拡大は難しいものと考えられ、国としても今後の検討課題として挙げています(図3)。
なお、非化石証書の取引量が順調に増大していくことに備えて、トラッキングスキームの対象となる設備数と発電量を拡大していく必要があります。例えば、現状では個人による非化石市場への参加登録があまり見込めないため、家庭用設備の発電量に対して無駄が発生します。
そのため、参加登録がない設備についても、個人情報保護の観点から証書に記載する情報を限定(例: 所在地は県単位、個人名の記載はなし等)した上で、証書流通の対象とすることが検討されます。

図3 再エネでんきの訴求方法 出典:経済産業省
非化石証書、RE100やSBTで利用可能
トラッキング付非化石証書については、需要家のRE100に対する報告に活用することも可能とされています。実際に、再エネ由来J-クレジット、グリーン電力証書、非化石証書については、GHGプロトコルスコープ2ガイダンスにおける再エネ証書のクライテリアに合致していることが確認されています。
また、再エネ由来J-クレジット、グリーン電力証書、非化石証書は、CDP報告書及びSBTにおいても、再エネ証書として活用できることとなっています(図4)。

図4 再エネ証書とグローバル情報開⽰ 出典:経済産業省
認証事業の運営形態、手数料が発生する可能性
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月19日
電力小売全面自由化から10年 数字が語る制度と市場の現実【第2回】10年で広がった、「経営の期待」と「現場の実務」の距離
「自由化から10年」という節目を迎え、制度の成果や市場の成熟度をめぐる議論が活発化しています。 現場の会話をたどると、同じキーワードでも立場により意味がずれます。 たとえば、経営の「コスト削減」は現場では「業務負荷の増加」、制度側の「安定供給」は供給現場では「柔軟性の制約」として現れます。 第2回では、こうした変化のなかで生じている立場ごとの認識のずれを整理し、経営・現場・供給事業者という三つの視点から、なぜ議論が噛み合わないのかを構造的に考察します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年12月31日
電力小売全面自由化から10年、数字が語る制度と市場の現実【第1回】数字の区切りに惑わされず、いまの制度と市場を見直す
「自由化から10年」という言葉が、各所で頻繁に取り上げられるようになりました。 しかし、制度の導入や市場設計の見直しが今も続いており、電力を取り巻く環境は「完成」に近づくどころか、なお変化の途上にあります。 本稿では、数字がもたらす完了感と、制度・市場の実態との間にあるずれを整理し、“節目”という言葉の意味をあらためて考えます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年12月27日
政府も注目する次世代エネルギー 核融合の仕組みと可能性 【第5回】社会実装と中長期シナリオ 2030年代のロードマップと日本の戦略
これまで4回にわたり、核融合という次世代エネルギーの可能性を、研究・技術・制度の観点からたどってきました。長らく“夢のエネルギー”と呼ばれてきた核融合は、いま確実に社会の現実へと歩みを進めています。 最終回となる今回は、社会実装に向けたロードマップと、日本が描くべき中長期戦略を考えます。 核融合が“希望の象徴”で終わらず、私たちの暮らしに息づくエネルギーとなるために、次の時代に向けた道筋を描きます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年12月17日
政府も注目する次世代エネルギー 核融合の仕組みと可能性 【第4回】制度設計・安全規制・地域産業化 社会実装に向けた最新動向
第1回では核融合の基本、 第2回では国内研究基盤、 第3回では民間企業による産業化の動きを整理してきました。 こうした技術・ビジネス面の進展を踏まえ、2025年後半には「社会実装」に向けた制度づくりや安全規制の検討が政府内や国際機関で動き始めています。国際基準への日本の参画や、地域での研究・産業活動の広がりなど、核融合を社会に組み込むための枠組み形成が進みつつあります。 本稿では、制度・安全・産業の三つの観点から、この転換点の現在地を整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年11月30日
政府も注目する次世代エネルギー 核融合の仕組みと可能性 【第3回】民間企業が牽引する核融合ビジネスの現在地 国内外で加速する産業化の動き
第1回では核融合の基本原理と方式を、第2回ではJT-60SAやLHDを中心に日本の研究基盤を整理してきました。近年は研究成果が民間へ移行し、実証炉開発や供給網整備が本格化しています。高温超伝導やAIなどの技術進展により小型化と効率化が進み、投資も拡大。本稿では国内外スタートアップの動向と商用化に向けた論点を整理します。




























