存在感を増す環境国際イニシアティブ、CDPへの回答動機や、RE100・SBTに参加する背景とは

2018年08月24日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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経済産業省は8月、国内における環境価値取引市場の動向調査の報告書を発表しました。この記事では、国際イニシアティブに関する情報をまとめ、それぞれのイニシアティブに対応する企業の目的を見ていきます。

日本企業に対する影響が大きいCDP、SBT、RE100

近年、企業の環境取り組みについて、目標の提出やその進捗をモニタリングする国際NGOが影響力を増しています。日本企業に対する影響が特に大きいイニシアティブは、CDP気候変動質問書、Science Based Targets(SBT)、RE100 が挙げられます。下記にて、各々のイニシアティブにおける特徴や、参加企業の動機について見ていきます。

調整後排出係数の使えるCDP

CDPは、年金基金等の機関投資家の代理人として、企業に気候変動対策に関する質問書を送付し、回答内容の開示及び格付を行っています。CDPの趣旨に賛同する機関投資家数は827機関、総資産100兆米ドル(2016年)となっています。

運営主体は、英国ロンドンに本部を置くNGOであるCDPが担ってます。主なプログラムは、「CDP気候変動」、「CDPウォーター」、「CDP森林」、「CDPサプライチェーン」です。

CDPの回答企業数は、世界全体で数千社に及び、うち格付け最高位であるAクラスの企業数は114社となっています。2017年の日本企業による回答は283社であり、その内Aリストは13社です(ソニー、トヨタ自動車、キリン、MS&AD、SOMPOホールディングス、川崎汽船、小松製作所、ナブテスコ、三菱電機、コニカミノルタ、富士通、リコー)。なお、日本企業に対しては気候変動プログラムでは、時価総額の上位500社に対して質問票が送付されているため、回答率は57%となっています。

CDPにおける排出量の算定手法は、各国の法制度に準じた算定手法も選択することが可能であり、つまり日本の温対法や省エネ法に基づく報告も可能です。しかし、CDPのスコアリング上、算定手法による得点の差異はありませんが、事実上GHGプロトコルが推奨されています。

その他、CDP日本事務局の暫定措置として、電力排出係数に温対法「電気事業者別排出係数」が利用可能です。ここで、ロケーション基準手法を選択する場合「代替値」を参照し、マーケット基準手法を選択する場合、電力会社の「基礎排出係数」又は「調整後排出係数」を参照します。

CDPへの回答は義務ではありませんが、平成29年度の経産省委託事業である「国内における環境価値取引市場の動向調査」によって回答している企業の回答理由が調査されています。

例えば、ある企業は、海外投資家が3/4を占めているためグローバルを意識してCDPに回答しており、投資家とのESGに関する対話があるとしています。また、CDPの評価指標を世界共通の「ものさし」と位置付け、自社の環境への取組みをグローバルな視点で評価したいとする企業もあります。

SBT参加の理由、「自社の目標の正当化」が最も多い

Science Based Targets(SBT)とは、2度目標と科学的に整合した温室効果ガス削減目標の設定を企業に促す取組です。国連グローバル・コンパクト、CDP、世界資源研究所、世界自然保護基金によって設立され、これらの4組織が連携して運営事務局を担当しています。

SBTの温室効果ガス削減目標については、2050年に49~72%削減することを長期的目安として、2025~30年頃に達成する削減目標を設定することが求められます。事業者によっては、事業者自らの排出だけでなく、サプライチェーン全体の排出量が対象となっています。

2014年にSBTがスタートして以降、SBTの要求水準をクリアしていると認定を受けた企業は右肩上がりで増加しています。認定を受けた企業は126社となっており、2年以内のSBT設定をコミットしている企業は339社存在します(2018年8月時点)。

また、そのうち日本企業は26社がSBTの認定を既に受けており、2年以内のSBT設定をコミットしている日本企業は、38社存在します(図1)。

SBT に参加する企業数の推移(左が世界全体、右が日本国内)

図1 SBTに参加する企業数の推移(左が世界全体、右が日本国内) 出典:経済産業省

SBTの参加背景や動機についてはCDPと同様に調査が行われています。13社を対象に調査が実施されています。全企業のケーススタディを横断的に俯瞰した場合の、各キーワードや重要なフレーズの抽出頻度が整理することで分析が行われています。

