一般送配電事業者が開発を進める需給調整市場、事業者側で必要な対応とは
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2018年10月16日
一般社団法人エネルギー情報センター
現在、2021年4月の需給調整市場開設に向けて、一般送配電事業者を代表して東京電力PGおよび中部電力が共同で「需給調整市場システム」の開発を進めています。今回の記事では、「需給調整市場」について概要を整理します。
現在の「調整力公募」から「需給調整市場」へ移行
電力は基本的に貯めておくことが困難であるため、発電した電力と需要量を一致させる需給バランス調整が必要となります。現在、周波数制御や需給バランス調整に関して、一般送配電事業者が行うこととなっておりますが、必要な調整力を調達するにあたっては、特定電源への優遇や過大なコスト負担を回避することが重要となります。
そこで、公募調達の実施方法等を定めた「一般送配電事業者が行う調整力の公募調達に係る考え方」に従って、調整力の公募が2016年末より実施されています。今後は、より柔軟な調整力の調達や取引を行うことができる市場である「需給調整市場」が創設され、調整力の確保がより効率的になっていく予定です(図1)。
現在、調整力の確保のために行われている公募調達は、一般送配電事業者が電源Ⅰと電源Ⅱに対して募集をかけるものです(図2)。実需給断面において、年初段階で確保した電源Ⅰとゲートクローズ(GC)後の電源Ⅱ余力を活用して対応する仕組みです。
- 電源Ⅰ:一般送配電事業者の専用電源として、常時確保する電源等
- 電源Ⅱ:小売電気事業者の供給力等と一般送配電事業者の調整力の相乗りとなる電源等
現状の公募調達から新たに移行する「需給調整市場」の開設時期については、当初は2020年が予定されていました。しかし、東京オリンピック・パラリンピックにより、適切な開発期間を確保することが難しいとの意見があり、現在は2021年に開始される見込みとなっています(図3)。
需給調整市場は、ΔkWの確保という側面と、調達した調整力を運用する(実際に運用した調整力に対しkWh価値を支払う)側面が存在します。「ΔkW」を保有するということは、実需給時点で各時間帯毎に必要な能力をもった電源等を、出力を調整できる状態であらかじめ確保するということです。
電源にはそれ自体に価値があり、需給調整市場が担当する「ΔkW」は、短期的な需給変動に対応する役割を担います。電源の価値は大きく分けて4つに分類され、「ΔkW」のほかにも、実際に発電された電気自体の「kwh」価値、将来の供給力の担保となる発電能力自体の「kW」価値、電気に含まれる「環境価値」があります(図4)。
需給調整市場について、現状で想定されている基本的な商品メニューは以下のとおりです。同市場で扱う調整力は、指令値までの出力変化(応動時間)が速く、出力継続時間が短い順に1次、2次、3次調整力に分けられています(図5)。
1次調整力に相当するGF(ガバナフリー)は、調速機(ガバナ)により、系統周波数の変化に追随して出力を増減させる運転をいいます。2次調整力に相当するLFC(負荷周波数制御)では、負荷変動に起因する周波数変化量や連系線電力変化量などを検出し、発電機の出力を制御します。2・3次調整力に相当するEDC(経済負荷配分制御)は、各発電所に最も経済的になるよう負荷配分を行う制御のことです(図6)。
日本では、広域化によって競争環境が整った商品から市場化を段階的に行う計画となっています。例えば、3次調整力①については2021年度、2次調整力②については2023年度に広域運用が始まる見込みです。
欧州においても、全ての商品を一律に市場化するのではなく、環境が整ったものから市場化が進められています(図7)。また、欧州では当初、市場への新規参入者が少なかったのですが、広域化によって大手垂直統合型事業者同士で競争が発生しました。そのため、新規参入者が市場に参入することで調整力のコストが削減されました。
東京電力パワーグリッドおよび中部電力が開発を進める「需給調整市場システム」
現在、2021年4月の需給調整市場開設に向けて、一般送配電事業者を代表して東京電力パワーグリッドおよび中部電力が共同で「需給調整市場システム」の開発を進めています。
需給調整市場システム設置に伴う事業者側の準備としては、① 端末の準備(社内システム(市場取引用)との連係も可)、② ネットワークの契約、③ 需給調整市場システム設置後の対向試験となります(図8)。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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