日本初のバイオ燃料製造実証プラントが完成、2019年夏に次世代バイオディーゼル燃料供給開始
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2018年11月12日
一般社団法人エネルギー情報センター
11月にユーグレナは、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年10月31日に竣工し、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』を新たに宣言すると発表しました。
日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが完成
バイオ燃料は、京都議定書においてカーボンニュートラルとして扱われ、主に運輸部門のCO2排出量の削減対策として、各国で導入が進められています。
米国においては、トウモロコシ由来のバイオエタノールが生産されており、導入義務量が総ガソリン需要の10%を超えて設定されています。EUについては、菜種などを原料としたバイオディーゼルが生産されており、軽油に対して約5%混合することとなっています。
中国は、余剰トウモロコシの有効利用という観点から、トウモロコシ由来のバイオエタノールの導入を開始しており、ガソリンに対して約2%混合されています。
日本は、エネルギー供給構造高度化法の告示に基づき、バイオエタノールがガソリンに対して約1%混合されています。しかしながら、バイオエタノールの自給率は、諸外国と比較して依然極めて低く、ほぼ全量をブラジルからの輸入に依存している状況です(図1)。なお、バイオエタノールの導入による追加コストについては、年間600億円程度と試算されています。
国際的な動きとしては、2009年にICAO(国際民間航空機関)が2050年時点で航空業界の二酸化炭素排出量を半減とする目標を掲げました。これを受けて、IATA(国際航空運送協会)は2009年から2020年の間に、平均年1.5%の燃料効率改善を行うことに加え、2020年までの航空業界の実質二酸化炭素排出量の上限を設定するなど自主目標を設定しています。
2016年のICAO総会では、2020年以降CO2排出量を増やさないことが加盟国間で合意されています。その対策として有望視されているバイオジェット燃料の導入は、米国、EU主要国、カナダやオーストラリアのほか、シンガポール、タイ、中国やインドといったアジアの国々で進んでいます。
一方日本では、バイオジェット燃料を使用した有償飛行は実現しておらず、世界主要国に対してバイオジェット燃料の導入は遅れているのが現状です。
自動車部門においては、米国では2022年までに約18%、EU各国では2020年までに10%、バイオ燃料を自動車用燃料全体の内訳として使用することが目標とされています。一方で日本では、ガソリンとディーゼル代替のバイオ燃料の導入目標は2022年までで年間数%程度に留まっています。
しかしながら、2015年9月に国連サミットで制定されたSDGsでは、「GOAL13:気候変動に具体的な対策を」が掲げられています。また、「パリ協定」では、2030年までにCO2を主とする温室効果ガスの排出を2013年の水準から26%削減することが日本の目標となっています。
こうした中、ユーグレナは、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年10月31日に竣工し、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』を新たに宣言すると発表しました。
微細藻類ミドリムシや廃食油を主原料としたバイオ燃料、含有率100%で使用可能
世界でバイオ燃料の導入が進む中、ユーグレナでは、2015年12月1日に横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車とANAホールディングスの協力のもと、2020年に向けた国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を発表しました。
そして、2017年6月1日に日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料の実証プラント建設に着工し、2018年10月31日に竣工を迎えました(図2)。なお、実証プラントは2019年春より本格稼働し、微細藻類ミドリムシや廃食油を主原料としたバイオジェット・ディーゼル燃料の製造が開始される予定です。
一般的なバイオ燃料は、トウモロコシやサトウキビ、大豆、パームといった作物を主な原料とするため、食料との競合や、森林破壊にともなう温室効果ガスの増加といった問題などが指摘されています。
しかし、今回のプラントで製造されるバイオジェット・ディーゼル燃料は、ミドリムシ油脂や廃食油などを主原料とすることで、食料との競合や森林破壊といった問題を起こさず持続可能性に優れた燃料となることが期待されています。
なお、ユーグレナによると、次世代バイオディーゼル燃料は、2014年6月より当社といすゞ自動車と共同で取り組んでいる「次世代バイオディーゼルの実用化に関する研究」の一環で性能試験を実施し、エンジンに変更は加えずに含有率100%で使用することができることを確認したとしています(初期性能としての確認であり、耐久性については、今後の実証走行により確認する予定)。
バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの概要
- 場所 :神奈川県横浜市鶴見区末広町1丁目1(AGC株式会社 京浜工場内)
- 敷地面積 :7,787.6㎡
- 製造能力 :日産5バレル
- 製造量 :年産125KL(試験の実施状況および保守の発生状況等により数量は変動)
- 製造品目 :バイオジェット燃料、次世代バイオディーゼル燃料、バイオナフサなど
- 製造技術 :Biofuels ISOCONVERSION Process(通称:BICプロセス)
※Chevron Lummus Global / ARA社よりライセンス供与 - 投資総額 :約58億円(神奈川県および横浜市からの助成含む)
日本初となる国産バイオジェット燃料での有償飛行が2020年までに実現見込み
今回完成した実証プラントで製造される次世代バイオディーゼル燃料は、2019年夏から供給開始される予定です。また、日本では初となる国産バイオジェット燃料での有償飛行が、2020年までに実現する見込みです。
バイオ燃料政策は、世界的に「地産地消」が原則である一方、日本はブラジルからの輸入依存度が高いため、今回の実証プラントにより国産燃料が普及していくことが期待されます。
なお、いすゞ自動車では2018年12月より、次世代バイオディーゼル燃料を含有した燃料を用いて、いすゞ自動車藤沢工場と湘南台駅間シャトルバスの定期運行による実証走行を開始します(図3)。
日本をバイオ燃料先進国にする新宣言『GREEN OIL JAPAN』について
今回、ユーグレナは実証プラント竣工を機に、「国産バイオ燃料計画」を協力して取り組んできた横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングス、ひろ自連との連携をさらに進化させ、「日本をバイオ燃料先進国にする」を合言葉とする、『GREEN OIL JAPAN』を宣言しました(図4)。
『GREEN OIL JAPAN』宣言では、2020年までに実証プラントで製造したバイオ燃料を陸・海・空における移動体に導入し、2030年までにバイオ燃料を製造・使用するサポーターを日本中に広げることでバイオ燃料事業を産業として確立することを目標に掲げています。
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執筆者情報
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