SBT調査対象企業における参加背景・動機は、「自社の目標の正当化」が大勢を占めます(最も重視が5社、次点で重視が6社)。これまで独自に掲げていた削減目標が、グローバルなイニシアティブによって「最新の気候科学と整合する」と認定されることにメリットを見出す形です。

次いで、「サプライチェーンマネジメントの重視」が挙げられます(最も重視が3社、次点で重視が2社)。サプライチェーンにおいて上流に位置するエネルギー産業等においては、自社製品における排出削減が他社の排出削減につながるからです。

逆に、下流に位置する最終製品メーカー等が上流に位置する企業に対して、排出削減や再エネ調達を要請する事例もあります。そのため、上流に位置する企業にとっては、SBTの認定を取得していることが顧客企業に対する自社の姿勢のPRとして機能する可能性もあります。

「投資家 (ESG) 対応」を理由として挙げている企業は少数となりました(最も重視が2社、次点で重視が0)。なお、投資家対応を重視している2社は、実際に機関投資家から気候変動対策について問い合わせを受けた企業と、ダイベストメントが実際に始まりつつある電力業界の企業の2社が投資家 (ESG) 対応を回答していました(図2)。

SBTへの参加背景・動機

図2 SBTへの参加背景・動機 出典:経済産業省

SBT認定の取得に際しては、「トップダウン」による取り組みが主流でした(9社)。一方、「ボトムアップ」によってSBT認定取得に至った事例も少なからず存在します(4社)(図3)。

SBT 認定取得プロセス

図3 SBT認定取得プロセス 出典:経済産業省

SBT認定を取得するメリットとしては、「顧客との関係性」という観点をあげる企業が最も多いことが分かりました(10社)。顧客に対する自社ブランド向上、顧客における排出量削減につながること等をメリットとして見出しているようです。

この他、目標達成に向けた社内の動機づけにつながること(8社)、ステークホルダーに対して優位性を保てること(4社)、省エネ等の取組みを通じてコスト低減が図れること(5社)等がメリットとして挙げられます(図4)。

また、一部の企業は、地球温暖化対策に関しては業界内でリーダーシップを発揮できるという意見や、他社に先駆けて新規ビジネスを展開できるというメリットも挙げています。

SBT 認定取得メリット

図4 SBT認定取得メリット 出典:経済産業省

RE100への参加背景、複数社が集まることでシグナルを社会に発信する意図が多数

RE100は、企業の事業活動で用いるスコープ2の電力を、すべて再エネ電力にすることを推進する取り組みです。イギリスに本部を置くNGOの「The Climate Group」がCDPの支援を受けて実施しています。

参加している企業は2018年8月時点で140社となっています。そのうち、日本企業はリコー、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオン、城南信用金庫、丸井グループ、富士通、エンビプロ・ホールディングスの10社が参加しています。

RE100では、企業は自社設備や証書の利用など、様々な方法から100%再エネ電力達成方法を選ぶことができ、また複数の方法を組み合わせることも可能となっています(図5)。

RE100 が認める再エネ調達の手法

図5 RE100 が認める再エネ調達の手法 出典:経済産業省

RE100の参加背景や動機についてはSBTと同様に調査が行われています。RE100は9社を対象に調査が実施されています(図6)。

SBT及びRE100調査対象企業

図6 SBT及びRE100調査対象企業 出典:経済産業省

再エネ率100%目標を設定した動機としては「リスク対応」が多い傾向にあります(最も重視が4社、次点で重視が2社)。ここでのリスクには、①気候変動リスクと②エネルギー安全保障リスクの二つが示されています。

また、欧米では再エネの価格がすでに系統電力より低い場合もあり、「コスト低減」も動機として示されています(最も重視が3社、次点で重視が1社)。この他、業界内におけるリーダーシップを発揮することで、ステークホルダーからの「評判」向上を期待する回答もあります(最も重視が1社、次点で重視が3社)(図7)。

再エネ率 100%目標の設定動機

図7 再エネ率 100%目標の設定動機 出典:経済産業省

RE100に参加した背景・動機としては、「シグナルを社会・市場へ発信できること」が最も多く挙げられています(5社)。自社単体の再エネ100%では社会へ与えるシグナルは小さくとも、複数の企業と共同で発信することで、大きな影響力を持つことにつながります。

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