環境省が温泉熱利用のガイドライン作成、バイナリー発電では6年未満で投資回収できるケースも

2019年03月26日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

環境省が温泉熱利用のガイドライン作成、バイナリー発電では6年未満で投資回収できるケースもの写真

環境省は3月、温泉熱の有効活用を促進するための技術や検討手法などをまとめたガイドライン等を取りまとめました。本記事では、ガイドラインを参考に、温泉熱利用におけるバイナリー発電の採算性等について見ていきます。

温泉熱の利用、温暖化対策や省エネに貢献できる可能性

熱源としても利用可能な温泉の源泉数は、環境省の資料によると、1970年末には15,436本であったのに対し、2015年末には27,201本と1.7倍以上に増加しています。それに伴い、その湧出量は1,347,357ℓ/分(1970年度末)から、最大で2,563,827ℓ/分(2015年度末)まで増加しました。

温泉熱は、地域固有の熱源として高いポテンシャルを持ち、多段階(カスケード)での有効活用が可能です(図1)。また、近年では温泉だけにとどまらず、観光施設や商業施設で温泉熱を熱・電気エネルギーとして利用する事例も増えていますが、その有効活用は必ずしも進んではいません。

温泉地では、古くから温泉熱を煮炊きや暖房などの生活の一部として有効活用しています。さらなる有効活用が進めば、温暖化対策や省エネに貢献し、経済的に合理性のある街づくりができる可能性を持ちます。

こうした中、環境省は3月、温泉熱の有効活用を促進するための技術や検討手法などをまとめたガイドライン等を取りまとめました。本記事では、ガイドラインを参考に、温泉熱利用におけるバイナリー発電の採算性等について見ていきます。

地熱発電と多段階(カスケード)利用

図1 地熱発電と多段階(カスケード)利用 出典:環境省

温泉熱と相性の良いバイナリー発電

温泉熱利用は、使用する温泉温度によって利用できる技術や方法が異なります。発電利用、ヒートポンプを活用した温泉加温・暖房利用、温泉排湯を融雪に利用するなどの個別施設での利用、温泉と熱交換した温水を地域に供給する面的な利用など、さまざまな方法があげられます。

温泉熱を利用した発電方法として有力なものがバイナリー発電です。バイナリー発電とは、地中の熱水などを用いて、水よりも沸点が低い作業流体を加熱し、これによって作られた高圧の蒸気によりタービンを回して発電を行う装置のことです。

従来の水を作業流体とする地熱発電よりも浅い地中の熱源を利用できることから、探査や掘削が容易となり初期投資負担が少ないという特徴があります。

バイナリー発電は電力単体で考えるのではなく、カスケードでの有効活用が効果的です。例えば、浴用に利用するには温度が高すぎる場合、バイナリー発電として利用して温度を下げた後、さらに熱交換器で採熱し温水を作り温度を下げ、その後浴用利用する方法があります。このようにカスケード利用することで、温泉の未利用熱を最大限に有効活用することが可能です(図2)。

なお、65℃未満の温泉に関しては、温度が低くバイナリー発電への利用が難しくなります。そのため、後述の通り、温水供給(個別)や熱供給利用への導入も視野に入れた検討が必要となります。

カスケード利用例

図2 カスケード利用例 出典:環境省

バイナリー発電の採算性

発電所の開発を行うにあたり、単純投資回収年数は重要な検討事項となります。キャッシュインおよびキャッシュアウトから、単純投資回収年数を試算する必要があり、下記にてケーススタディにおけるキャッシュバランスを見ていきたいと思います。

バイナリー発電モデル事例 A温泉

A温泉では、a市保有の複数温泉をネットワーク化し、市営温浴施設への集中配湯を行っています。しかし、温泉排湯が95度であり、供給温度が浴用としては高く、各温泉利用施設にて加水による冷却を行っていますが、その際の水道料金などが負担となっています。

そこでA温泉では、バイナリー発電により温度を下げ、浴用として適切な温度に近づけるシステムを検討しています(図3)。

バイナリー発電モデル事例 – A 温泉(上図が導入前、下図が導入後)

図3 バイナリー発電モデル事例 – A 温泉(上図が導入前、下図が導入後) 出典:環境省

事業性評価の検討結果としては、投資回収年数の目安として、補助金(再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業)がない場合は約16.7年、補助金を適用した場合は約5.6年と試算されています。

キャッシュアウトとしては、補助金を利用しない場合が73,397,000円であるのに対し、補助金を利用すると24,465,000円まで負担を減らすことが出来ます。15年間の事業継続によるキャッシュインは65,865,000円と試算されています(図4)。

キャッシュバランス(総事業期間=15 年と想定)~バイナリー発電モデル事例 – A 温泉~

図4 キャッシュバランス(総事業期間=15 年と想定)~バイナリー発電モデル事例 – A 温泉~ 出典:環境省

温水供給モデル事例 B旅館

B旅館では温泉施設の再建を進めており、バイナリー発電施設の導入により、電気使用量低減、CO2 排出量の削減、ランニングコストの低減、旅館の再建に伴うイメージアップを期待していました。

しかし、検討の結果、バイナリー発電では導入効果が見込めない結果となりました。理由としては、バイナリ発電が65℃以上の温泉で効率的であるのに対し、本ケースでは温泉排湯が60度とその温度に満たないためと考えられます。

バイナリー発電設備の設置者は、規模に関わらず電気主任技術者の選任が義務付けられており、有資格者の雇用や教育、または外部委託が必要です。これに加え、発電メーカーによるメンテナンスが必要となるため、発電容量が小さいとメンテナンスコストが大きく影響する可能性があります。

実際にB旅館では、キャッシュインが-6,510,000円と赤字になり、ランニングコストメリットがないため、投資回収年数は算出不可となります(図5)。そのためB旅館では、温水供給で検討を行うこととしています。

キャッシュバランス(総事業期間=15 年と想定)~バイナリー発電モデル事例 –  B 旅館

図5 キャッシュバランス(総事業期間=15 年と想定)~バイナリー発電モデル事例 – B 旅館~ 出典:環境省

B旅館では、バイナリー発電の効率的な温度には満たないものの、浴用としては温度が高すぎため、熱交換器により温度を下げ、回収した熱で温水を作るシステムを検討しています。作った温水は、カランや洗面に利用することで、光熱費の削減、CO2 排出量の削減を図るとしています(図6)。

温水供給モデル事例 – B 旅館(上図が導入前、下図が導入後)

図6 温水供給モデル事例 – B 旅館(上図が導入前、下図が導入後) 出典:環境省

事業性評価の検討結果としては、投資回収年数の目安として、補助金(再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業)がない場合は約13.1年、補助金を適用した場合は約6.6年年と試算しています。

キャッシュアウトとしては、補助金を利用しない場合が12,269,000円であるのに対し、補助金を利用すると6,134,000円まで負担を減らすことが出来ます。15年間の事業継続によるキャッシュインは14,025,000円と試算されています(図7)。

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