RE100が年次報告書を発表、日本市場の急速な成長に集まる注目

2018年11月29日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

RE100が年次報告書を発表、日本市場の急速な成長に集まる注目の写真

RE100は2018年11月15日、2018年版の年次報告書を発表しました。報告書の中では、日本の成長は特に注目されていると明記され、環境省と外務省が自ら再エネ100%を目指したことが、急激な成長の要因になったと分析しています。

急激に増加する日本のRE100加盟

RE100は、CDPとThe Climate Groupが率いる国際イニシアチブであり、再エネ100%による事業運営を目指す企業が加盟しています。そのRE100が、2018年11月15日に、年次報告書(2018年版)を発表しました。

最新の報告書によると、RE100に加盟する155のメンバー企業は、2017年に188TWh/年もの電力を消費しました(再エネ以外も含む総電力量)。この電力量は、アルゼンチンやポルトガルの総電力需要よりも大きなものとなり、RE100加盟企業を国として置くと、年間電力消費量ランキングは195カ国中23位となります(図1)。

RE100の数値情報

図1 RE100の数値情報

RE100加盟企業が調達した再エネ由来の電力量も増加しており、2015年は24TWh、2016年は51TWh、2017年は72TWhと推移しています。2017年は、RE100加盟企業の年間電力消費量(188TWh中72TWhが再エネ由来)の38%が再エネ由来電力でまかなえた計算になります(図2)。

年度ごとの再エネ電源調達量

図2 年度ごとの再エネ電源調達量

2018年の単年ベースでは、2018年11月までに37企業がRE100に加盟しています。 2018年の新メンバー37企業のうち、10企業が日本に本拠を置き、これまでの累計で13企業となりました。この急激な日本企業の加盟により、米国と英国に次いで、日本のRE100加盟数は世界3番目となります。

報告書の中では、日本の成長は特に注目されていると明記され、環境省と外務省が自ら再エネ100%を目指したことが、急激な成長の要因になったと分析しています。RE100はその他にも、オーストラリア、メキシコ、トルコ、台湾といった国が成長著しいとしています。

なお、RE100に加盟する155のメンバーの地域別内訳は、ヨーロッパ(77)に続いて、北アメリカ(53)、アジア(24)、オセアニア(1)となっています。

欧州は、RE100が最も活発に展開している地域と言えます。2017年、欧州エリアのRE100メンバーによる電源の62%が再エネ由来によって賄われました。

同地域内におけるRE100メンバーが利用する電力の再エネ由来電源比率の上位3国は、デンマーク(93%)、英国(82%)、スイス(81%)です(図3)。この順位は昨年と同様であり、再エネ電力の起源を保証する強力な追跡メカニズム、再エネ電力マーケットの好調な市場条件、および英国企業によるPPAの成熟等に起因します。

対照的に、アフリカ、アジア、中南米、カリブ海地域において、再エネ比率は低い状態です。これらの地理的格差は、世界の再エネ政策の枠組みが多様性を持つことを反映しています。

今年の調査に回答したメンバーの78%は、「規制の不確実性と複雑さ」が再エネ調達における大きな障壁であるとしています。また、政府が再エネ調達のための明確かつ透明、そしてオープンな枠組みを採用することの必要性を強調しました。

地域・市場別RE100加盟メンバー

図3 地域・市場別RE100加盟メンバー

2017年はGoogleなど6社が再エネ100%達成

100%再生可能エネルギー由来の電源で事業運営することがRE100の目標ですが、報告書によると、RE100メンバーの平均目標達成年は2026年です。なお、4社のうち3社以上が、2030年までに目標を達成することを目指しています。

2017年の実績としては、20以上の企業が100%再エネを既に達成しています。その内、Googleなどの6社(Amalgamated Bank, Capital One, Google, Gurmen Group, Jupiter Asset Management, Wells Fargo)は、2017年に初めて再エネ100%を達成しました。

2017年におけるRE100の達成率を業種別にみると、情報技術部門がトップであり、平均73%を達成しています。次点で、金融部門の58%、素材部門の44%と続きます(図4)。

セクター別RE100進捗

図4 セクター別RE100進捗

地域によって異なる再エネ調達法

2017年の調達戦略の内訳は、エネルギー属性証明書(EAC)が電力よりアンバンドルされたものと、電力会社によるグリーン電力供給の合計で全体の81%を占めていました。PPAについては、RE100メンバー企業が消費する再エネ電力の16%を占め、約9TWhに達しました(図5)。

電力会社とのグリーンプラン契約は、特にヨーロッパで採用されており、同地域内のRE100メンバーが消費する再エネ電力の62%を占めています。電力会社等が、顧客のニーズに合ったプランを作成したことで、多くの顧客を獲得しました。

対照的にインドでは、グリッドの信頼性に関連する問題のために、個別発電機への直接的な系統連携を通じて、再生可能な電力の43%が調達されました。

アンバンドルされたEACは、特に企業がPPAに署名することが難しい規制の厳しい市場で活用されていました。中国では、RE100メンバーの再エネ電力の96%がEACにより調達されていました。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年11月01日

新電力ネット運営事務局

ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望

前編では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やそのメリットについて紹介しました。今回は、性能の安定性や材料に含まれる鉛の問題、エネルギー変換効率などの課題に対する最新の解決策や企業の取り組みを交えて解説します。

ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリットの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年09月27日

新電力ネット運営事務局

ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリット

太陽光発電は、再生可能エネルギーの代表的な存在として世界中で注目を集めています。その中でも、シリコン太陽電池に次ぐ次世代のエネルギー技術として「ペロブスカイト太陽電池」が大きな注目を集めています。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、従来の太陽電池では難しかった場所での活用が期待されていることから、多様な分野での普及が期待されています。 2024年度には福島県内での実証実験が予定され、日本国内でも本格的な導入に向けた動きが始まっています。注目が集まるペロブスカイト太陽電池について、2回に渡りお伝えします。第1回目では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やメリット、そしてシリコン太陽電池との違いについて、詳しく解説していきます。

2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年08月28日

新電力ネット運営事務局

2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策について

再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大が進み、導入量が増えた結果、 電力需要が低い時期には「発電量過多」になり、全国的に 出力制御 が行われるようになってきました。この出力制御について、2回に渡りお伝えしています。 1回目はそもそも出力制御とは何か、増加している要因、過去の事例についてお伝えしました。今回は、経済産業省・資源エネルギー庁が優先給電ルールに基づく新たな施策を公表したので、その内容をご紹介します。

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてーの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年07月18日

新電力ネット運営事務局

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてー

太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛についてをお伝えしました。2回目は盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてーの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年06月13日

新電力ネット運営事務局

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてー

太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。第2回にわたり銅窃盗の再生エネルギー戦略への影響と各企業の防止策についてご紹介します。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛について、2回目は太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス