東工大×リコー×産総研、超省エネの原子時計を開発、自動運転などの実現に一歩前進

2019年02月26日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

東工大×リコー×産総研、超省エネの原子時計を開発、自動運転などの実現に一歩前進の写真

東京工業大学、リコー、産業技術総合研究所の研究グループは、消費電力が極めて低い小型の原子時計を開発したと発表しました。周波数シンセサイザの消費電力を大幅に削減し、温度制御の効率を向上させることで、60mWという低消費電力と15cm3という極小サイズを実現しています。

様々な最先端サービスを支える原子時計

1927年に水晶振動子を用いる時計が発明されて以来、腕時計などの時間を計測できる機器が身近になり、正確な時刻計測に基づいた社会システム・サービスが普及しました。

一般的に利用されるクオーツ時計は、水晶の振動を利用して1秒を測っており、その精度は6桁~7桁程度です。これは、100万秒から1000万秒につき1秒ずれる性能であり、日用利用には問題ない精度と考えられます。

しかし、現在普及しているGPSを使ったカーナビ、高速ネットワーク技術といったものは、一般的な水晶振動子による精度では実現が不可能です。電波は、1秒間に約30万キロも進むので、わずか1マイクロ秒(100万分の1秒)の時刻のずれが、300mもの測距誤差となってしまいます。

そうした課題を解決できる技術が「原子時計」であり、通常のものであれば、12桁から13桁の高精度(1万年から10万年に1秒のずれ)を実現しています。原子時計は、1955年にイギリスの国立物理学研究所 (NPL) で実用化され、テレビ局やラジオ局、携帯電話の基地局、GPSの衛星など、正確な時間や周波数を必要とする、さまざまな場所で使われるようになりました。

このように様々なサービスにとって重要な役割を持つ原子時計ですが、小型化や省電力化が難しいことが課題でした。しかし、原子時計を小型化して水晶発振器の代わりとして利用することができるようになれば、大きな技術的・社会的変革が得られる可能性があります。

そのため、汎用な小型原子時計の実現に対する期待が年々高まっています。仮に、汎用な小型原子時計が実用化されれば、自動車やスマートフォン、超小型衛星、携帯電話の基地局などの様々な機器で利用できるようになります。

例えば、ビル屋内、海底、トンネル、橋梁などGPSの届かない場所での利用や、地球規模インターネットの実現、自動車や航空機等における安定的かつ高精度な測位、またそれによる自動運転技術の実現が期待されます。

こうした中、東京工業大学、リコー、産業技術総合研究所の研究グループは、消費電力が極めて低い小型の原子時計を開発したと発表しました。周波数シンセサイザの消費電力を大幅に削減し、温度制御の効率を向上させることで、60mWという低消費電力と15cm3という極小サイズを実現しています(図1)。

今回開発の小型原子時計 (内寸33 mm x 38 mm x 9 mm)

図1 今回開発の小型原子時計 (内寸33 mm x 38 mm x 9 mm)

小型かつ消費電力の低い原子時計

従来の原子時計では、共振器の大きさでサイズが決まり小型化できない問題点がありました。ただ、小型化は可能であり、マイクロ波で変調したレーザー光を原子に照射する方法があるものの、それでは消費電力を下げることが難しく、原子時計全体の消費電力が数百mWと高くなってしまう課題がありました。

しかし今回、研究グループは高精度かつ超低消費電力な周波数シンセサイザの実現などにより、高精度でありながら60mWの超低消費電力な小型原子時計の開発に成功しました。

開発した小型原子時計は、消費電力を大幅に削減しながら、大型の原子時計とほぼ同等の1日で300万分の1秒以下の精度を達成しています。この原子時計は、電圧制御水晶発振器、周波数シンセサイザ、レーザーのドライバ回路、制御回路、セシウム133原子へのレーザー光照射を行う量子部パッケージで構成されています。

従来の周波数標準器では、消費電力と周波数安定度はトレードオフの関係にありましたが、今回開発された原子時計は、良好な周波数安定度と低い消費電力を両立しています(図2)。

サイズも15cm3と非常に小型であり、105秒(約1日)の平均化時間で2.2×10-12の長期周波数安定度を達成しました。つまり、一般的な水晶発振器を搭載した時計と比べ、約10万倍も正確な時計を実現したこととなります。

研究グループは、今回開発された原子時計は、非常に小型で消費電力も小さいため、自動車、スマートフォン、小型衛星等、様々な機器への組み込みが可能としています。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

日本初、エネマネ連動型EVカーシェアリング開始、充電電気の再エネ由来や比率見える化等で地域活性化の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2020年03月24日

新電力ネット運営事務局

日本初、エネマネ連動型EVカーシェアリング開始、充電電気の再エネ由来や比率見える化等で地域活性化

REXEVと湘南電力および神奈川県小田原市は、全国初となるエネルギーマネジメント連動型EVカーシェアリングの運用を開始しました。再エネ電源をEVに活用し、カーシェアリングと連動させることでライフサイクルを通じたCO2排出量の削減を目指すものとなります。

再エネで電気以外の価値創出、「アンモニア」生成の可能性、名大が新型触媒を開発の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2020年01月24日

新電力ネット運営事務局

再エネで電気以外の価値創出、「アンモニア」生成の可能性、名大が新型触媒を開発

名古屋大学は1月23日、エネルギー問題、再エネの利用に適した温和な条件下で、極めて高いアンモニア合成活性(生成速度)を示す新型触媒を開発しました。再エネを利用したアンモニア生産プロセスが実現できれば、世界規模でのエネルギー問題、食糧問題の解決に寄与することができます。

蓄電池やEMSによりBCP機能を有する太陽光システム、バローHDが店舗に導入、PPAモデル活用の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年12月17日

新電力ネット運営事務局

蓄電池やEMSによりBCP機能を有する太陽光システム、バローHDが店舗に導入、PPAモデル活用

オリックスと中部電力、バローホールディングスは、BCP(事業継続計画)機能を備えた太陽光発電システムの第三者所有モデルをバローグループの店舗に導入することについて合意したと発表しました。災害時などの非常事態であっても、周辺地域に食料品や生活用品を供給することが可能になると期待できます。

電気で自己保湿するコンタクトレンズ、バイオ電池や無線給電で安全駆動、東北大学発表の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年12月09日

新電力ネット運営事務局

電気で自己保湿するコンタクトレンズ、バイオ電池や無線給電で安全駆動、東北大学発表

東北大学は、開発したハイドロゲル素材をコンタクトレンズに用いると、通電によってレンズ内に水流が発生し、乾燥速度が低下することを実証しました。さらに、生体親和性の高いバイオ電池を搭載して、有機物のみで構成された自己保湿型の抗ドライアイレンズの実現にも成功しました。

業界初、「低圧動力・電灯契約」に特化した見積サービス、スリーアールエナジーが展開の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2019年12月03日

新電力ネット運営事務局

業界初、「低圧動力・電灯契約」に特化した見積サービス、スリーアールエナジーが展開

スリーアールエナジーが「低圧動力・電灯契約」における電気料金プランを相対価格にて比較できる電力切替サービスを新たに展開すると発表しました。高圧と同様に、「低圧動力契約または従量電灯契約」において見積もり比較をしたい需要家の要望に応えるため、その分野に特化した電力切り替えプラットフォームを展開する形となります。