家庭用設備における非化石証書の可能性、トラッキングビジネスの今後
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2019年04月12日
一般社団法人エネルギー情報センター
これまで非化石証書は、再エネ電源の由来を特定できず、RE100等のイニシアティブに適用不可と考えられてきました。しかし、2019年2月に実施された実証実験により、トラッキングスキームが導入され、FIT非化石証書の由来となった発電所を明らかにすることが可能となりました。
非化石証書のトラッキングが可能に
平成30年5月に創設された非化石価値取引市場は、①FIT制度による国民負担の軽減、②需要家の選択肢拡大(CO2フリープラン等)、③CO2削減(非化石電源調達目標の達成)に資するものであり、今後はRE100の取組などに利用されることが期待されています。
貫徹小委においては、非化石証書の商品設計については事業者のニーズを踏まえ、市場開設後も継続的に検討していくこととされています。よって、2019年2月には、非化石証書の環境価値の由来となった再生可能エネルギー電源を明らかにする実証実験が行われました。
実証実験には、多くの小売電気事業者及び発電事業者が参加しました。その結果、トラッキングスキームの導入により、FIT非化石証書の由来となった発電所を明らかにすることが可能となりました。
発電された電気に付随する属性情報は、実証実験事務局が情報基盤システムを用いて一括して管理します。属性情報は、小売事業者が購入した非化石証書に付与されることとなります(図1)。
なお、実証実験においては、2019年2月25日~3月1日にて開催されるオークションで取引されるFIT非化石証書が対象となっています。属性情報は、参加を希望した発電事業者が2018年7月~9月の間に発電したFIT電気が対象となります。実施主体は、資源エネルギー庁及びその委託を受けた日本ユニシスとなっています。
トラッキング属性情報の付与における優先順位
実証実験においては、小売電気事業者が非化石証書を購入した後に、トラッキング情報が付与されました。そのため、同一電源に対して複数の取得希望者が発生したケースにおいては、優先順位に則って割り当てが行われます。
属性情報の割り当てにおける優先順位は、「①PPAあり→②発電事業者の個別の合意あり→③残り先着順」と設定されました。この中で、「②発電事業者の個別の合意あり」とは、発電事業者との間で資本関係があるケース(PPAはなし)が想定されています。
PPA等がない場合は先着順にて割当が行われますが、そのトラッキング付非化石証書については、競合する小売電気事業者が希望のトラッキング付非化石証書を購入できないよう妨害するために、空押さえを行う事業者が発生するおそれがあります。
実証実験においては空押さえを行った事業者はいませんでしたが、今後の継続的な事業運営のためにも対策を考えることが重要です。そのため、今後空押さえが頻発するような事態となった場合には、違反の程度によってオークションへの参加を一時的に制限するなどのペナルティを設定することが検討されています。
参加範囲の広い「先着順」の発電施設は4%のみ
実証実験には、59の発電事業者が参加し、142設備が属性情報のトラッキング対象として登録されました。結果として、登録設備のFIT非化石証書の総量は合計約5.5億kWh程度となりました。
このうちの大半がPPA付の設備であり、約5.2億kWh程度でした。PPAがなく、先着順の証書は2,000万kWh(約4%)の参加でした。つまり、96%もの設備においては、既にPPAが結ばれているか、もしくは個別合意(資本関係がある等)がされている設備となっていました(図2)。
家庭用の発電設備、個人情報保護の上で証書流通の検討
現状のところ、一部の大口需要家を除き、非化石証書を利用した電力メニューの開発や需要家の開拓はあまり進んでいません。そのため、非化石証書の環境価値の位置づけに加えて、トラッキング付非化石証書の発電所情報とPPAの発電所情報の関係が整理されることが重要となります。
トラッキング付FIT非化石証書を活用することで、現行の小売ガイドライン上では、「実質再エネ電気(XX県FIT太陽光発発電所由来)として訴求することが可能です。しかしながら、より魅力的な訴求方法がなければ、非化石証書の利用拡大は難しいものと考えられ、国としても今後の検討課題として挙げています(図3)。
なお、非化石証書の取引量が順調に増大していくことに備えて、トラッキングスキームの対象となる設備数と発電量を拡大していく必要があります。例えば、現状では個人による非化石市場への参加登録があまり見込めないため、家庭用設備の発電量に対して無駄が発生します。
そのため、参加登録がない設備についても、個人情報保護の観点から証書に記載する情報を限定(例: 所在地は県単位、個人名の記載はなし等)した上で、証書流通の対象とすることが検討されます。
非化石証書、RE100やSBTで利用可能
トラッキング付非化石証書については、需要家のRE100に対する報告に活用することも可能とされています。実際に、再エネ由来J-クレジット、グリーン電力証書、非化石証書については、GHGプロトコルスコープ2ガイダンスにおける再エネ証書のクライテリアに合致していることが確認されています。
また、再エネ由来J-クレジット、グリーン電力証書、非化石証書は、CDP報告書及びSBTにおいても、再エネ証書として活用できることとなっています(図4)。
認証事業の運営形態、手数料が発生する可能性
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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